第5話 バレちゃったみたい
オレのお世話をしてくれるメイドたちがコソコソ話をしている。
「ねえヘレン、あなた今日アラン様のオシメを替えた?」
「あらっ?、マリアが替えたんじゃないの?。さっき確かめたらキレイになってたから、てっきりあなたが替えたんだと思ったんだけど」
「わたしは替えてないわ。肌着もキレイなままなのよね~。誰かしら…?。奥様が替えられたのかしら……」
「そうねぇ…、奥様が替えられたのかもしれないわねぇ…」
『生活魔法:
だってさ、この世界は柔らかいタオル地の布をオシメに使っているから、身体は赤ん坊でも
身体全体に魔力をめぐらせていたから、もしかしたら手をかざさなくてもできるんじゃないかと思って、ウンチをするたびにケツから『クリーン』をかけるイメージで試してみたら、できたーー!。
足の指からもできるかな?とやってみたら、これもできた!。これで水虫クンとは一生会うことは無いだろう、バイバイキ〜〜〜ン。
オレってマジ天才!
イメージの力ってマジマジのマジで最強!!
神様に感謝感謝の雨あられだぜ。
オレはウキウキ気分だけど。お世話をするメイドたちはそうはいかない。だってOPPAIは一日に何度も飲んでいるのに、オシッコもウンチもしてない……、でも顔色や肌ツヤは良いし、なんなら見るたびにツヤツヤが増してきている。お腹を触ってみてもウンチが溜まって
メイドが二人がかりでオレから肌着とオシメをはぎとって、クンクン臭いをかいだりひろげて表裏をしげしげと見ているなぁと思っていたら、今度はオレのお腹や背中をグイグイ押したりマシュマロのように柔らかくてすべすべツヤツヤのお腹をなで回したりするので、イラっときたオレは「ヤーー、ヤーー、ヤァァーーーー(ヤメロー、やぁめぇろおぉぉぉー)」と大声で泣き叫けんだが、やめやしない。
練習中の結界魔法(
覚えてろよメイドども、プンプンのプーンだ。
ヘレンとマリアは他のメイドたちにアランの肌着やオシメを替えたかたずねてまわったが、誰もやってない。
二人は
ドアをノックすると「どうぞ、入りなさい」と言う奥様の声が聴こえたので、二人は奥様の部屋に入った。
ソファでくつろいでいたオードリーはアランの世話をしているヘレンとマリアがそろって部屋をたずねて来たことにいぶかしげな顔になった。
「「奥様、アラン様の様子が変なんです」」二人が声をそろえていった。
「変って……何が?」
「「オムツが汚れないんです!」」
「オムツが汚れない……、んんっ…それはどういうことかしら?」
「OPPAIはいつもどおりたっぷり飲んでいるのに、オシメが全然汚れてないんです。お腹も張ってないし………変なんです」とヘレンが言うと、マリアが続けて
「今までは(ウンチ)とか(オシッコ)とかで汚れていたのを替えていたのですが、ここ数日はまったく汚れないんです。むしろ洗濯したてよりもキレイなんです」
奥様にむかって大きな声で「ウンチ」と言うのはさすがに失礼だと遠慮して、小さな声でマリアは言った。
「私がOPPAIを飲ませるときにはオシメはキレイだったから、てっきりあなたたちが替えたばかりだと思っていたし、あなたたちもそばにいて何も言わなかったじゃない………でもここ数日なにもアランの身体から出てないってこと?、それは大変!」
オードリーは慌てて部屋を飛び出した。ヘレンとマリアがあとを追いかけてアランの部屋に入った。
新聞紙程度にひろがった結界を見つめながら、もっとひろがれーー、もっと固くなれーーとイメージしていたら、いきなり母親とメイドどもが部屋に飛び込んできた。
ビックリしたら結界が消えちゃったし、ちょっとだけオシッコちびっちゃった。
「ヘレン、マリア。コレを見て」
メイド二人がオシメを見ると、オレがちびったオシッコで汚れている。
「「あっ、汚れている!」」
やめてー、声をそろえて言わないでー、はずかちーい。
「「おかしいです!、こんなの…どうして………」」
「おかしいと言っても、コレは間違いないでしょう。アランは大丈夫………」
新しいオシメと肌着に着替えたオレを抱き上げて、耳もとで母親は言った。
「アラン、あなたクリーンを使って自分で肌着やオシメをキレイにしているのね」
母親の青い瞳にジーッと見つめられながらささやかれた言葉に、ズキューンと胸を撃ち抜かれたオレはそっと目線を外して、まだ吹けない口笛を吹いてるつもりで口をとがらせた。
ーーーーーーーーーー
オードリーは深夜二人だけになったときに、夫のジェームスに言った。
「アラン……魔法を使えるわ。まだ一歳の誕生日を迎えたばかりなのに」
「えっ、それは本当に…、確かめたのか?」
「ええ、間違いないわ。あの子魔力を身体にめぐらせるのが自然にできてるようだし、生活魔法が使えるみたい」
オードリーはメイド二人からの報告を受け自分でも確かめたことを告げた。
「うーーん、まだ一歳なのに魔法が使えるかぁ……。これは教会で確かめるべきか……、だけどもし本当に魔法が使えるようなら、親父や兄貴たちに報告しないといけなくなるなぁ……」
ガーシェ大帝国の帝都ガルガンで帝都騎士団の副団長をしているジェームス・コーバン子爵は顔をしかめた。
親父とは、軍務副大臣をしているドナルド・コーバン侯爵で、兄貴たちとは軍務副大臣筆頭秘書官をしている侯爵家長男のアーノルド・コーバン伯爵と帝都魔法師団の副団長をしている次男のリチャード・コーバン子爵のことだ。ジェームスは侯爵家の三男である。
血族の中にすぐれた魔法使いが産まれたとわかれば、侯爵家にとっても他の高位貴族たちへの牽制にもなるし、侯爵家に従う下位の貴族たちへ権威を誇示するにも有利だから、取りこもうと何かしらしてくるだろう。
「親父やアーノルド兄貴は冷静に聞いてくれるだろうけど、あの魔法バカが黙って無いだろう………」
「リチャードお兄様………確かにクラークが『神恵の儀』であなたと同じ火魔法を授かったときに「私が手ほどきをして上級魔法を使えるように鍛えてやる」と言ってうるさかったわよね。あなたが「イヤイヤ兄さん、それは私が少しずつクラークの魔力を確かめながら初級からジックリと教えるから…」と言って、お父様もアーノルドお兄様もそれを認めてくださったのよね」
「そうだったよね、だからクラークには
「生活魔法は基礎的な魔法だから使えることはおかしくないけれど、まだ赤ん坊なのに使えるのは普通じゃないわ。来年のヴィヴィアンの『神恵の儀』のときに、司教様にお願いして確かめてもらいましょうか。それまではこの家の中だけの秘密にしておくのはどうかしら?」
「ああそうだね。そうしようか、それはそれとして………なぁ……今日もいいだろう………」
「あら………もうこんなになってる………フフフフフ………」
問題を先送りにして欲望に正直になるジェームスとオードリーであった。
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