第117話 不死鳥来襲:①
猛スピードで突撃してきた火の鳥の顔を目標にオレはカチカチの結界球を出現させた。
神威をガチガチに込めて物理攻撃無効と魔法反射も付与したから、火の鳥はただではすまないだろうな。
グォォォ〜〜ンと轟音を上げて結界球にぶつかった火の鳥は頭を振ってフラフラと空中を漂っている。
オレはそーっと火の鳥を結界で包み込むと、地面に引きずり下ろした。
神眼で見ると【
サリーエス様の加護を戴いている神獣を殺すわけにもいかないが、大人しくさせるためには神威と魔力を吸い取る必要があるな。
オレはフェニックスを包み込んだ結界の内側に神威吸収と魔力吸収を強くイメージして付与した。外側には神威放出と魔力放出を付与したから、フェニックスは神威と魔力を吸い取られてだんだん力を失っていくだろう。
放出された神威は美味しくいただきま〜す。
衝突の衝撃で眼の焦点が合っていなかったフェニックスは徐々に意識がハッキリしてきたようだが、オレの結界を破壊するだけの神威と魔力が失われていることには、まだ気がついていないようだ。
フェニックスは『グギャグギャギョエー』と大声で鳴き始めたから『うるせぇバカ!、静かにしろよクソ鳥がぁ!!』と『念話』で怒鳴りつけた。
神眼に神威を込めて【フェニックス:名前】と念じると【アンドリュー】と読み取れたので『コラ、アンドリュー!、お前ふざけてんのかオラァ!』と言うと、フェニックスは『念話…その眼は…なんで我が名を…』と混乱しているようだ。
どうやらコイツは神威を込めた魔法をオレが使ったから、それをめがけて突撃してきたらしい。
アホだ、この鳥…、アホだ。
前後をわきまえずに突撃するなんて、さすがに不死鳥だから死なないと思っているんだろうが、力の
オレは結界から抜け出そうともがいているフェニックスを見ながら、コレを反面教師にしてオレも慎重に行動しなくちゃダメだなと思った。
『オイ!、アホゥドリ、お前は何をしたくてあんな猛スピードで突撃してきたんだ?』
『我はアホゥドリではない!、誇り高きフェニックス!!、アンドリューであーる!!!』
『我は創造神サリーエス様の加護を戴いた神獣であーる!、
『誇り高きフェニックスを奇妙な技で捕らえるとは不敬の
コイツホンモノのアホゥドリだ。オレはわざとらしく大きなため息をついて言った。
『なぁアンドリューさんよぉ、アンタは誇り高きフェニックスさんなんだから、下賤な人族の魔法なんか一撃で打ち破れるんじゃないんでしょうかねぇ。もったいつけずに、どうぞご自分でおやりになってくださいましな』
『ウニュ…、グニュニュ…、グギャ…、グゥゥ〜〜』
『下賤な人族の張った結界なぞ我が力で…、グゥゥ〜〜…、グニュニュ…』
オレはフェニックスの顔の前まで近づいて手を叩いて応援した。
『ガンバレ〜〜、ガンバレ〜〜、アホゥ〜ド〜リ〜。フレ〜、フレ〜、アホゥ〜ド〜リ〜』
ウギャアァァーと甲高い鳴き声を上げてもがいたが、力の源の神威と魔力は失われていくばかり、心なしかフェニックスを包みこんでいる炎の色も鮮やかな紅色から赤へ変わり、だんだん黒味が強くなってきた。
あー、…コイツ燃え尽きちゃうかな…。それはさすがにマズイか…。
オレは静かに話しかけた。
『オイ、アンドリュー。もう一度訊くぞ。お前はどうしてオレに向かって突撃してきたんだ?』
アンドリューは息も絶え絶えになりながら言った。
『誰かが創造神サリーエス様のお力をこの地で使ったのを感知したのであーる。久しぶりに地上で感知したお力に創造神サリーエス様が降臨されて、何かしら
『ふんふん、カッとなって…?』
『カッとなって…気がついたら突撃していたのであーる』
『やっぱりお前はフェニックスじゃなくてアホゥドリじゃねーか。前後の見境無く突撃してくるなんて、誇り高きフェニックスとして恥ずかしくないの?。ねぇ恥ずかしくないの?』
『二回も言わなくていいのであーる』
『大事なことは二回繰り返すのがお約束なんだよ』
『お約束…、それは創造神サリーエス様とのお約束なのであーるか…?』
『いや、そうじゃないけど…、そんなことはどうでもいいんだよ。それでアホゥドリも神眼なり鑑定なりでオレのことはわかるんだろ?。どうなんだ?』
『うむむ、しばし待つのであーる』
フェニックスがオレのことを読み取っているのを待つあいだに結界でソファを造って座っていると、ジェームズが声をかけてきた。
