第163話 魔法発動具を造ってみた:②
爽やかに目覚めた朝、オレは生活魔法の
風魔法で根元から二十㌢くらいでヒゲを切り取って、腕輪と一緒にポーチに入れてから、ヒゲの残りを保管用の結界に戻して魔力をガッチリ込めておいて、部屋を封鎖している結界を解除して庭に出た。
左腕に付けている
こんないいモノが普及していないのは、
オレは風魔法・火魔法・鑑定魔法を一人で並列して発動できるからなんとなく造れてしまったが、剣や武具に加工するというのは知られていても、魔法をスムーズに威力を増して発動できる増幅装置的な使い方は魔法大辞典には記載されていなかった。
魔力だけを使ったつもりだったけれど、神眼を使ったから創造神サリーエス様の御力:
家族用に造った腕輪も同じ効果があったから、他人には知られてはイケナイモノを造ってしまったのかもしれない…。
詳しくは知りたくないので、あえて鑑定はしないのだ。
考えたら負けとか知らぬが花とかいうからね…ナンチャッテ。
リチャードがいれば教えてくれるかもしれないけれど、いないものはしかたない。
造れてしまったモノはどこかに捨てるわけにもいかないので、鑑定阻害の腕輪同様に他人の目につかないシャツの袖に隠れるように付けておこう。
家族用に造ったやつも、渡す時にそれを注意しないとダメだな。
オレが庭に出ると、ジェームズとクラークが屋敷を警護している騎士たちと木剣を使った撃ち合い稽古をしていた。
それぞれに挨拶をしながらジェームズに近づいて言った。
「お父様、おはようございます。ちょっと魔法の練習をしたいので結界を張りますね」
「おはようアラン、魔法の練習か…。朝早くから熱心なことはいいことだ」
オレとジェームズはニヤリと笑って意味深な頷き合いをした。
そのまま庭の片隅に行き、半透明の結界でガッチリ囲んで、誰にも見られないようにしてからミスリルと
サリーエス様のミスリル立像を造った時に残したミスリルから風魔法でオレのコブシ大の大きさで切り取って杖の加工を始めた。
風魔法で浮かせながら火魔法で熱を加えて結界マジックハンドでゆっくりと細いパイプ状にしてみた。
先端をピンポン玉くらいの大きさで丸めて握りやすくしてから成形して、ヒゲが収まる程度の長さと太さにした。
直径三㌢くらいで長さ二十五㌢の杖になった。
見た目は…前世で見たことのある木琴のバチかな…。
まだ熱いので、そーっと腕に合わせてみると、
風魔法で真ん中から二つに切り分けて、ヒゲを挟み込んでから元に戻して魔力をガッチリ込めて固めた。
風魔法でゆっくりと冷やしているあいだに、残りのミスリルは荷馬車に戻して宝石類の鉱石からダイヤモンド・ルビー・トパーズ・サファイアを選んで、ざっくりと磨いておいた。
オードリーとヴィヴィアンに見せないと、うるさくおねだりしてきそうだからね。
金銀も少し切り取って宝石類と一緒に部屋に持ち帰ることにした。
ミスリルの杖がほんのり温かい程度に冷えたので右手に握って感触を確かめた。
杖を握ったままで土魔法と風魔法を使って荷馬車を地下に埋めたが、やはりイメージしたとおりにスムーズにできたから、コレは魔法発動の増幅装置的な使い方でいいようだが、もっと威力のある魔法を使う時にはどうなっちゃうんだろう。
使いどころを間違うと、凶器というか殲滅兵器になりそうだ。
腕輪といい杖といい、オレはもう少し威力を抑えたモノを造ることを練習しないとダメだな。
結界粒を周りにバラまいて、周辺に誰もいないのを確かめてから、ドーム状の結界を長さ四十㍍くらいのカマボコ状に変えた。
三十㍍先に土魔法でドラム缶程度の太さの的を造って、杖の先から
サクッサクッと斬れて気持ちがいいね。
パチンコ玉状の
うっひょ〜〜、コレはヤバイ!。
ドラム缶の的を造り直して水魔法と氷結魔法を試してみよう。
杖の先から直径一㌢くらいの太さで高圧力の水のビームを出して的に当てたら、スーッと的に穴が空いた。
そのまま上下左右に杖をグリグリ動かしてみると穴が拡がっていってオレの頭が入るくらいの大きな穴になった。
水のビームで的を貫通させられたのに満足したので、氷結魔法を試してみよう。
他の魔法と同じように、氷で細いドリルの刃を造って高速回転させてみると、細かい氷の粒が飛び散って少し寒くなった。
新幹線のスピードをイメージして的に向かって打ち出すと、バキバキバキッと大きな音を立てて氷の刃は砕けたが、的もボロボロに砕けた。
コレも使えるな。
火魔法で攻撃されたら水のビームか氷の刃で対抗すればいいかな。
杖を使うと魔法はスムーズに発動できて、威力も充分に満足できるものだったのでお試しはもういいかな。
オレは
オレが結界を解除するのを待っていたジェームズとクラークが話しかけてきた。
「かなり大きな音がしていたが、大丈夫なのか?」
屋敷を警護している騎士たちが木剣での撃ち合い稽古終わりでこちらを見ているので、三人を半透明の結界で包んで風魔法で遮音を発動してから言った。
「
オレが二人にミスリルの杖を見せると、ジェームズが触りたそうな顔をしたので渡した。
「私には細すぎるかな。でもなんだか火魔法がうまく使えそうな感触がするな」
クラークも握って感触を確かめてから言った。
「アラン、コレをもう少し太くして造ってくれないかな」
「はい、そのつもりですが、普段使っている魔法よりかなり威力のある魔法が使えるようになりますので、それに注意してもらう必要があります」
「まずはコレを腕に付けて慣れてください」
オレは
「どうですか?、キツくないですか」
二人は腕輪を左腕にはめて腕を動かしている。
「キツくはないが、コレはどんな効果があるのだ?」ジェームズが訊いた。
「使いたい火魔法を頭にしっかりと思い浮かべて、それに魔力を流すと発動が早くて威力を増しますので、使いこなせるように練習してください」
「威力のある魔法か…、それはいいな」
クラークはニッコリ笑った。
「他人に見られるとなにかと
オレはシャツの袖口をまくって二人に見せた。
「この杖も隠して使うのか?」
「はいお父様、このようにシャツの中に隠しておきます」
オレは右腕の袖口から杖を差し込んで隠してみせた。
「また秘密が増えたな…」
ジェームズは苦笑しながら言った。
「まだこれから増えますよ。アダマンタイトの剣も造らないといけないし…」
ジェームズとクラークは顔を見合わせて、大きなため息をついた。
「アダマンタイトの剣は欲しいが…、どうやって誤魔化すかな…」
ジェームズの悩みのタネは増えるばかりであった。
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