2

日曜日の朝、2人は早起きした。


私は運転もあるし時間の決まりのない予定だからゆっくり寝ようと思ったけど、彼女は早々起き出して料理を始めた。


私も合わせて置き出してダイニングに腰掛け彼女を見ていた。


「朝と昼同じものになるけどいい?」


「お弁当つくるの?」


「そう」


「たのしみ」


彼女は朝ご飯の残りを1つの大きなお弁当箱に詰め込んでかばんに入れた。さっき食べた美味しいものがまた食べられるから嬉しかった。


車の中は静かだった。


「カメラのSD入ってる?」


私はハンドルを握ったまま家を出る前に電池蓋を開けてカードを差し込んだ感触を思い出した。


「入れたよ、出る前に確認した」


「コンビニ近くになかったから、今カメラ見てもいい?」


「いいよ」


私は運転したまま左手だけで肩にかけたカメラを彼女の方によこした。シートベルトが邪魔をしたけど助手席側に動かした。


彼女はシートベルトを伸ばして屈んで手を伸ばした。カメラの電池蓋を開けてSDカードの凹凸を指先で確認した。


「大丈夫、あったよ」


「ありがとう」


「カメラこっちがわのままで気持ち悪くない?」


「大丈夫、あともう少しだし。車酔ってない?」


「大丈夫、元気。曇りだから暑くないし」


早起きした日はいつも静かだ。だけど現地に着いたら違っていた。


思ったより道路と砂浜には高低差があって、車を寄せた時に困ったことになるかもと思った。ガードレールの隙間に手作りの不格好なハシゴがついていた。彼女も困った顔だったのにハシゴを見つけると一変、一心不乱にドタドタ降りていった。ビーチに着いたら6歩で波打ち際なのに駆けて行って、やってきた波に靴を濡らしそうになってわーと叫んでこちらに帰ってきた。


「くさい!海くさい!サイコウ!」


私は不格好なハシゴを荷物を背負ってゆっくり降りた。ゴミと海の匂いに包まれながら曇天のビーチで輝く彼女を見て声を出して笑った。

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