第36話 念話バージョンアップ
ん~ん、んんっ?、んーっと、なんか騒がしいな。
オレは魔力切れ間近のダルい身体をベッドに横たえるとそのまま寝てしまったようだ。
頭の痛みは無くなったけれど、目を開けるのもダルいから結界球をベッドの周囲にばらまいてみた。
フランソワの寝ているベッドのそばに二人の小さい子どもとメイドの…この体型はマリアかな?。子どもは…クラークとアーネストか。
オレは身体を横にして薄目を開けて部屋の中を見渡した。
やっぱりクラークとアーネストがメイドのマリアがフランソワのお世話をしているのを見てるな。
「にゃにぃ・しぃてぃぇ・りゅにょ?(なにしてるの?)」とオレが言うと、子ども二人はオレのベッドに駆け寄ってきて言った。
「アラン、目が覚めたんだね。魔力の増やし方を教えてよ!」二人が目をキラキラさせてオレに突進してくるから、オレはちょっとビビってきいてみた。
「みありぃょー・きゅぅ?(魔力?)」
「そうだよ。魔力の増やし方だよ!。お父様から言われたんだ。魔剣を使いこなすにはまだ魔力が足りないって!。魔力を増やしたいならアランに教えてもらえって!」
クラークが言うには、オレが魔力切れでダウンしたあとに、ジェームスが出仕する前に汗を流している風呂場に突入して、魔剣を使いこなすにはどうすればいいか訊いたらしい。ついでに三人で身体の洗いっこもしたんだってさ。そこでジェームスが魔力を増やす方法はアランがよく知っているから教えてもらえって話になったらしい。
めんどくさいなぁ…。
まぁ実の兄貴と
オレが身体を起こしたのを見たマリアがベッドに近寄ってきてきいてきた。
「アラン様、お目覚めですか。よくお休みになられていたので、お昼は起こしませんでしたが、なにかお持ちしましょうか?」
「はぁい、たぁびぃりゅう (はい、食べる)」
「わかりました。すぐお持ちしますが、このままベッドでお召し上がりになりますか?」
「しょお・しぃりゅぅ (そうする)」
「ではそのように用意してまいります」と言ってマリアはフランソワに着替えさせた洗濯物を持って部屋を出ていった。
「アラン様、私も魔力を増やしたいです。お願いします」とアーネストがオレに詰め寄ってきた。
いやーこいつも暑苦しそうなんだけど…、まぁいいか。
それはいいとして、従兄弟同士で、親の爵位の上下関係があるといえども、それぞれの親は実の姉弟なので、「様」付けで呼び合うのは水臭いから、それは止めてほしい。
この世界の貴族のしきたりにはそぐわないかもしれないが、受け入れてもらいたいなぁ。
オレは『念話』で二人と話すことにした。だって言葉を口に出すとまだるっこしいし、上手く伝わるかどうか分からないからな。
『アーネスト、魔力を増やすやり方を教えるのはいいけれど、年上の従兄弟から「様」付けで呼ばれると身体が
アーネストはいきなり頭の中に聴こえてきた誰かの声にキョロキョロとまわりを見渡してから、オレを
『アーネスト、どうした?。なにかあったのか?』オレが悪ノリで追い討ちをかけると、アーネストは目をまん丸にして驚いている。
「アラン…様…、今のはアラン…様…ですか?」アーネストはオレを見つめながら問いかけてきた。
『そうだよ』オレはニヤリと笑った。
「アラン…様…は、結界魔法の他にも魔法が使えるんですか!?」
『うん、使えるよ。ただしコレは秘密だよ。この屋敷で見たことや聴いたこと、知ったことは心のなかにしまっておいてほしい。実際に他の貴族のことをベラベラ話すのは、アーネストも貴族の令息なので
「はい、それはわかっています」
『それにアーネストの母上は私たちの父上の実姉なんだし、アーネストも年上なんだから、せめて対等の
