第79話 創造神様とのんびりトーク:④

 空飛ぶ結界板で創造神様とのツーリングを楽しんでから、寝椅子を置いてある場所に戻ってきた。


 広大な創造神様の領域を縦横無尽に飛びまわったからどこに寝椅子があるか分からないんじゃないかと思ったけれど、ピンポイントで寝椅子の真横に着地した。


『創造神様、あれだけ飛びまわったのによくこの場所がわかりましたね』


〚それはマーキングしているからね、わかるんだよ〛


 マーキング…?、散歩中の犬が電柱にシーーッてやるやつか?


〚アラン、また失礼なことを考えているね…〛


 創造神様にジトーとした目で見られてオレはドキッとした。


『創造神様は私の考えていることをおわかりになるのですね』


〚わかるよ〜。アランがいま何を考えているかとか、前世の記憶とか…ね。ダメかな?〛


『いえ、創造神様ならできないことはないでしょうと思いますので不思議ではないのですが。鑑定魔法とは違うのですか?』


〚うーん、違うとも言えるし同じとも言えるかな。アランの今の身体は神威カムイで作った精神体を実体化したものだから、元々は私の力の一部なんだよね。だから特に意識しなくてもアランがいま考えていることはわかってしまうんだ〛


『なるほど、そうなんですね。前世の記憶も同じようにわかるのですね』


〚そうだねぇ…、アランが触れてほしくないことはカットするようにはしてあるよ〛


 あー、それは前世の母親エロブタのことだな。この世界に転生してから恵まれた家庭に産まれ育っているから、アレのことは忘れてたよ。


 地獄に落ちろとは思うけどね…。


 オレは前世の記憶がわかるなら創造神様と何かで遊ぼうと思った。だって地上したは夜中でみんな寝てるし、オレはまったく眠くない。夜が明けて『神罰』の後始末に関係者たちが動き回るのはまだ先だ。


 シンプルなコンピューターゲームがいいかなと思ったので、スクリーンを出してブロック崩しをやることにした。


 極初期のゲームでスクリーンの上部に横十列縦五列のブロックを並べて、画面中央から出てくるボールを下部のブロックを左右に動かして跳ね返し、上部のブロックを消していくやつだ。一列消すと上に一列追加されて、ボールのスピードも上がるようにイメージした。


 手元に神威で簡単なコントローラを作った。スタート/ストップボタンと上下左右に動くレバーのみ、コレなら初見の創造神様でも楽しめるかな…。


 オレはさっそくやってみせることにした。


 創造神様は興味しんしんで見ている。


『創造神様、コレで遊んでみませんか?、最初に説明しながらやってみますね』


 オレはスタートボタンを押してボールが動くのを手元のコントローラで跳ね返し一番下のブロックに当てて消した。次々とブロックを消していき一列目がすべて消えたときに上から一列追加されてボールのスピードが上がるのを説明した。


 オレはストップボタンを押して創造神様にコントローラを渡した。


『どうぞ、お試しください』


 横で見ていた創造神様はスタートボタンを押してブロックを動かし始めた。スクリーンを見ながらニコニコしてコントローラを動かしているので、オレは別のスクリーンにブロック崩しを出してやり始めた。


