第38話 おばちゃんトークはエンドレス

 「アラン、闇魔法について調べていたの?」顔を伏せたロザリーが静かにきいてきた。


 「はぁい、おぉびぇんきゅぅお・しちぃぇ・ましゅたぁ (はい、お勉強してました)」


 コレはヤバイやーつ!だと内心ビクビクしながら答えた。結界魔法〚反射・切断〛はバリバリ全開で黒いモヤさんがなにをしてくるか様子をみることにした。


「そう……、偉いわね」ロザリーは顔を伏せたままで呟くように言った。


 かなり気まずい雰囲気になったのを打ち消すようにオードリーが言った。


「ねえお様、二人とも罪のない顔をして寝ているわね。髪の色は違うけれど、クラークとアーネストは似てるわ。お様(ドナルド・コーバン侯爵)にも似ていませんか?」


「そうねぇ…、鼻と口元が似ているかもね」


 ロザリーはオレから視線を外して、ベッドで寝ているクラークとアーネストを見てそう言った。


 オレはロザリーがこのまま部屋を出ていってくれることを願ったが、そうはいかなかった。


 オードリーがロザリーの髪や肌質について問いただし始めたからだ。


「お義姉様、お会いしたときから聴きたかったのですが、なにか髪とか肌にいいものを使ってらっしゃるの?」


「あら〜、オードリーだって、髪や肌質がツヤツヤピチピチしていてうらやましいわ〜」


「いえいえ、もう私なんて髪はパサパサで肌もカサカサしていて……やはり子どもを四人も産むと、だんだんダメになってきているんです……」


 オードリーが大げさに自分を卑下ひげし始めると、ロザリーは待ってましたとばかりに、オードリーの手を握って話し始めた。


「そうなのよね〜、子どもを産むとそうなるのよね〜……私もずいぶん苦労したんだけれども、とてもいいものを見つけたのよ〜〜!」


「えっ!、いいものを見つけた!!。お義姉様、それは何ですか?」


「ウフフフフフ、気になる〜?。気になるわよねぇ〜〜」


「お・義・姉・様、らさないでください……」


 オレはロザリーがオードリーと美容について話し始めたので、ホッとしたがエスカレートしていく二人のおばちゃんトークにウンザリしてきた。


 オレはこのとき、不変の真理に気がついてしまった。つまり前世でもこの世界でもということだ。


 前世でも道端でまわりの通行人や車両の往来をいっさい気にせずに、話し込んでいるおばちゃんたちに舌打ちをしたことは数え切れないほどあるし、普段は理性も知性もある女性がイザとなると、無敵のおばちゃんムーブをかましてくるのに閉口したこともある。


 不変の真理その二は、ということだ。別名:


 オレはそーっと魔法大辞典を引き出しに片付けると、結界板でベッドに移動して、おばちゃん二人がキャイキャイ話しているのをボーッと見ていた。


 お腹空いたなぁ……。



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