第71話 神罰下って日が暮れて:①
【 帝都中央教会:マローン大司教 side 】
アランの鑑定と結界魔法のお披露目が終わり、マローン大司教一行はコーバン侯爵家の別室で酒と料理の接待を受けていた。
侯爵家の接待だけあって、用意されているワインや料理は絶品であり、一同の中にはいささか飲み過ぎで取り乱す者もいる。
マローン大司教もその一人で、華美な装飾品は好まないが、教会で定められている数々の公務…朝の礼拝から始まり、信者の
信者が寄進したワインの中でも逸品とされるものはマローン大司教のもとに届けられ、
しかしマローン大司教は物欲はほとんどないにも関わらず、名誉や自身の出世に関しては
『アラン・コーバンを我が
マローン大司教が酔った頭でとりとめもなく
マローン大司教や他の者は眉をひそめてその者を見たが「コレは!、この威厳と威圧は!!。聖なる威厳と威圧に満ちたこの御力は…。大司教様、この屋敷の
大司教も他の者もそれに気がついた。
酔ってはいるものの、それぞれが聖魔法の使い手であり、聖職者としての
しかしアランから立ち上る聖なる力…神威の
大司教一同はその場にひざまずいてアランに熱い視線を送った。
大司教は息を整えて顔や口に密かに
「この室内に創造神様の御力の形跡が…、ここで何が起こったのでしょうか?。よもや創造神様がご降臨されたのでしょうか?」
オードリーはそれに答えず、アランを抱いて書庫を出ていった。クラークとヴィヴィアンもそれに続いた。
大司教も立ち上がってオードリーを追おうとしたが、ジェームズが鋭い目つきでそれを制した。
「大司教殿、アランが急に体調を崩したので、我々は屋敷に戻ります。どうぞ捨て置いていただきたい」
「アラン様のご回復をお祈りいたします。『創造神様の加護』を戴いているアラン様とはいずれまたお会いできることを願っております」
ジェームズはそれを聴いても鋭い目つきのままだった、やがて言った。
「大司教殿の
ジェームズは
マローン大司教は書庫内を見ようとしたが、サリバン・オチョーキンが扉の前に立ちふさがった。
「大司教殿、本日はご足労いただいたことを感謝いたします。お目汚しになりますので、この場にてお引き取りをお願いいたします」グッと魔力を込めた目で
大司教は早々にこの場を立ち去りたかったので、コーバン侯爵を探して辞去を告げたかったが、取り込んでいるとのことだったので、家令のハルンに「いずれまた時期を見て、アランに会って話がしたい」と
帝都中央教会の自室に戻るまでマローン大司教は一切口を開かずに、これからの戦略を考え続けていた。
コーバン侯爵邸で何が起こったのか、いずれはその詳細は明らかになろう。コーバン侯爵邸内に帝都中央教会に礼拝する者もいるから、さりげなく聞き出すのも可能だろう。
神威の残滓から、創造神様ご自身が降臨されたのか、神託があったのか…。何かしらが『創造神様の加護』を戴いているアランの身に起きた。
おそらくまだ幼いアランはそれに耐えきれずに気を失った…。
しかしアランが『創造神様の加護』を戴いているのは確定したので、教会としてそれに手を打たなければならない。
聖騎士を派遣するか…。
『創造神様の加護』を戴いている者を警護するのは教会として無理のない動きだろう。あわよくばお側に
大司教はキャビネットの奥からとっておきのワインを取り出すと、グラスになみなみと注いでグゥッ〜と飲み干した。
コレは良いワインだ。飲み干してしまうのは惜しいが今夜はこの一本を堪能することにしよう。ツマミは要らぬな。
アランが我がものになった日のことを考えるだけで、もう他には要らぬわ。
大司教はワインを飲みながらニヤニヤが止まらない。
大司教は知らない。はるか雲の上のさらに上から、寝椅子に寝転んで見ている者がいることを。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます