第119話 不死鳥来襲:③
オレは精神的にとても疲れたであーる…イカンイカン、アンドリューの口癖がうつっちゃったよ。
選り分けた鉱石は金と銀が多くて、ミスリルとアダマンタイトは少ないが、まぁなんとかなるだろう。
オレはミスリルを御身体のベースにして創造神サリーエス様の立像を造ろうと思ったので、ミスリルの精錬から始めた。その量によって立像の大きさがわかるからだ。
鉱石を風魔法で浮かせて、土魔法で不純物を落として埋める穴を掘り、鉱石を細かく砕きながら火魔法で熱を加えていった。
不純物があらかた下に落ちたところで、ミスリルをざっくりとした立像の形にまとめてみた。
うーん、…高さ二㍍にはちょっと足りないか。金鉱石はたくさんあるから、純度百%近くまで精錬してピカピカの金で台座を造ればいいかなぁ。
オレはサリーエス様の御姿をしっかりイメージして、ミスリルを整形していった。
美味しいモノを食べてニコニコしている御顔と両手を大きく前に出した御姿にした。
前世の記憶にある南米の大都市を見下ろす巨大なキリスト像をイメージして整形したら、いい感じでまとまった。
神威をゆっくりそそぎ込んでいくと、白く柔らかな光で輝き始めた。
その工程を見ていたアンドリューが興奮気味に言った。
『これは…!、サリーエス様!、これは素晴らしいものであーる!』
なんだよ、興奮してても語尾にあーるを付けるのは忘れないのかよ。
かなりガッチリ神威を込めてからアンドリューに訊いた。
『持ってきたミスリル鉱石の量だと、この大きさでしか造れないがいいかな?。もっと大きい立像が欲しいなら他の金属を混ぜないとダメなんだが、神威を込めるのはミスリルが一番いいと思うんだけど…』
『これでいいのであーる。我が住む場所にはこれでいいのであーる』
『アンドリューはどんな場所に住んでいるんだ?』
『我は、ここからはるか遠くの険しい山脈をさらに越えた高い山の洞窟に住んでいるのであーる』
『そこには生き物…人族は行けるのか?』
『無理であーる。途中の山脈は険しいし、強い魔物もいるであーる。そなたなら大丈夫かも知れんであーるな』
『そうか、それならいいや。これだけ純度の高いミスリルは、人族のあいだでは高いカネで売れるから、バカな奴らに狙われるかなと思ったんだが…、大丈夫だな』
『もしサリーエス様の立像を我から奪おうとするモノがいたら、ソイツは燃やしてやるのであーる』
そう言って、アンドリューは口から火を吹こうとしたので、慌てて止めた。
『バカ、ヤメロ。結界の中で火を吹くな!。オレが丸焦げになるだろうが!』
アンドリューは笑い出した。
『何がおかしいんだよ!』
『そなたの慌てた顔…さんざん我をいたぶったそなたの慌てた顔が…おかしかったのであーる』
『あー、…そうですか。それはよろしゅうございましたねぇ。もう少し綺麗に仕上げて台座も造ろうと思ったんだが、これで止めておくかな…』
『ダメであーる。ちゃんと最後まで仕上げないと…サリーエス様に怒られるであーるぞ』
『バカ、そんなこたぁわかってるよ。オレだってサリーエス様から怒られるのはイヤだからな、キチンと仕上げるさ』
オレはミスリルが冷えるのを待つあいだに、金鉱石と銀鉱石の山を風魔法でそれぞれまとめて浮かせた。時間が短縮できないかと、精錬を同時にやってみることにしたのだ。
土魔法で細かく砕きながら火魔法で熱を加えていくと、いい感じに不純物が飛んでまとまってきた。純度が高くなるに連れてピカピカ光りだしたので、純度を鑑定したら、99.9%までいったので、そこで熱を加えるのは止めて、縦五㌢横十㌢長さ三十㌢くらいのブロック状にした。
金は百個、銀は八十個できた。アダマンタイトは精錬方法をしっかり調べて剣を作りたいから、そのままにしておいた。
宝石類を含んだ鉱石もここで細かい加工は無理そうだからそのままにしておいた。ダイアモンドはブリリアントカットくらいしか知らないしそれもぼんやりしてるから、一度帝都の宝飾店に連れて行ってもらって、この世界で流行してるカットや装飾品の実物を見てからそれを真似して加工するかな。
オレは金のブロック五十個を溶かして立像の台座を造った。
立像のベースの裏に安定して固定できるように中心と四方に穴を開けて、金の台座からその穴に合わせたドリルの刃を五本出して、まだ柔らかいうちに差し込んだ。冷えていくうちにドリルの刃がガッチリくい込んで外れなくなるだろう。
砕いた鉱石のガラをまとめてガッチリ固めて土魔法で台座を造った。台座を含めて全体的に三㍍くらいの高さにした。
金のブロック一つと銀のブロックを少し削って混ぜ合わせた。鑑定したらスターリングシルバーと出たので、ピカピカ光る金の薄い板にしてから、立像の頭部にカツラみたいに被せてサリーエス様の髪型をしっかりイメージして整形した。
グルリと周りを歩いてチェックしたが、いい感じに御姿を再現できたようだ。
『どうだ、これでいいかな?』
『うむ、素晴らしいのであーる』
オレとアンドリューは黙って、サリーエス様の立像を見続けていた。
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