第4話 魔力はまわるよどこまでも

 身体の中にワタアメの糸をまわせるようになってから半年が過ぎた。最初はヘソのあたりからスタートして身体の表側を頭の上まで上げて、それから背骨の中を恥骨まで下ろしヘソのあたりまで上げる。それをとにかくグルグルまわしていたが、だんだん『ワタアメのかたまり』が大きく固くなってきてワタアメというよりもハンドボールみたいなしっかりとした存在になってきた、もうコレは『魔力溜まり』と呼ぶと決めた、決めたったら決めたんだ!。


 これからはそれを胴体から頭だけじゃなくて、手足の先まで身体のすみずみまでまわしてみて、届いたところに残してみたらどうなるかやってみるべえか。


 どうすれば楽にやれるか考えていたら、血管に通せばイケるんじゃねと思いついた。


 心臓から身体中の動脈を通って毛細血管のすみずみまで行き渡ったら静脈から心臓に戻せば簡単にできるんじゃないかな。


 オレって天才ーー!


 しかし考えついてからやれるようになるまではかなり苦労させられた。


 ウンウンうなっていたら、生物の授業で習った『ヘモグロビン』を思い出した。肺から酸素を受け取って身体のすみずみに届けるやつだ。『魔力溜まり』から限りなく少量の『魔力の粒』を取り出して…たぶん原子レベル…ヘモグロビンにくっつければいいかな。


 それからはひたすら魔力を細かく細かく細かーーくするイメージを思い浮かべて、心臓から血流に乗せる練習をした。


 たしかヘモグロビンってアンパンみたいな丸い円盤のイメージだったから、その表面に細かーーくした『魔力の粒』がびっしり貼りついたイメージができたら、ちょっとだけ…いきなり大量に流して血管が詰まったりしたら死んじゃうw…原子レベルなので感覚におまかせで…心臓から流してみた。


『魔力の粒』が血管を通って足の指先まで届いた気がしたが、そこにとどまるイメージが足らなかったのか心臓まで戻ってきてしまった。


 こりゃいかん、『魔力の粒』が届いたところに残るイメージを練り直してやってみたら、うまくいった!。


 イメージ最高!、しっかりとしたイメージさえあればなんとかなる!!。


 嬉しくなって血流に流す『魔力の粒』を増やしていったら、思い通り身体のすみずみまで魔力が行き届いて、そこにとどまっている感覚があるぜ。


 ヘソのあたりにある『魔力溜まり』から『魔力の粒』が全身に行き渡ったら『魔力溜まり』は小さくなるのかなと思っていたけど、あまり変わらない。魔力の量が増えてきているのかな。厳密に測定しているわけでもないからよくわからんけど、まぁいいか。



 一歳の誕生日を迎える頃には身体中を魔力がグルングルンまわっていて、それは呼吸をするのと同じで特に意識しなくても自然にできるようになった。


 魔力をグルングルンまわすときのテーマソングはおなじみのあの曲『ま〜りょくは♪め〜ぐる〜よぉ♪ど〜こま〜でもぉ♪』だ。


 実際には「まーーままめーーどーどーこーー」なんだけどね…。


 やっぱり言語能力というか、発声能力に問題があるのかなぁ……トホホ…カナチィ。


 そうしてオレが楽しんでいると、毎日の恒例行事『兄姉によるツンツン攻撃』の時間がやってくる。ガキンチョは飽きるってことを知らないのか……オレもガキンチョなんだけどね…。


 身体を触られるのが大キライなオレが泣き叫んで、母親オードリーが兄姉からオレを救いに来て、抱き上げられて背中をトントンされるまでがワンセットなんだけど、日を追うごとにオードリーがオレを見る目が厳しくなってきている気がする…。


 こりゃなんかやらかしたか…。


 魔力が増えたのに気を良くして、いつも肌着やオシメを替えてもらう時にメイドたちがやっている『生活魔法:クリーン』をこっそり自分でやってるのがバレたか?。


 だってさ、頭の中で『なにか魔法が使えるようになったかな?』と思っただけで、『生活魔法:清浄クリーンライト清浄水ウォーター火種プチファイヤホールプチヒールやし』『結界魔法:やわ』って浮かんできたから、とりあえず両手を股間にむけて『クリーン』って念じてみたらオシメとタマ○ンが「サッパリ爽やか〜〜」になったんだぜ!、嬉しいから何度もやっちゃったのはしかたないよね。定期的に肌着やオシメを取り替えてくれるメイドたちがオシメが汚れてないのを見て首を何度もかしげていたなぁ。


 ほかの魔法も試してみるか。ベットの上だったから火と水と穴はやめて、『ライト』って念じてみたら、ストロボライトみたいに眩しい光が眼の前に出たよ!。


 怖くなってすぐ『消えろ!』って頭の中で言ってみたら消えた。しばらく眼が見えなくて泣きそうだったけど、魔法が使えた嬉しさが大きかったから、我慢したよ。えらい子だねオレってw。


 生活魔法が使えるなら、結界魔法も使えるんだろうけど『やわ』ってナニ?。


 よくわからんけど、イメージとしてはテレビで見たアニメで子供がロボットに乗り込んで襲ってくるバケモノと戦うときに使っていた〚A○フィールド〛を思い浮かべて『結界!』って念じてみたら、目の前に…出たよ…ビニールのラップが……。


 指で触ってみたら、スーパーでお惣菜を買ったときに無料で入れてくれるペラペラの袋くらいの薄さと柔らかさだった。大きさはB5判サイズくらい。


 なるほど~、やわってこういうことね。


 もうちょい大きくならないかなと念じてみたら、新聞紙程度にはなったけど、やっぱり柔らかい。だけどコレを頑張って固くしていって身体全体を包みこめれば、他人から直接身体を触られることは無くなるな。


 よーし、今日からは結界魔法を頑張るぞー!!!。





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