第137話 謁見は終わった…?

 オレは謁見の間全体に神威でプチヒールしと清浄クリーンをかけながら天井から光が降り注ぐ魔法を使った。


 謁見の間にいる者たちがタマシイがほぐされ清められた爽快感を味わいながら天井から降り注ぐ光を見ている間に、オレは神眼でそいつらの感情を探っていた。


 オレが謁見の間に入ったときにマーキングした【好意の緑】・【嫌悪の赤】・【中立の青】・【保留の白】・【殺意の黒】が変わっているか確かめたかったから、最初にマーキングした色はそのままでその横に新しくマーキングをしていった。


 他人からは見えないが、オレの神眼には額にふたつの点が並んで見える。


【好意の緑】がふたつ並んでいるのは、オレの血族やオチョーキン公爵に繋がる貴族たちに聖職者たちや一部の近衛騎士たちや魔法使いたちだな。


 その他の貴族たちには【嫌悪の赤】から【好意の緑】や【中立の青】に変わっている者がいるが、【嫌悪の赤】が変わらないのは周辺諸国の大使連中や王子たちに王女たちか…。


 うん?、一人だけ【保留の白】から【好意の緑】に変わってるな…、第三王子のアバンロか。


 帝王アレングラード陛下は…、あっちゃー【中立の青】から【嫌悪の赤】に変わってるよ!、真っ赤っ赤だよ!!。


『念話』での打ち合わせをぶち壊しちゃったから怒っちゃったんだぁ。


 でもオレを意のままにしようとしたアナタが悪いんだからね。


【殺意の黒】に変わったらどうしようかなぁ…、られる前にっちゃうか…。


 血管の中に神威で小さな結界粒を造ってやると脳梗塞か心筋梗塞をおこしてってくれるかな。


 それは容易たやすいことだが、王族たちや高位の貴族たちに周辺諸国を巻き込んだ血みどろの跡目相続争いが起きて無辜むこの国民たちが迷惑するだろうから、


 帝王や王族たちの出方次第ではどうなるかわからないけどね。


 マーキングを終えたオレは、ゆっくりと光を弱めていった。


 光が消えた頃合いを見て、内心はらわたが煮えくりかえる思いの帝王はその感情を押し殺して、重々しく言った。


「創造神サリーエス様の祝福を得て、ガーシェ大帝国はさらなる繁栄の一歩を踏み出した。今日は良き日であった。これにてアラン・コーバンの謁見の儀を終える。皆のもの大義であった」


 あくまでもこの場の主導権はワシのモノだと言わんばかりの帝王の言葉にオレは内心ニヤニヤしたが、黙ってこうべをたれた。


 臨席している者たちも帝王に向かって頭をたれるなか、帝王は謁見の間から出た。


 王族たちもそれに続いたが、第三王子のアバンロはしばし立ち止まってオレを興味深そうに見ていた。


 やがてアバンロも謁見の間から出ていった。


 宰相のオイマール・ヤンガー公爵が言った。


「今日はこれにて散会とする。皆のもの大義であった」


 そう言うと宰相も謁見の間から出ていった。


 侍従長がオレに近づいてきて言った。


「アラン・コーバン様、どうぞご退出ください」


 さらに小声で言った。


「創造神サリーエス様の御業みわざに心が洗われる思いがいたしました。我が身内の者たちにも、この場での奇跡を語り継いでいくことにいたします」


 侍従長の額のマーキングは赤から緑に変わっている。


 オレは静かに笑いかけて言った。


「サリーエス様の祝福がお身内の方たちにもありますように」


 侍従長は嬉しそうに頷いて、オレを父親ジェームズとリンド・ヘブバ男爵おじいちゃんの待つ後方に先導した。


 ジェームズとリンドおじいちゃんは、オレが笑顔で歩いてくるのを見てなんとも言えない顔をしていた。


「アラン、お前は…。まったく生命が縮む思いをさせられたぞ」


 ジェームズは小声で言った。


「まったくだ…」


 リンドおじいちゃんはゲッソリとやつれた顔をしていた。


 「まぁ、いろいろありましたが、なんとか終わりましたね。もう帰りましょう」


 オレたちはオードリーとヴィヴィアンと一緒に謁見の間を出て控えの間に帰った。


 豪華なソファに座って王城のメイドが入れてくれた紅茶を飲もうとしたヴィヴィアンはオレの耳元で訊いてきた。


「コレ、飲んでも大丈夫なの?」


 オレはメイドが入れてくれた紅茶やお菓子を鑑定して言った。


「紅茶は大丈夫だよ。美味しそうなお菓子もね」


 それを聴いて安心した顔をした家族はそれぞれ紅茶を飲んでひと息ついた。


 そこにドナルド・コーバン侯爵おじいちゃんやアーノルド・コーバン伯爵おじさんにオリバ・ヘンニョマー侯爵曽祖父がやって来た。


「アラン、やりすぎだぞ」


 ドナルドおじいちゃんはちょっと怒った顔で言った。


「本当だぞ、アラン。自分の持つ力を誇示するのもいいが、ほどほどにな」


 アーノルドおじさんも厳しい顔で言った。


「帝王陛下はかなりご不満のようだったが、これからどのようなことを言ってこられるのかな…」


 オリバひいおじいちゃんがそう言いかけたところで、侍従長が控えの間にやってきて言った。


「アラン・コーバン様、帝王陛下がお呼びです。ご案内いたします」


 帝王陛下からの呼び出しに、その場にいる者たちは顔が青ざめた。





 ーーーーーーーーーー






 帝王アレングラードは謁見の間を出て、王族の控えの間に入ると怒りを爆発させた。


「余はガーシェ大帝国の帝王であるぞ!」


「創造神の加護を授かっておると思い上がりおって、どうしてくれようか!!!」


「アラン・コーバンをここに連れてこい!、今すぐにだ!!」


 侍従は帝王の怒りにおびえながら控えの間を出ていった。


 帝王に続いて王族の控えの間に入った王子や王女は、どうして帝王が怒っているのかわけがわからなかった。


 控えの間から出て玉座に座ったと思ったら、いきなり『王の威厳・威圧』を全力で使い、アラン・コーバンの前まで行った。


 そして…、今まで経験したことの無い清浄なる大きな力での威圧に意識を失いそうになった。


 しばらくその場に立っていた帝王は玉座に戻り、アラン・コーバンと問答をした。


 やがて清浄な威圧はタマシイをほぐし清めるものに変わり、光が上から降り注いだ。


 なにが帝王を怒らせたのか?。


『王の威厳・威圧』にアラン・コーバンが膝を屈しなかったから?。


 王子たちや王女たちが思いをめぐらせる中、第三王子のアバンロは静かにアラン・コーバンが王族の控えの間にやってくるのを待っていた。


『アラン・コーバン…、アイツはもしかして…。さてどうやって確かめてやろうか…』


 宰相オイマール・ヤンガー公爵は、王族たちの様子を見て思った。


『今日の謁見はとても疲れた。もうお屋敷うちに帰りたい…』


 

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