第120話 創造神様とのんびりトーク:⑩
オレとアンドリューがサリーエス様の立像を黙って見つめていると、声が聞こえた。
〚アラン、なかなかいい仕事をするね〛
オレとアンドリューはハットして立像を見た。
白く輝く立像の御顔がニッコリ笑っている。
オレはその場に両手両膝をついて頭を深く下げた。アンドリューもその場に這いつくばって頭を下げた。
しばらく沈黙の時が流れたが、気まずくなったのかサリーエス様が言った。
〚アランもアンドリューも頭を上げなさい〛
オレたちが頭を上げるとサリーエス様は言った。
〚アンドリュー、こうして話すのは久しぶりだな。いつも地上のモノたちを見守っている姿は見ているよ。大変な役目を任せているが、なにか不満はないかな?〛
『サリーエス様の思し召しにより与えられましたお役目をただひたすら務めて参りました。不満などございません』
オイ、アンドリュー。あーるはつけなくても話せるじゃないかよ。
〚ハハハハハハ。アラン、あまりアンドリューをイジメてやるな。そやつはいい奴だぞ、わかっているであろう?〛
『サリーエス様のお慈悲をいただきまして、生命が助かりましたこと、深く御礼申し上げます』
『しかし、このアホゥドリはなんですか!?、
『そなた、それは言いすぎなのであーる』
『前後の見境無く突撃してきたのは、どこのどなた様でしたかねぇ…』
『それは…、悪かったと詫びたのであーる。詫びの品も持ってきたのであーる』
〚まぁまぁ、アラン、そのへんにしておいてやれ。アンドリューは地上に生きるモノたちを見守る為に長年働いてくれているのだ〛
『サリーエス様、アンドリューの役目とは具体的に何をしているのでしょうか?』
〚うむ、アンドリューはこの世界を飛び回って異常に力の大きくなったモノがいないか見回り、それを見つけたら討伐しているのだ〛
『それは、この世界のバランスを保つということですか?』
〚うん、そうだよ。アランは理解するのが早いね。もし異常に力の大きくなったモノを放置しておくと、やがて魔物が氾濫してこの世界の生き物たちが死滅してしまうかもしれないから、見つけ次第始末しないとダメなのだよ〛
アンドリューは魔物の氾濫…、スタンピードを防いでいるのか。なかなか大変な仕事だな。
オレはアンドリューをほんのちょっと見直した…、ほんのちょっとだよ…ニヤリ。
〚アランは手厳しいねぇ…、ところでこの立像はどうして造ったのかな?〛
オレはポーチから鉄で造った立像を取り出してサリーエス様に見せた。
『私がコレを造ったのにアンドリューが気づいて、どうしても造ってくれとせがむので…、しかたなく造りました、いけませんでしたか?』
〚いや、アランがアンドリューに造ってやったのなら何も問題はないぞ。してアンドリューはこの立像をどうするつもりなのだ?〛
『我のすみかに飾り、毎日お祈りするつもりであー…ございます』
〚ハハハハハハ、アンドリューよ。無理をせずとも普段の話し方で良いのだぞ〛
『承知しましたであーる』
早えなお前、まぁかしこまった話し方もむず痒いからいいけどさ。
〚ところでアラン。アランに託した役目はうまくいきそうかな?〛
『はい、まだ目覚めて二日目ですので、そう大勢に広まってはいませんが、高位の貴族がその一族郎党に広める動きを見せるようですし、身近な者にはサリーエス様の御名前を呼ばせたりしています。明日はこの国の帝王に会いますので、その場でも広く御名前を呼ばせて、『禁忌』では無いということを強く主張しようと思っています。ただ長年の習慣として御名前を呼ばなくなっているので、それを改善していくのには長い年月がかかるのは致し方ないと思います』
〚うんそうか。わかった。ところでなにか他に頼んだことがあったのだが…〛
うぅん…?、他に…。
あっそうだった、地上の食べ物をお供えするんだった。
オレは内心冷や汗をかきながら言った。
『もちろんわかっていますよ。立像が完成した記念にサリーエス様にご馳走しようと思っていたところです』
アンドリューが、んっ?となにか言いそうな顔をしたので、そっと頬をつついて黙ってろとアイコンタクトした。
〚そうか…、そうだよね…。アランが私との約束を忘れるわけないよね…〛
サリーエス様の圧力が凄い。
泣いてもいいですか…。
オレは立像の前に結界で大きなテーブルを造り、試しに神威で果物を出してみた。サリーエス様の世界でできたことが、地上でもできたよ!。神威ってスゲーな。
それからドーナツ各種・ショートケーキ各種・サンドイッチ各種・おにぎり各種・手打ちうどん・特上寿司・果物各種・生ビールの大ジョッキ・ワインボトル・大吟醸酒・クラッシュアイスと黒い炭酸飲料を入れたラージサイズのカップ等々…これでもかとばかりにご馳走を山盛りに出した。