 前世ではよく喫茶店に行ってやったなぁ…、イン◯ーダーとかゼビ◯スとか…。


 トランプのポーカーをコンピューターゲームでやって、勝つと百円玉がジャラジャラ出てくるヤツも流行ったなぁ。オレは才能があったのか知らないが負け知らずだった。


 違法賭博だから軒並み警察に捕まっていたけど、アレはかなり儲か…ゲフンゲフン。


 チラリと横を見ると凄まじいスピードでボールがスクリーンを飛びまわり、増えるブロックが次から次へと消えていく。コントローラを動かす手もブレてよく見えない…。


 ナニコレ…、創造神様ってプロのゲーマーなの…?。


 オレが目を丸くして見ているのに気がついた創造神様はストップボタンを押して言った。


〚単純だけど面白いね〛


 はぁ、そうですか…。


〚他のモノもやってみたいなぁ〛


 期待に満ちた目で見られたので、これも定番のテト◯スをだしてみた。四つの箱が棒形・四角形・デコ形・ボコ形・L形に組み合わさった五種類のブロックにしてみた。


 コントローラのレバーを右に二回倒すと時計回り、左に二回で反時計回りに回転するようにしてやってみた。


 さっそく試しにやってみたら創造神様の反応がいいので、渡してやってもらった。


 オレも隣で別スクリーンでやり始めた。コレはシンプルなのに難しいんだよな。小さなキーホルダー付きのやつで仕事の休憩時間にやってたなぁ…。


 そんなことを思い出しながらまたチラリと横を見ると、画面に滝のようにブロックが落ちてきていてそれが瞬時に組み合わさって消えていく。


 オレはナニを見せられているのだろう…。


 創造神様はストップボタンを押してオレに言った。


〚コレも面白いね。他のモノもやってみたいなぁ…〛


 期待に目をキラキラさせた創造神様の笑顔に負けたが、コンピューターゲームではすぐ終わりそうなのでゲーセンに有ったシューティングゲームをやってみることにした。


 筐体きょうたいを神威で作りシンプルなピストルにした。画面に出てくるモンスターが障害物の影から攻撃してくるのをひたすら撃ちまくるやつだ。六発撃ったら画面の外を空撃ちしてリロードするのを説明してやってみた。


 コレは最初から創造神様のやり方を見ていたら、手の動きがブレまくりで、画面から出てきては撃たれるモンスターも出た瞬間に撃たれるからキリが無い。


 はぁ〜〜、出るのはため息ばかりなり…。


 しばらくシューティングゲームを楽しんでいた創造神様はオレを見てニッコリ笑って言った。


地上したにはいないモンスターがいたけど、楽しいね。地上したには森とか山とか海にも面白いモンスターがたくさんいるから楽しみだね〛


 おっ、それそれ!、ダンジョンにも行きたいし、コーバン侯爵領の森とか探検したいんだよね。


 火に風に土魔法をバンバン打ち込んじゃうよぉ〜〜。


 結界で包んでギューってしちゃうんだからぁ!。


 あっ、そうだ!、創造神様に聴いてみたいことがあったんだ。


『創造神様、先ほどのコンピューターゲームで創造神様が画面をクリアするスピードが尋常じんじょうではなかったのですがどうしてあんなことができるんですか?』


〚あー、アレか。アレは時を止めているんだよ〛


 んっ?、なんだって?。


『創造神様は時間を止めれるんですか?』


〚うーん、かなり入り組んだ話になるから今はやめておくけど、あのゲームではブロックの動きが遅く見えるようにしたんだよね。だって私の眼は『神眼』だからね〛


『神眼…、ですか…』


〚そうだよ。まぁ神だから眼は『神眼』、手は『神の手』と言えるんだけどね〛


〚アランも使えるよ〛


『えーっ!、どうしてですか。私は神様じゃありませんよ』


〚だってアランの身体は神威で作られた精神体だから…。それはつまり私の身体と同じなんだよ。だからアランの眼も『神眼』なんだよ。アランの精神体こころに神威がしっかり馴染んだら、地上したに下りてからも使えるよ〛


『そうなんですか…』


〚ここにいる間に使い方を覚えておけば便利だよ〛


地上したに下りて肉体に戻って生活し始めると、アランの力を利用してやろうとか敵意をもって近づいてくる者が必ず出てくる。殺そうとする者もいるだろう。その時に『神眼』で見れば、そういう連中のことがわかるんだよ〛


〚空を飛びまわってから戻ってくる時に、この場所をマーキングしていると言ったよね。それを人や魔物たちに使えるんだ。例えばアランを好きな者たちは緑、嫌いな者たちは赤、どちらでもない者は青、殺そうと思っている者は黒というふうに色分けして人や魔物たちを見れれば便利だろう?〛


〚鑑定魔法でも見れないことはないけれど、その者の考えていることや、その者の背景にいる者のことはわかりづらいからね〛


〚アランを我がモノにしようと画策かくさくした女がいたよね。あの者を見たときに、産まれる前のことからスクリーンに表示されたのを覚えているだろう。アレは『神眼』の使い方の一つだよ〛


 あー、ヤリチン帝王がやらかしたってやつか。たしかに産まれる前のことからわかってしまうのはスゴイな。


〚まだしばらくはここにいないとダメだから追々説明していくから楽しみにしておいて。では私はやることがあるので行くね〛


 創造神様はそう言うと姿を消した。お忙しい中のひとときのいこいの時間だったのかな。


 『神眼』かぁ…、使いこなせればいいんだけどなぁ…。

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