「アラン、大丈夫なのか?、それはフェニックスだろう…。サリーエス様の眷属だよな」
「ええ、コイツはフェニックスじゃなくてアホゥドリですから大丈夫です。神威を使った魔法を感知して飛んできたのですが、サリーエス様が降臨されたと勝手に思い込んだ挙句に、私がただの人族だったのでカッとなって突撃してきたらしいです。アホゥですから、このままにしておけばいずれ消滅するから気にしなくても大丈夫ですよ」
消滅すると言うオレの言葉にギョッとしたアンドリューは、オレに言った。
『よし、わかったであーる。そなたはアラン・コーバンという名でこの世界に転生…』
『オイ、アンドリュー。オレの転生については絶対に秘密だ。それを誰かに漏らしたら、マジで消滅させるぞ』
オレはマジマジのマジで全力の神威をアンドリューにぶつけた。アンドリューはさらに炎の色が黒ずんできた。
『わ…、わかったのであーる…。その威圧はやめてほしいのであーる…』
オレはスッと神威を収めて言った。
『それで?、他には何がわかった?』
『うむ、そなたは我と同じく創造神サリーエス様の加護を戴いている。我も神威を使った魔法を
『ア ン ド リ ュ ー 、お前はいちいち下賤だなんだとか言わないと気がすまないのか?』
オレが再びイラッとして神威をぶつけようとしたのを察知したアンドリューは慌てて謝ってきた。
『悪かったのであーる。もう言わないのであーる』
『わかればいいんだよ。それで?』
『創造神サリーエス様の御名前をこの地に暮らす人々が口にするように広めるお役目を
『見せてくれ!、我にその立像を見せてくれ!!、このとおり頼むのであーる!!!』
アンドリューは頭を下げて頼み込んできた。
『なんでアホゥドリに創造神サリーエス様の御姿を見せなきゃいけないんだよ、ヤダね』
『そんなことを言わないでくれであーる。何かお礼をするであーるからして…』
『お礼の前に、お前がさっきから『あーる』って語尾につけているのがウザいから、それ止めたら考えてやってもいいかなぁ…』
『コレは…、コレを言わないと…、なんとなくしまらないのであー…る、やっぱり無理であーる。それ以外でなんとか頼むであーる』
チッ、『あーる』は言わないとダメなのか、面白くねぇなぁ…。
う〜〜んと、どうしようかなぁ。
よし!、謝罪といえばやっぱりカネだな。カネで解決してやろうじゃないか。
『じゃあ、謝罪の気持ちをカタチにしてくれたら見せてやってもいいよ』
『カタチ…とは、なんであーるか?』
『鈍いなぁ…、カネ持って来いって言ってるの。お前が人族のカネを持っているかどうかは知らないから、金とか銀とかプラチナやミスリルとかのカネになる鉱物を持って来いよ。そしたら見せてやるし、なんならサリーエス様の立像を造ってやってもいいぞ。その代わりいい材料を持って来いよ』
『サリーエス様の立像を我に造ってくれるのか!、本当か!!、本当なんだな!!!』
『なんだよ!、二回も言わなくていいだろうが!!』
『いや…、先程そなたも二回繰り返していたのであーるから、お約束を守ったのであーる』
なんだよぉ、お前面白いやつだなぁ。テンドンを理解してるじゃないか。
『アンドリュー。これは真面目な話だ、よく聴けよ。創造神サリーエス様の御名前を出して嘘をつけば、オレがこの世から消滅させられる。わかるな。オレはサリーエス様の御名前をこの世に暮らす人々が口にするように広めるお役目を
オレはサリーエス様の立像をポーチから取り出して、半透明の結界を解除して、アンドリューに見せてやった。
神威を込めて造った立像を見て、アンドリューは深く頭を下げて言った。
『うむ、そなたの力しかと確かめたであーる。我は詫びのしるしとサリーエス様の立像の素材を持ってくるから、しばし待っていてほしいであーる。それと…、この結界を解除して欲しいのであーるが…』
ハイハイ、わかったわかった。
オレはアンドリューを包みこんでいる結界を解除して、ついでに神威をアンドリューにそそぎ込んでやった。力を取り戻したアンドリューの身体は再び
ギュェェェーーと甲高く鳴くと、アンドリューは上空に向かって急上昇して姿を消した。
オレは手に持ったサリーエス様の立像を見ながら、あんなアンポンタンが神獣なら、サリーエス様もご苦労なされる訳だとしみじみ思った。
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