第40話 脳筋ちゃんたちへの説明

 お腹が空きすぎて、マジで我慢の限界がきたオレは、ロザリーのおばちゃんトークにも気づかずに爆睡ばくすいしているクラークとアーネストを起こすことにした。


 結界球を二人の足の裏にくっつけて、くすぐってみようかな。


 オレは二人の両足の裏にビッシリと結界球をまとわりつかせて、モゾモゾ動かしてみた。


 最初は足がピクピクして、しかめっ面になった二人だが、オレがしつこく結界珠を動かし続けると、激しく足を動かしたり振り払うような動きになり、やがてガバっと起き上がると、いぶかしげに足の裏を確かめている。


「どぅーしゅたぁ・によぉ?」


 オレが笑いを噛み殺しながらクラークにきくと「足が…足の裏に…虫がついてた…?」と首をかしげながら言った。


 アーネストも足の裏を確かめながら「なんかいたな…」と言うから、オレはこらえきれずに「むぅしぃー?、いにぃゃぁぃ・にょぉー」と笑いながら言うと「アラン、イタズラしたな!」とクラークがちょっとムッとして言った。


「せっかく気持ちよく寝ていたのに…、なんでイタズラするんだよ」


「おにぃゃぁきゃ・しゅぃてぃぁー・にょぉー (お腹空いたのー)」


「お腹空いた…、あっ、私もだ!」クラークとアーネストは顔を見合わせて笑い出した。


「あなたたち、よく寝ていたわねぇ」


 二人が起きてきたのを見たオードリーがベッドに近づいてきて言った「もうそろそろお夕食の時間ね。みんなで食堂に行きなさい。私はフランソワの世話をしてから行きますからね。それとお様、 " " については!」


「わかっているわよ。アーネスト、私たちの荷物の中からオードリーへのお土産を持って食堂に行きなさい。いいわね」


「はい、お母様」アーネストは答えると部屋を出ていった。


 オレはクラークと一緒に部屋を出て食堂に向かった。


 ロザリーはオードリーがフランソワにOPPAIを飲ませるのを待って、一緒に行くようだ。


 食堂に行ってオードリーたちを待っていると、ジェームスが騎士団から帰ってきて食卓の椅子に座った。


 オレはジェームスに『念話』で『お父様、クラークとアーネストに魔力を増やしたいなら、私に聴けとおっしゃったのですか?。人に教えるなんて難しいことできませんよ~』と言うと、ジェームスは笑いながら「ハハハハハ、いやいやアランは赤ん坊のときから魔力を身体にめぐらせていたし、結界魔法を複数使っていても平気なくらい魔力が多いようだし、大丈夫かなと思ったんだ。二人はどうだった?、教えてもらってなにか得るものはあったか?」


「はい、アランから身体の隅々すみずみにまで細かく魔力を流すやり方を教えてもらいました。実は気持ちが良くて頭がボーッとしてアーネストと一緒に寝てしまいましたが、今は自分の身体がとても軽く感じます」クラークがそう言ってアーネストを見ると、お土産の包みをかかえこんだアーネストもウンウンとうなずいている。


「ほう!、身体の隅々にまで細かく魔力を流すやり方か!!。それはぜひとも私にも教えてもらわないとな、いいよなアラン」

 

 ジェームスがオレをキラリと光る目で見ながら言った。


 親父さんよぉ、アンタ今でも充分強いのにさ、まだなんかやりたいわけ?。まぁ教えるけどね。


 クラークとアーネストにも聴こえるように意識して、ジェームスに『念話』で話しかけた。


『お父様、言葉を口に出さずに頭の中で答えてください、私の言うことが聴こえますか?』


『ああ、わかるよ』


 よし、じゃあやるか。


 オレはクラークとアーネストに説明した細かい魔力の粒を血管の中をめぐっているヘモグロビンの表面にくっつけて、身体の隅々にまでめぐらせるやり方をイメージをえて説明した。


 二人に説明していなかった魔力の粒が身体の隅々に行き届いたら、そこにとどまらせることもイメージを追加して説明してわかりやすくした。


『アラン!、そのやり方は聴いてないぞ!』クラークがちょっと怒ったように言ってきたが『ごめ〜〜ん、忘れてた。へへへへへ』と伝えると、首を振りながら『まぁいいか、たぶん一度にやれと言われても難しかったかも知れないからな。今ならそのやり方はよくわかるよ。アラン、ありがとうな』クラークが言うと『そうだ、私も礼を言おう。アランありがとう。これからもいろんなことを教えてくれよな。頼んだぞアラン』とアーネストも言ったので『はい、喜んで!』と伝えると、ジェームスも『私にも頼むぞ』と言ってきた。


