第106話 おじいさまと呼んでくれ…
家族にオレが新しく授かった魔法を披露したり、結界魔法を工夫した使い方を見せたりしていたら、通用門を通って何台もの馬車が屋敷にやってくるのが結界の粒から伝わってきた。
誰が降りてくるのかな?と思って結界の粒を降りてくる人にくっつけてみたら、ドナルド・コーバン
屋敷の内外を警護する各家の騎士や兵士たちが敬礼して迎える中を堂々と歩いてくるのはいいけど、お貴族様のお約束として先ぶれって必要じゃないの…?。ジェームズと一緒に来た騎馬集団の中にいたのかな…。
オレは家族に言った『ご親戚のお貴族様達が来たよ』
『んっ?、あぁ
『そう、それにサリバンも来た』
『たしか私と一緒に騎馬で来た者がいたな…、あれが先ぶれだったのだろう』
『アランはサリバン様のことがキライなの?』オードリーが訊いてきた。
『う〜〜ん、好きではないです。
『サリバン殿は胡散臭いか…、まぁそういうお仕事をされているからな…』ジェームズが
屋敷に入った一行は応接室に通され、誰かがオレの部屋に歩いてくるのがわかった。
誰だろう…知らない魔力の持ち主だな。
その人物が結界で包まれたドアをノックするのに合わせて風魔法に声を乗せて返事をした。
「いま結界を解除するから待ってくれ」
結界が解除されたドアを開けて入ってきたのは、他の家族は見慣れた顔のようだがオレの知らない人物だった。
その人物がジェームズに言った「サマダン・オチョーキン公爵様とサリバン様、オリバ・ヘンニョマー侯爵様、ドナルド・コーバン侯爵様がいらっしゃいました。皆さまと…」オレをチラッと見た、「アラン様にお会いしたいと申されていますが、いかがいたしましょうか」
ジェームズとオードリーは顔を見合わせたが、ジェームズがオレに訊いてきた。
『アラン、どうする?。お会いするか…?、まだ体調が良くないと断ってもかまわないよ』
オレはめんどくさいなぁと思ったが、先延ばししてもいずれは会うことになるだろうから、面倒事はサッサと済ませておこうと思い
『大丈夫ですよ、お会いしましょう』
『それで、この方はどなたですか?』
『あぁ、これはこの屋敷に新しく来た家令だ、名はホルンという。父上の屋敷の家令:ハルンの息子だ。アランが眠り込んでいるあいだにこの屋敷の内外に人が大勢出入りするようになって、使用人たちも忙しくなってな、統括する者を父上に用意してもらったのだよ』
ハルンの息子でホルンか…、管楽器は演奏できるのかな…。
「アラン・コーバンだ。私が眠り込んでいるあいだに屋敷の者たちが世話になったようだな。今後ともよろしく頼む」オレはホルンに声を出して言った。
「ホルンと申します。よろしくお願いいたします」ホルンはオレに頭を下げて言った。
家族はオレが『念話』を使わなかったのでハッとした。
ホルンに対するオレの警戒心に気がついたようだ。
『もう当たり障りの無い話しかしないようにしますので『念話』はどうしても必要になったとき以外には使いません。ご承知おきください』オレは家族に『念話』でそう言うと、声に出して言った。
「お母様、何かまともな服はありませんか?」
「あら、そうね。寝ているあいだにアランは背が伸びたみたいだから…クラークの服を借りるといいわね」
「ホルン、明日仕立て屋が屋敷に来るように手配しておいて」
「かしこまりました、奥様」
オードリーは廊下で待機しているヘレンとマリアを呼び入れた。部屋に入ってきた二人はオレに駆け寄って来て抱きつこうとしたから、柔らかい結界で二人の身体を包んでそれを止めた。
「二人とも落ち着いて!、私はどこにも行かないし、また眠り込んだりしないからね」
「私が眠り込んでいるあいだにお世話してくれたこと、感謝してるよ。ありがとう」オレはニッコリ笑って二人に言った。
二人は涙でグショグショになった顔でウンウン頷いている。
オレは結界マジックハンドでタオルをつまみ上げて二人に渡した。
「せっかくの美人さんが台無しだよ。それを使って涙を拭いて」
ヘレンとマリアにホルンも空中をタオルが飛んでくるのに目を丸くしていた。
オレは『見たことのない結界魔法の使い方をしていると、どれくらい早く外に漏れるかな…』と内心思っていた。
オレは家族以外は誰も信用しないことに決めていた。創造神サリーエス様の世界で地上を見ていたから、貴族の生きている世界は情報を取ったり取られたりの繰り返しで、いかに速く正しく情報を得ることで生存を
「二人とも落ち着きなさい。アランは着替えが必要だから、クラークの服をここに持ってきて」
「「は"ぁ"い"、お"く"さ"ま"」」二人は鼻声で返事をして部屋を出ていった。
それからジェームズ・クラーク・ヴィヴィアン・オードリーも着替えをするために部屋を出ていき、メイドたちが持ってきた大量のクラークの服からオレが着れそうな服を選んだ。
もちろん、一人で着替えられるからと二人を部屋から追い出したのは言うまでもない。
結界マジックハンドを使えばなんなくできることだからね。
ヘレンとマリアはお手伝いをしたくてウズウズしていたけれど、フンドシを外したらエリンギがコンニチワするのを見られるのは…
いままで着ていた服と比べると三十㌢くらいは身長が伸びていて、クラークの服は少し余るくらいだった。サイズが小さくて着れなくなった服を片付けてもらってから、迎えに来たホルンと共に応接室に向かった。
応接室に入るとオチョーキン公爵とサリバンにヘンニョマー侯爵とコーバン侯爵がオレを待っていた。
オレは直立不動で両手を太ももの外側に指を伸ばして添え、腰を45°曲げて頭を下げる正統派の日本式おじぎをして言った。
「サマダン・オチョーキン公爵閣下、オリバ・ヘンニョマー侯爵閣下・ドナルドお
名前を呼ばれた三人はウンウン頷いているが、ドナルドおじいちゃんは自分だけが『おじいさま』と呼ばれたので軽くドヤ顔しながらニコニコしている。
それを見たヘンニョマー侯爵がすかさず言った。
「アラン、よく目覚めたな。嬉しいぞ。いろいろ話を聴きたいことがあるが……ワシのことは『おじいさま』と呼んでくれないのか?。ほら…、お前のお
ハッハァ〜ン、この三人の中でマウントの取り合いをしているようだな。
『創造神サリーエス様の加護』を授かっているオレに『おじいさま』と呼ばれるワシってスゲーだろってか。
まぁ『おじいさま』と呼ぶのはタダだから呼ぶけどさ。
キミたち!、オレが笛を吹いたらちゃんと踊るんだよ!!、わかったね。
「お言葉に甘えて、オリバひいおじい…、オリバおじいさまと呼ばせていただいてかまいませんでしょうか?」
「おお!、もちろんだ。かまわんぞ!!」オリバもドヤ顔でニコニコし始めた。
一人蚊帳の外に置かれたオチョーキン公爵はグヌヌという顔をしたが、直系の血族では無いから『おじいさま』とは呼ばせ辛いし、サリバンはオレにガン無視されているから天井をボーッと見つめているよ。
慌てるなよサマダン。創造神サリーエス様の御名前を広く呼んでもらうようにするためには、アンタの公爵の地位は使えるんだから、悪いようにはしない…いいように使ってやるから。
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