第108話 為せば成る
創造神サリーエス様の御名前を広めるお役目に力を貸してくれると約束してくれたサマダン・オチョーキン公爵は一族郎党や公爵家に連なる下級の貴族たちに至急便を出すと言って、しばらくは使い物にならなそうなサリバンの襟首を掴んで引きずりながらコーバン侯爵家を去っていった。
じいさんなのに力持ちだなぁ、身体強化を使っているのかなと思いながら、オレはジェームズたちと一緒に屋敷の玄関ホールでお見送りをした。
公爵の乗った馬車と入れ違いに豪華な馬車がやって来た。
馬車の前後と両横のドアにトカゲちゃん…じゃなくて燃える二重の輪に王冠を
ジェームズを先頭に
ジェームズが帝王家の紋章のついた封書を受け取ると、詳細は封入されている書面をお読みいただきたいと言い終えて使者は帰っていった。
応接室に戻ったオレたちは残っていたドナルドとオリバに『帝王陛下からの書状が届けられました』と話した。
ジェームズは封書を開封して中身をじっくり読んでから、オードリーに渡して言った。
「三日後に王城でアランとの謁見の場が開かれるそうだ…」
オードリーは言った。
「帝王陛下はアランをどうなさるおつもりなのかしら?」
「アランがサリーエス様の加護を授かっているのはもうガーシェ大帝国のみならず周辺諸国や『あの国』にも知られているだろうから、まずはアランがどういう人物なのかを見定めたいのであろうな」とドナルドが言った。
「サリーエス様の加護を授かっているアランは、帝王陛下よりも上位の存在と言っても過言ではない。帝王陛下としてもガーシェ大帝国に取り込みたいであろうから…、爵位を与えるかもしれぬな」とオリバが言うとジェームズは「爵位…」と
「サリーエス様の加護を授かっているアランに爵位を与えるも良し、あるいはその家族であるジェームズを伯爵に
ドナルドおじいちゃんの考えを聴いてオレは思った。
あーなるほど、オレに『豪華な首輪』をプレゼントしてくれるってことね。
そんなのイラネエ…。
帝王陛下に会ったら先制パンチを喰らわせないとダメなのかな…。
「三日後…謁見用の礼服が間に合うかしら…、明日仕立て屋が来るように手配はしたけれど、どうかしらね…」オードリーが心配そうに言った。
「んっ?、礼服か?。クラークとアラン、そこに並んで立ってみろ」とドナルドが言った。
オレはクラークと並んで立った。十歳のクラークとは五㌢くらいしか変わらなかった。それを見てヴィヴィアンが頬を膨らませて言った。
「ちょっとお、私より背が高くなっているじゃないのお…ズルイ!」
いやいや、看病している時にだんだん身体が大きくなっていくのには気がついていたでしょうが!、なんでいま怒るのかなぁ?。
女心はわからんよ…。
「ふむ…、たしかアーノルドとジェームズが子どもの頃に着ていた礼服が何着かあるはずだ。それを届けさせよう。リチャードの服はアヤツの子どもたちが着ているから…」ドナルドは途中であいつらのことを思い出したのか黙った。
オレも神罰を受けたあいつらの着た服はいらないよ。
オレは
クラークも嬉しそうに頷いている。
「アランはもう上手に話せるようになったが、帝王陛下との謁見は初めてであるな。クラークもヴィヴィアンも呼ばれているのか?」
「はい父上、家族全員で登城するように書かれています」
「では王城での立ち居振る舞いや帝王陛下との謁見での礼儀作法ができているか確認せねばならんな。ホルンが知っているから大至急やらせることだ」
「はい承知しました」
ドナルドとジェームズ親子により、オレたちはあまり楽しくない礼儀作法の特訓を受けることになった…メンドクセー。
それから場所を移してオレたち家族とドナルド・オリバで軽く食事をした。
オレは創造神サリーエス様と過ごした場所の話をした。
白いモヤに包まれていて時間の流れも地上とは違う…、頭に思い描いたことが実際に起きる…、そして魔法の手ほどきをしてもらったこと。
「アランは創造神サリーエス様から魔法の手ほどきをしてもらったのか!?」クラークが目を丸くして言った。
「はい、魔法の使い方を教えてもらいました」
オレが答えるとヴィヴィアンが喰いついてきた。
「なになに?、私にも教えてよ」
「具体的な魔法はここでは無理だけど、サリーエス様から言われた言葉を教えるね、それは『できると思えばできる、できないと思えばできない、魔法を使うには頭の中にしっかりとしたイメージ…どんな魔法が使いたいかを思い描くことが大事だ』と言われたんだ」
オレは前世で読んだ歴史小説に書いてあった有名な言葉を思い出していた。
【為せば成る・為さねば成らぬ何事も・成らぬは人の為さぬなりけり】
魔力に加えて神威も使えるオレは、魔法の使い方を誰よりも真剣に考えないといけない。
神威の使い方を間違えてこの国を滅ぼすのは本意では無いからだが、必要であれば威嚇・威圧するために使わないといけない。
帝王がそこまでオレを追い込まないでくれるといいのだけれど…。
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