 さて本命の魔力を増やすやり方だが、コレは魔力を限界まで使い果たして、頭痛がして身体がダルくなって我慢できなくなるまでやる必要があるんだけど、ジェームスとクラークには難しいかもしれない。


 オレはまずアーネストに説明し始めた。


『アーネストは今日から時間があるときにはひたすら土魔法を使うこと。お父様に放った土礫アースバレットでいいから、とにかく数多く作り出せ。それは庭か客室の窓の外に落としておけば、そのうち消えて無くなるから問題ない。それを続けていくうちに頭が痛くなって、身体がダルくて我慢ができなくなるから、そのまま寝てしまえばいい』


『起きたら、少しだけ魔力が増えているはずだから、それをひたすら繰り返すだけ。いきなり今の魔力が何倍にも増えることは無いし、それは危険すぎて生命に関わるから気をつけること』


『ひたすら繰り返していくうちに、頭が痛くなって身体がダルくなる前に、なんとなく魔力が切れそうな感覚がつかめてくるし、魔力が回復するまでの時間も短くなるはずだから、それを楽しみに続けることだ』


 アーネストは土魔法だからまわりになにか被害を与えることはないが、ジェームスとクラークは火魔法の使い手だから、安全にやらせるには場所を選ぶなぁ…。


 そうだ!、アーネストに煙突付きのかまどを庭に土魔法で作ってもらって、そこで火魔法を使わせればいいか。


 うんうん、とりあえずはそれでやってみよう。


 オレは三人に煙突付きの竈で魔力が枯渇こかつする寸前まで火魔法を安全に使うことを説明した。


 三人はなるほどなるほどと頷いていて、明日の朝一番でアーネストに竈を二つ作ってもらうことにした。そういう工作物はお得意のアーネストはニコニコ顔で『お二人の役に立つ魔法が使えて良かったです』と喜んでいた。


 ジェームスとクラークは魔力を使い果たすのがおあずけになったので不満そうだったが、とりあえず今日は調理場の竈で交代でやってみたらどうですか?と伝えたら、ニコニコ顔でよーし!と硬く拳を握りしめている。


 いやー、魔力を使うのに力は要らないんだけど、脳筋ちゃんってやつかよ。


 またあとで説明するのもめんどくさいので、身体強化のやり方をさらに説明した。


 つまり早く動きたい時は脚に魔力を集め、剣や槍を鋭く振るったり打ち込むときには腕や上半身に魔力を集めるが、特に剣を打ち込む瞬間に魔力を強く多く集めることを説明した。


 ただし、魔力だけに頼った身体強化には、魔力が切れたらおしまいという欠点があるので、基礎的な体力・筋力を増やすために、身体強化を使わないで走ったり重いものを持ち上げたりしないといけないということを説明した。


 前世でやっていたラジオ体操を使った身体のほぐし方や腹筋・背筋・腕立て伏せなどの基礎トレーニングをイメージをフルに使って説明すると、三人はウ〜〜ンとうなり始めた。


 ちょっと難しかったかな…、と思っていたらジェームスが静かにきいてきた。


『アラン、先程からお前が教えてくれたやり方は私も知っていたものもあれば、知らなかったがなるほどと納得できるものばかりだが、お前はどうやってそんな知識を得ることができたのだ?。リチャード兄上にいただいた本にそこまで書いてあったのか?』


 あ〜〜、やっちまったなぁ〜!、もう餅つきをする芸人も脳内であきれてるよ…トホホ…オレヲヒトリニシナイデヨ…。


 『創造神様の加護を頂いているから、なんとなく頭に浮かんできた…』と、とっさに誤魔化そうとしたら、三人は大きく頷いていて納得したようだ。


 『なるほどな、創造神様の加護というのはスゴイものなんだな…』ジェームスは感慨深げに天井を見上げた。


 オレは心のなかで創造神様を利用したことに謝罪の気持ちで祈りを捧げた。


 遠くの方から愉快そうに笑う声が聴こえた気がした。


 それにしても、本当にお腹空いたなぁ……(三回目)…グッスン


 



 

 

 

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