第162話 魔法発動具を造ってみた:①

 ヘブバ男爵領にみんなで行くという話に、家族それぞれがウキウキしながらドナルドおじいちゃんとアーノルドおじさんをまじえて夕食を終えてから、恒例のメイドのヘレンとマリアによる「「アラン様〜、お着替えのお手伝いを〜攻撃」」を柔らか結界で優しく二人の身体を包みこんで阻止してから、一人で結界マジックハンドを使って部屋着に着替え、のんびりと部屋でくつろぎながら魔法大辞典で魔法の発動具について確認した。


 杖や剣に指輪や腕輪などの様々な形や素材があるから、オレに使いやすいモノはどれがいいかを考えてみたが、初めて造るからシンプルな棒状のモノにしようと決めた。


 イメージしたのは、額にイナズマの傷のある少年が主人公の映画で使われていた杖だ。


 あの映画の中でも杖の芯材に不死鳥フェニックスの羽根やドラゴンのヒゲとかユニコーンのタテガミが使われていて、外側に別の素材が使われていた。


 オレの手元には芯材に使える不死鳥フェニックスの尾羽根と老龍エルダードラゴンのヒゲにウロコがあるし、外側用にはミスリル・アダマンタイト・オリハルコンがある。


 まずは老龍エルダードラゴンのヒゲを芯材にして、ミスリルで包みこんで、ウロコを巻き付けてみるかな。


 老龍エルダードラゴンウロコは歴史上幾度も採取されていて、その加工方法も魔法大辞典に記載されていた。


 グレゴールがねぐらから手当たり次第にウロコやミスリルを盗んでいく者たちがいたと言ってたから、それが鍛冶師や加工業者によって剣や武具にされてきたということだろう。


 ウロコは、魔力を込めながらジワジワと熱を加えてゆっくりと成形していかないとダメで、魔力が足りなければ成形可能な柔らかさにはならないし熱を加えすぎるともろくなって、剣や武具には使えなくて装飾品としての価値しかない。


 それでもかなりのお値段で取引されているようだ。


 微妙な魔力の込め方や熱の加え方は鑑定魔法を使いながら慎重にやる必要があるので、いずれはアダマンタイトやオリハルコンを加工したいオレには絶好の練習材料といえるだろう。


 オレは保管用の結界から風魔法で切ったウロコを取り出した。


 風魔法で帯状に切って、それを丸める練習をしてみることにした。


 ジワジワと熱を加えるくらいなら、結界を張った室内でもできるだろう。


 腕輪を造ってみるかな。


 オレは風魔法で浮かせた帯状のウロコを神眼で鑑定しながら、魔力を少しずつ込めて火魔法でジワジワと熱を加え始めた。


 ゆっくりとオレの腕の太さに合わせて結界マジックハンドで丸めていくと、これ以上魔力は要らないとか熱が足りないとかを鑑定できた。


 それに従って加工を続けていくと、硬さを失わずにオレの腕の太さに丸めることができた。


 左腕にはめてみると、老龍エルダードラゴンウロコは綺麗に輝いている。


 オレは腕輪のツルツルした手触りにも満足した。


 そういえばグレゴールはサリーエス様のミスリル立像にお供えをしているのかな。生肉は得意ではないサリーエス様にお供えするモノを探し回っているんだろうか。


 また会うことがあったら神威で人族の食べ物を造るやり方を教えてやろうか。


 オレはグレゴールの食べっぷりを思い出してニヤニヤした。


 さて腕輪の性能を確かめましょうかね。


 オレは水魔法を意識しながら腕輪に魔力を込めた、すると空中から水がポトポトしたたり落ちてきた。


 おお?、ウロコを腕輪にしただけで水魔法が発動できるの?。


 オレは風魔法で窓の高さまで身体を浮かせて、封鎖していた結界を解除してから窓を大きく開けて、水魔法を意識して庭に向かって水を出すイメージで腕輪に魔力を流した。


 ビューッと勢いよく水が飛び出した。


 まるで消防車から放水しているような水の勢いと量に驚いたが、お試しで加工したウロコの腕輪が使えるモノであることを確認できて嬉しかった。


 氷結魔法を意識してアイスキューブを出すイメージで魔力を流したら、ボトボトボトッと窓の下にアイスキューブが落ちていった。


 ほほぅ〜、コレもいけますか。


 土魔法を意識して土の玉、風魔法を意識してウィンドカッターもイメージどおりに発動するから、火魔法もと思ったが、やはり裸火は危ないのでやめておいた。


 窓を閉めて生活魔法のライトりをイメージして魔力を流したら、かなりの明るさで昼間のように室内がすみずみまで明るくなった。


 どうやら魔法の発動具というよりは、増幅装置的な使い方ができるようだな。


 まだウロコはあるので、家族用に造っておくか。


 オードリーとヴィヴィアンはブレスレットを造ったから腕の太さはわかっているし、クラークはオレよりちょい太めでいけるだろう。ジェームズ用はさらに太めにして切れ目を残しておいて、もし小さかったら調整すればいいだろうね。


 オレは家族用に造ったウロコの腕輪をそれぞれテストしてみて、イメージどおりに魔法が発動するのを確認してから保管用の結界に入れておいた。


 明日の朝にはジェームズに渡す老龍エルダードラゴンウロコを掘り出さないといけないから、ミスリルも掘り出して庭に結界を張ってからオレ用の魔法の杖を造ろう。


 オレは、その杖を使うとどれだけ威力のある魔法が発動できるようになるのかワクワクしながら眠りについた。


 

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