「そうだね。私もそれでいいと思う。アーネストは私よりも二歳上だし、いずれはこの家を帝都での実家として一緒に過ごすことも多くなるから、今のうちにそういうことにしておきたいね」
「わかったよ。二人がそう言うなら、それでいこう」
オレは『念話』を使いながらアーネストの魔力を探っていた。血を分けた家族の魔力はなじみやすいが、今日初めて会ったアーネストの魔力も血縁関係が濃いからかすぐになじんだ。
コレならアレができるかも…、つまりお互いに『念話』を使っての会話だ。
ちょっと試してみるか。
『二人とも今からきくことに、言葉を口に出さずに頭の中だけで答えてくれ、いいかな』
クラークとアーネストは
『二人とも自分の身体の中にある魔力だまりは感じられているんだよね?』
『『わかっているよ』』
おーーー!、できたよ!。
できちゃいましたよ!!。
よしよし、これで魔力を増やすやり方を教えるのが楽になった。
『じゃあ、まずベッドの上に座ってくれ』
二人はブーツを脱ぐとベッドに上がってきた。
オレは前世で体験したことのある座禅の組み方を教えた。
あぐらをかいて両手をへそのあたりで重ねて座り、ユックリと口から息を吸って鼻からはきながら、身体を大きく左右に振り続けていると、次第に背骨がまっすぐになるようになり安定した座り方になってきた。
二人の動きが静かになり、ユックリとした呼吸音だけが聴こえるようになってきた。
オレは目に魔力を集めて、二人の身体の中の魔力がどうめぐっているか調べてみたが、全身くまなくめぐっていなくて、上半身や両腕に集中していて、下半身はめぐりが悪い。
うーん、これはヘモグロビンさんの出番かな?。
オレは赤ん坊の頃にイメージした血管の中をヘモグロビンに小さな魔力の粒がくっついて身体の中をめぐり回るイメージを二人に伝えた。『念話』と一緒にイメージを伝えたら、二人とも驚いた顔をしていたが、よりわかりやすかったらしく、ウンウンとうなって試している。
オレは『身体の中に魔力をめぐらせるのに力はいらないんだ。むしろ余分な力が邪魔をするから、呼吸に注意をして力をできるだけ抜いてやってみて』と伝えた。頷いた二人は徐々に身体の力を抜いて、魔力が血液とともに身体全体をめぐるイメージを
その様子を見守っていると、静かにドアをノックしてマリアが紅茶とお菓子を持って部屋に入ってきた。オレは口に人差し指を当てて『二人は今とても集中しているから、静かにしてくれ』と『念話』で伝えて、机の上を指さした。
『そこで食べるから』
マリアは頷くとティーカップとお菓子のお皿を机の上に置いた。
『しばらくこの部屋には入らないでくれないかな?』
マリアは静かに頷くと、そーっと部屋を出ていった。オレはベッドから下りて机に向かって椅子に座り、静かにお菓子をモギュモギュしながら紅茶を飲んで、二人を見守り続けた。
そーっと引き出しから魔法大辞典を取り出すと、身体強化の項目を読み始めた。やはり身体の中をまんべんなく魔力をめぐらせるのがその第一歩のようだ。
やがて二人とも身体の中を魔力の粒が手指の先から足指の先までまんべんなくめぐるようになった。
よーし、あとはこの状態をキープしながら状況に応じて魔力を腕や脚に集めることができれば、身体強化にスムーズに移れるな。
そう思っているとクラークが後ろに倒れそうになり、アーネストもそれに釣られたのか後ろに倒れそうになった。
オレはふわふわの柔らか結界で二人の身体を包みこんで、ユックリと身体を横たえさせた。
寝ちゃったな。でも魔力をめぐらせるのは続けられているのが見れたので、このまま寝かせておくことにした。
オレは魔法大辞典で黒いモヤさんことロザリー叔母様が使える闇魔法について調べ始めた。
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