横にいるアンドリューが食べたそうにヨダレをたらしているけど、お前の火とヨダレの水分とで水蒸気爆発したらどうするんだよ、このバカ。
サリーエス様はとてもお喜びのようで、食べ物が次から次へと光に包まれて消えていく。
オレたちはそれを黙って見ていたが、サリーエス様は不思議そうに訊いてきた。
〚お前たちは食べないのか?〛
『ご相伴させていただいてよろしいのでしようか?』
〚もちろんだよ。食べなさい〛
それを聴いて、アンドリューがサリーエス様のお供え物に手を出そうとしたから怒った。
『ゴルァア、このアホゥドリ!、それはサリーエス様がお召し上がりになるものだろうがぁ!!。手を出すんじゃぁねぇよ!!!』
『いま用意するから、待て!』
オレはアンドリューの目の前に結界で大きなテーブルを出して、サリーエス様にお出しした食べ物を出した。
『ほら、コレはお前の分だから食べなよ』
『コレはとても美味そうなものばかりであーる。いただくのであーる』
オレは自分用に牛丼のつゆだくと豚汁大盛りとサバの塩焼きに鶏のから揚げを出して食べた。う〜ん、美味いなぁ〜〜。
テーブルに出したサリーエス様へのお供えにも鶏のから揚げ・餃子・天津丼・チャーハン・醤油ラーメン・天ぷらそば・おでんの盛り合わせ・天ぷらの盛り合わせ・おはぎ・おまんじゅう・肉まん・中華まん・ローストビーフ・玉子焼き…とどんどん出していった。
サリーエス様もアンドリューもなかなかの健啖家で、出すそばから消えていくから面白くなってきた。
そうして食事のスピードも落ち着いてきてまったりしていたら、何かが結界に当たっている。
んー?、どうしたぁ?。
結界の上部を開けて外の音を聞こうとしたら、ジェームズが大声で叫んでいる。
「ア〜ラ〜ン、大丈夫なのか〜〜。ア〜ラ〜ン」
あー、…そうか結界の中で集中して作業しているあいだに、だいぶ時間が経ったのかな。気にしてなかったでゴザル。
『サリーエス様、私はそろそろ帰らないといけないらしいです』
〚そうか…、楽しい時間が過ぎるのは早いな。致し方ない。今日はこの辺でお開きとするか〛
『はい、またお話できるのを楽しみにしております』
〚うむ、アランが持つその立像で話しかけてくるとよいぞ〛
サリーエス様のミスリル立像からオレの持つ鉄立像に光が伸びてきて収まった。
オレはそれを半透明の結界に包んでポーチにしまった。
〚では、アラン、アンドリュー。息災でいろよ〛
そう言うとサリーエス様のミスリル立像からの光が少し弱くなった。ミスリル立像には神威の残滓がまだ残っているのだろう。
オレは声を風魔法に乗せてジェームズに届けた。
「お父様!、みなさま!、まもなく結界を解除します。
周囲からザワザワザワという話し声や物音が聞こえてきた。
オレはサリーエス様のミスリル立像を半透明の柔らかい結界で包んでアンドリューに言った。
『アンドリューの住んでいる場所までどれくらい時間がかかるんだ?』
『うぅむ、普通に飛べば四時間程度であーるかな?』
『よし、わかった』
オレは結界に魔力を込めたが、余裕をみて五時間で魔力が抜けるようにした。御顔の前を透明にして、設置する時に前後がわかるようにした。
『アンドリュー、約五時間程度でこの結界は消えるから、それまでにお前のすみかに設置できるよな?』
『大丈夫であーる』
『御顔が見えるようにしたから、設置するときにお前の見やすいようにすれば大丈夫だよな』
『おっ、それはいいであーるな。ではもらっていくであーる。またどこかで会った時はご馳走してほしいであーる』
『今度はもっと鉱石を持ってこないとダメだぞ』
『わかったのであーる』
『ハハハハハハ、ウソだよ。気にしなくてもいいよ』
『ウソはダメであーるぞ』
『アンドリューはそういうとこは真面目なんだなぁ…。じゃあ、またな』
オレはアンドリューが柔らかい結界で包まれたミスリル立像を背中に乗せて飛び立つのを見送った。
アンドリューはギョェェェェェーーと嬉しそうに鳴いて上空に飛んでいった。
オレは残った鉱石や精錬した金と銀のブロックを土魔法で造った荷車に乗せて、上から鉱石のガラをかぶせて結界で包みこんだ。
金目のものをもらったなんて他人には見せられないからね。
その場に残った食べ物やテーブルは綺麗に消して、神威の残滓は結界で吸収した。
風魔法で空気を上空に飛ばしてから結界を解除すると、そこは…。
様々な紋章を鎧やローブにつけた騎士や魔法使いが集まった『第二回:騎士祭り』が開催されていた。
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