第34話 帝都騎士団副団長の実力

 オレが作った結界チ◯ッカマ◯の威力と音に驚いたクラークとアーネストが近づいてきたが、クラークはジェームスが持っている剣に興味しんしんできいてきた。


「父上、その剣は見たことがありませんが、どうされたのですか?」


「うむ、これは私のとっておきの剣だ。この剣で騎士団副団長の地位を手に入れたと言っても過言ではない」


 それを聴いてクラークとアーネストが目をキラキラさせたが、まずは木剣で打ち合い稽古をしてから見せてやると言われて、それはそれで嬉しいので、それ以上はきかなかった。


 ジェームスはとっておきの剣を置くと、木剣を取り上げてオレにうなづいた。


 ヘイ!、喜んで!とオレも頷くと、半透明のツナギ結界でジェームスを包みこんだ。


 オレは結界を維持しているだけなら三人分でも魔力に余裕があるので、今度は水の魔法陣を使ってなにか作ろうかな…、と思いジョウロをイメージして底に初級の水魔法の魔法陣を設置した円筒を作って細長い筒を横につけ、持ち手もつけて魔力を流してみた。


 やはり魔力を流す強さで水の量が変わるようで、少しづつ魔力を増やしていくと、水がたまり始めてやがて横の細長い筒から水があふれてきた。


 ただ水を出すだけだとつまらないので、打ち合いをしている三人から離れないように気をつけながら、庭に植えてある花や木に水をあげていた。


「あらアラン、面白いことをしているのね」


 また後ろから声をかけられた。黒いモヤさんことロザリーだ。


「アランは水魔法が使えるの?」


 あー、それね。


 オレは半透明の結界に変えて、ロザリーと一緒に庭に出てきたオードリーとヴィヴィアンに見せた。


「ふぅ〜ん、水の魔法陣を結界で作ってあるんだ」そう言うとヴィヴィアンはオレの手から結界ジョウロをもぎ取ると花に水をあげ始めたが、魔力を流していないからすぐ無くなってしまった。


「アラン!、水が無いわよ」


「みぁりぃょー・きゅぅぉ・にぃゃぁぎぃや・しぃてぃぇ… (魔力を流して)」


「魔力を流すのね、先に言いなさいよ!」


 イヤ、お姉様。アンタ何もきかずにもぎ取ったじゃないですか、ハイハイみんな私が悪いんですよ。


 魔力を流すと、勢いよく水が流れ出して嬉しくなったヴィヴィアンはジャンジャン水をまき散らし始めた。あーあ、あんまり水をやりすぎると、枯れちゃうんだけど…。


 いつの間にか、三人は打ち合い稽古を止めて、ジェームスがクラークとアーネストに剣さばきを指導していた。


 オレたちが近づいていくと、ジェームスが「アラン、結界を解除してくれ」と言ったので、魔力を抜いてツナギ結界を解除した。


「さて、私のとっておきの剣を見せてやろう」


 ジェームスは鞘から剣を抜くと刀身をオレたちに見せた。


 黒い刀身が陽の光を浴びてにぶく光った。


「今から私が騎士団副団長としての本気の剣さばきを見せてやろう」


 ジェームスは俺たちから十メートルくらい離れて剣を正眼に構えるとクラークに言った。


「クラーク、火矢ファイヤーアローを打ってこい。全力で構わんぞ」


 クラークはためらったが、口を固く結ぶと右手を上げて魔力を込め「創造神様の奇跡の御業みわざをこの手に・裁きの炎で敵を打ち抜け・ファイヤーアロー」と静かに言うと、ファイヤーアローをジェームスに向かって打ち出した。


 兄貴遠慮してるな、ヘロヘロじゃんかと思ったが、実はアレが本気のヤツなのかな?。


 ジェームスは静かに「一閃いっせんじょ」と言って剣を振り抜き、ファイヤーアローを叩き切った。


「ふうむ。クラーク、今のがお前の全力か?」


「はい」


「剣の稽古もいいが、魔法の練習時間も増やすとするかな。よし、アーネストも土魔法で攻撃できるだろう?、どうだ」


「はい、土礫アースバレットでよろしいでしょうか?」


「うむ、それでいいぞ」


 アーネストはモゴモゴ言ってから「アースバレット」とだけハッキリと言って、魔力を両手に込めてアースバレットを打ち出した。


 ジェームスは静かに「一閃・序」と言うとアースバレットを叩き切った。


 うん、クラークに比べると速いかな…普段から実際に土魔法を使っているから熟練度と魔力がクラークよりは上なのかな。


 ジェームスはヴィヴィアンを手招きして言った。


「ヴィヴィアン、ライトアローを打ってこい」


 ヴィヴィアンはムフーッと顔を上気させると両手を上げて魔力を込めて言った。


「創造神様の奇跡の御業をこの手に・浄化の光で・敵を打ち抜け・ライトアロー」


 ジェームスは右足を前に出し、両手で握った剣を左腰の後ろにまわし構えた。


「一閃・


 序のときは黒い刀身だったが、今度は魔力を刀身に流したようで剣はうっすらと赤く輝いた。


 最近浄化魔法を使い倒して魔力が増えているヴィヴィアンが放った二十本のライトアローはおそらく時速百㌔くらいの速さでジェームスに襲いかかったが、刀身がブレて見えない速さで振り抜かれた剣で全て叩き切られた。


 ムーっとした顔をしたヴィヴィアンにジェームスは言った。


「なかなかやるなヴィヴィアン、いいぞ」


 ほめられても納得してない様子だが、まぁしょうがないよね。


「さて、アラン。ここにお前の最硬さいこうの結界を作ってみろ」


 ジェームスが示したところにオレは結界の壁を作った。見えないとマズイかなと思ったので半透明で縦・横・高さをそれぞれ一メートルにした正方形の結界に手を当てて魔力を最大限に込めた。ちょっと頭がクラクラしてきたが、今のオレに作れる最硬の結界になったはずだ。


 ジェームスは軽く結界壁に剣を当てて硬さを確かめて、ニヤリと笑うと言った。


「お前たち、よく見ていろ。今から見せる剣が真似できれば騎士団に今すぐ入団させてやるからな」


 ジェームスは剣を大上段に構えると刀身に魔力を流し始めた。黒い刀身が赤くなり、やがて青く輝きそれが白くまぶしくなり直視できなくなった。


「一閃・きゅう


 ジェームスが静かにユックリと振り下ろした剣はオレの最硬の結界を真っ二つに切り裂いた、続けて袈裟斬り・逆袈裟斬りに白く輝く剣を振り抜くと結界壁は霧散してしまった。


 脱力感が我慢できなくて膝をついて息を荒くしたオレにジェームスは言った。


「アラン、見事な結界だった。だがこれから身体が大きくなり魔力が増えれば、もう私には斬れなくなるだろうな。私もお前に負けないように鍛錬しなくてはいけないな」


 オレはほめられたのか?、挑戦されたのか?。


 どちらでもいいけど、身体が重いし、頭も痛いのでもうお部屋に帰ってスヤァしたいよ…。












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