第80話 創造神様とのんびりトーク:⑤

 創造神様が消えてから、『神眼』を使う練習をしようと思ったけれど、地上したでまだ寝ている誰かの履歴りれきをスクリーンで見るのは悪趣味だとあきらめた。朝になれば誰か動き出す者がいるだろうから、そいつらを見ればいいか。


 手持ち無沙汰になったオレは『ハラ減ったなぁ』と思った。精神体だから感じないはずの空腹感におかしいなぁと思ったけれど、前世で死んでから創造神様の世界に来た時に潰れた胸の痛みを感じたのを思い出して、ここには無い肉体の状態が分かるのかなと思った。これは創造神様への質問が増えたな。


 神威カムイで食べ物って作れるんだろうか…、例えば…吉◯家の牛丼つゆだくとか…。


 そう思った瞬間に出たよ!、出ましたよ!!。◯野家の牛丼つゆだく様が降臨されました〜〜!!!。


 割り箸も付いているし、別料金の味噌汁もありまんがな。


 こりゃあたまりませんなぁ〜。


 ガッツリかき込むと、ウマーーーイ。前世で食べたより遥かに美味い。極上の肉とコメとタレのハーモニーにオレは夢中になって牛丼を完食した。


 いやぁ~、神威っていい仕事しますねぇ。


 調子に乗ったオレはうどんを食べてみたいと思ったが、これがなかなか難しい。


 一口にうどんと言っても地方によって麺の太さや硬さが違うし、提供のされ方も調理済みで運ばれてくるところもあれば、茹でた麺だけをどんぶりに入れて渡され、つゆやネギとかショウガはお好みでどうぞというところもある。


 四国の自動車工場にいた時には、うどん好きの同僚にあちこち連れて行ってもらったなぁ…、あの人元気でいるのかな…。


 とりあえず、記憶に一番残っている古びた手打ちうどん屋のゴツゴツとした歯ごたえ充分な太麺うどんをイメージした。つゆは寸胴に入っていて、ネギとショウガに胡麻は好きなだけ入れる店だ。どんぶりにタップリつゆをそそいで、ネギはたっぷりでショウガは香り付け程度、胡麻と七味唐辛子もたっぷりのうどん様をいただきま〜〜す。


 これもウマーーーイ!。


 神威って本当に素晴らしいですねぇ。


 オレが夢中になってうどんを食べていると、いつの間にか創造神様がやってきて、ジトーッとした目でオレを見てる。


 そういえば創造神様って食事はされるのだろうか?。


『創造神様、お召し上がりになりますか?』


 創造神様は嬉しそうにウンウンうなづいた。


 オレは太麺の手打ちうどんをどんぶりに出して、セルフサービスでつゆやトッピングを追加することを説明した。


 モグモグしていた創造神様は言った。


〚美味しいとは思うけれど、ずいぶん硬くて歯ごたえがあるね。〛


 ならば少し柔らかめがいいかなと思い、北九州にいた頃によく食べに行っていたチェーン展開している資◯んうどんのうどんを出した。調理済で提供されるがテーブルに置いてあるトッピングはお好みで加える店で、やや細麺で柔らかい。ゴボウの素揚げを追加すると、これがまた美味いのよ。食べに行った帰りにおはぎを買って渋いお茶とともに食べるのが好きだったなぁ。


 これは創造神様のお好みに合ったようだ。良かったぁ。


 資さ◯うどんはどんぶりものとか定食も美味かったなぁと思ったら、それが次々に出てきた。おはぎもある〜〜。


 創造神様とオレは出てきたものを次々に平らげ大満足。


 神威様様だよぉ〜。


 満足気にまったりしている創造神様にきいてみた。


『神威で作った食べ物はどうなるんですか?』


〚うん?、それは吸収されるね。元々神威は私の力だからね〛


『するとこの満腹感と満足感はただの錯覚ですか?』


〚うーん…、まぁそう言っちゃうと身も蓋もないかな。でもアランが神威に馴染んでいくのにはいいことだと思うよ。だから遠慮しないで、これからも前世で食べた美味しいモノを出していいよ〛


 ニッコリわらった創造神様を見て、これはマイルドにカツアゲされてるなと思ったが、次は何にしようか選んでおかないとなとも思った。


『創造神様、教えていただきたいことがあるのですが…』


〚いいよ、なんだい?〛


『この身体は神威で作られた精神体なのに、空腹感や満腹感を感じるのはどうしてでしょうか?』


〚それはアランの肉体と精神体が結ばれているからだよ。見えないヒモでつながっているから肉体の感覚をここでも感じるんだ。もしそのヒモが切れてしまったら地上したに戻っても精神体だけで彷徨さまようことになるね〛


 ゲーーッ、それは困るなぁ。


〚私が側にいて見張っているし、精神体に神威をどんどん取り込んでいけば大丈夫だから…ね〛


 ヘイヘイ、みなまで言わせるなってことですね。美味しいモノをご用意しておきますよ。


地上したにある私の肉体はどうなっているのでしょうね…』


〚見てみればいいじゃないか〛


 オレはスクリーンにオレの部屋を映してみた。


 ベッドに寝かされたオレの横にはオードリーが寝ていて、追加で入れたらしいベッドにはヴィヴィアンが寝ている。


 オレを抱きしめて寝ている母親オードリーの寝顔を見て思った。


『お母様、ご苦労をおかけしてごめんなさい。地上したに戻るのはまだ先になりそうだけれど、戻ったらいっぱいお話ししましょうね』


 創造神様は優しくオレの肩をポンポンッと叩いた。


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