第33話 結界チ◯ッ◯マン作れたよ

 クラークとアーネストは庭に飛び出して木剣で打ち合い稽古を始めたくてウズウズしていたが、みんな揃って食堂で軽く食事をしてからということになった。そういえばジェームスは騎士団に出仕しなくていいのかな?と思ったが、ロザリーが屋敷に来るので、午前中は休みにしたらしい。久しぶりの姉弟トークをしている。


「姉上、ミッチーとシャルロッテは一緒に来なかったのですか?」


「うーん、二人とも来たがったんだけど、私とミッチーが二人揃ってコーバン侯爵領を留守にするのは万が一のことがあったときに家令や使用人たちだけで対処できないかもしれないから断念したのと、シャルロッテは帝都に来るのを楽しみにしすぎたのか熱を出して寝込んでしまって…まだ六歳だからまた来ることもできるから、ミッチーと一緒にお留守番をしてるわ。一緒に暮らすアランに合わせたかったのだけれど、しかたないわね。アラン、ウチのシャルロッテはとーっても可愛いから楽しみにしててね」


 可愛い娘ですか、そうですか。そりゃあよかったですね…、と思っていたらヴィヴィアンがムーっとした顔でオレをにらんできたが、オレが何かしたわけでもないのに…知らんがな…グッスン。


「それは残念だな。久しぶりにミッチーと手合わせしたかったし、ヴィヴィアンとシャルロッテは一歳違いだから合わせたかったのだが…」


 実はロザリーの伴侶であるミッチーはコーバン侯爵邸の護衛隊長の息子で、ロザリーやジェームスとも幼なじみで一緒に遊んだり剣や槍の稽古をした好敵手ライバルでもあった。ちなみに武芸の鍛錬にはまったく興味が無いリチャードに頭を悩ませたのがその護衛隊長で、そのかわりに弟のジェームスがやる気マンマンで剣や槍の稽古をしたので、息子のミッチー共々厳しく指導できて密かに喜んではいたのだが。


 父親のミッチーと子供の頃から剣や槍の稽古をしていたと聴いて、アーネストが目をキラキラさせてジェームスに言った。


「叔父様、ぜひ私に一手ご教授をお願いいたします」


「んー、そうだな。軽くやるか」


 それを聴いたクラークも大喜びでさっそく庭に飛び出そうとしたが、振り返ってオレを見ると「アラン!、いつものアレを頼む」と言って走っていった。


 アレ?、アレって…あーアレか。ツナギ結界で身体を防護するのね、ハイハイわかりました。


 オレもトテトテと歩いて庭に向かった。


 クラークとアーネストは軽く身体を動かして木剣で素振りをしていたが、オレが近づくとクラークがドヤ顔で「アーネスト、驚くなよ。じゃあアランやってくれ」と催促してきたので、二人をツナギ結界で包み込み、頭もフルフェイスのヘルメットで包みこんだ。


「アラン、アーネストは初めてだから、見えるヤツにしてくれ」


 ヘイヘイわかりやした、お兄様の言うとおりにげぼくは働きますよっと。即座にオレは半透明の見えるツナギ結界に切り替えた。


 アーネストはいきなり自分の頭や身体を半透明の結界で包みこまれて、目を見開いて驚いていたが、クラークがニヤニヤしながら見ているので、気を取り直してきいてきた。


「アラン、コレがお前の結界魔法なのか?」


「はぁい、しょうでぃぇしゅ」


 クラークが軽くツナギ結界を叩いてみろと言うと、アーネストは木剣で自分の頭や肩や腹をコンコンッと叩いて触感を確認していた。続けてクラークのツナギ結界を力を入れて叩いてみろと言われて、最初は遠慮がちにコツンコツンと叩いていたが、もっと強く!と言われて力強く叩いた。


 ガツン!という音がしたが、クラークは平気な顔をしているし、ニヤニヤが止まらないからアーネストもニヤリと笑うと「フフフフフ。コレなら遠慮なく打ち込めるな、じゃあやろうか!」と言うやいなや二人は激しい打ち合いを始めた。


 オレは棒で叩き合って何が楽しいのかなぁ…とボーッと見ていたがヒマなので、自分の結界魔法の練習を始めた。


 火炎放射器を結界で作るのは上手くいかなかったから、もっと簡単なモノを作ろうと思い浮かんだのはチ◯ッカ◯ンだった。コレは握りを太く先端を細長い筒状の結界を作って先端に縮小した初級火魔法の魔法陣をくっつけるだけでできた。


 魔力を少しづつ流すと、魔法陣からボーッと火が吹き出た。魔力を多くすると、火の長さが五十センチくらいまで長くなり、少なくしていくと、イメージしたチャ◯カマ◯くらいの小さな火が出た。


 細長い筒状の結界を二メートルくらいまで長くして作り直して、魔力をガンガンに流すと、火が勢いよく長さ五メートルくらいまで吹き出したので、コレは攻撃手段として使えるな!とニヤニヤしていたら、後ろから見たことのない剣を手に持ったジェームスがあわてた声で叫んだ。


「アラン、危ないから止めなさい」


 オレは魔力を抜いて結界◯ャッ◯マンを解除して振り返った。


「アラン、いまのはなんだ?、いつから火魔法が使えるようになったんだ?」


 オレは五十センチくらいの細長い筒状の結界に初級火魔法の魔法陣をくっつけたモノを半透明の見える結界で作って、ジェームスに手渡した。


「みぁりぃょー・きゅぅぉ・にぃゃぁぎぃや・しぃてぃぇ・みぃてぃぇ (魔力を流してみて)」


「魔力を流せばいいのか…」


 ジェームスは半透明の結界筒をシゲシゲと見ていたが、魔法陣を見て、フムフムとうなづいてから握って軽く魔力を流した。十センチくらいの細長い火が出た。


「ほう、なるほど。結界で火魔法の魔法陣を作ったのか、面白いな。コレならいつでも火が欲しいときに使えるし、荷物にもならんか。まぁアランがいなければだめだがな」


 それな!。


 たぶん生活魔法でかまどや焚き火に火をつけているだろうし、魔道具もあるんだろうけど、オレはとりあえず◯ャ◯カマンを記憶しておくことにした。


 


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