第3話 いつまで続くの電池切れタイム

 身体の中にある『神秘のパワー:魔力』を探る日々を続けてから半年が過ぎた。


 ヘソのあたりにあるワタアメみたいなやつはかなり大きくなって、ギューッと小さく固めようとしても強く反発してくるようになった。


 四国で一緒に仕事をしていたオカルトオタクのおじさんが言っていたというやつを、ヘソのあたりにモヤモヤ固まっているワタアメから少しずつ胸の真ん中あたりに届くように試しにつまんで上に引っぱることにした。


 前世で綿のかたまりを少しつまんで糸車に引掛けてクルクルと糸車のハンドルを回すと、糸になるのをテレビで見たのを思い出したのでやってみたら意外に簡単にできた。


 そのまま喉まで伸ばしてみるとノドボトケのあたりがドキドキしてきた。しばらくそのままにしておいたが呼吸も楽にできるし、痛くもないので続けて顔の真ん中を通ってひたいまでワタアメの糸を伸ばしてみた。


 ワタアメの糸がひたいまで伸びると、身体の中にめり込むような穴が空くような感じが強くなった。しばらくそのままにしておくと、おさまってきたので頭の真ん中まで伸ばしてみた。


 以前のようにサッパリした感じじゃなくて、ココもギューンと頭の中に皮膚がめり込むような穴が空くような感じがしたが、しばらくすると落ち着いてきたので頭の後ろを通って背骨の中をお尻まで下ろすイメージでワタアメの糸を伸ばした。


 背骨の中はスイスイ通ったので、尾てい骨のあたりからタマ○ンを経由してヘソの下まで伸ばしてみて『胴体一周おめでとうございます』と言ってみた。


 実際には「ドーーオーーーマ〜」としか発音してないんだけどね。


 ちなみにどういう姿勢でやっているかというと、赤ちゃん用のベッドをぐるりと囲んだ木のさくのカドに背中をもたれさせて身体を安定させてやっている。


 ホントは座禅を組んでやりたいんだけれど、まだ手足も短いしさくにもたれて首もカドにあてていると楽なんだよね。


 ベッドの中からは出してもらえないけれど、ハイハイは余裕だし首も座っているとは思うんだけど、イマイチ身体が自分のものという感覚がないんだよな。


 着ぐるみを着ているようで、身体が自由に動かせないもどかしさがあるのよね。


 まぁ焦ってもしかたないか……。


 ワタアメの糸をヘソのあたりからグルリと通せたから、その糸を少しずつ太くしていくイメージで遊んでいたら、廊下をドタドタドターーっと走って近づいてくる音が聴こえてきた。


 キタキタキタ、お邪魔虫が今日もまた来たよ……トホホ……。


 バァーンと勢いよくドアを開けてオレのベットまで突進してきたのは、二人のガキンチョ……この世界でのオレの兄と姉だ。


 眼をキラキラさせてニマニマしながらオレの手足やほっぺたを突っついてキャッキャ喜んでいる二人と、身体を触られるのが大キライなオレが火のついたように大声で泣き叫ぶまでがワンセットだ。


 せっかく身体の中にワタアメの糸をグルグルまわして楽しんでいたのに、邪魔すんなよなぁ。


 まぁ爪の先でグリグリ痛くするんじゃなくて、指の腹でゆっくり優しく突っついているから、弟をかわいがってるつもりなんだろうけど、マジウザい。


『やめてー、さわるのキライ! さわるのキライ!! キーラーイー!!!』と叫んでいるつもりなんだけど、実際は大違い。


「ヤーーー、シャーキー、シャーキー、シャーキーキー」


 これじゃわかんないよね…。


 何度もキーキーって叫ぶのって、おサルさんじゃないか…。


 転生してからまともに言葉を発してないんだけど、神様? ……に言語能力もらって……なかったかな……? 


 産まれて半年くらいならこんなもんなのか、身近に赤ん坊がいなかったからよくわからん。


 ゆっくり歩いてオレの寝ている部屋に入ってきた赤い髪に青い目の奥さまがこの世界でのオレの母親だ。エロブタなのかどうかは知らないし、知りたくもない。


「クラーク、ヴィヴィアン。あなたたちはまた今日もお勉強を放りだして弟をいじめているの。ダメですと言いましたよね」


「お母様、もう二人とも今日の課題は終わりました。だからアランと遊びたくて……でもまた泣いちゃった……。ヴィーのことキライなのかなぁ……」


 ピンポ〜〜ン! 姉よ、それは正解だ。


「そんなことないよ、アランは僕のことがキライなんだよ」


 ピンポンピンポン! 兄よ、それも正解だ。


 ちなみに、この世界での母親はオードリーで父親はジェームスだ。オレを含めたこの家族の名前って、よーく思い出してみると往年のハリウッドスター…イヤイヤ考えたら負けだ、ハハハハ……ハァ……。家名が『カーン』なのか『ディーン』なのかが気になるけど。


 母親オードリーは、オレを抱き上げてゆっくり左右に揺さぶり、フンフンフ〜〜ン♪ と鼻歌を歌いながらオレの背中をトントントンッと叩き始めた。


 兄姉にツンツンされて泣き叫びながらも止めていなかったワタアメの糸まわしのせいか、泣きつかれたのかわからないが、恒例の電池切れタイムがやってきて寝落ちしたので、母親がオレを怪訝けげんそうな目で見ているのには気がつかなかった。


 ーーーーーーーーーー


 その夜ジェームスとオードリーの二人きりの部屋で、オードリーが言った。


「アランのことなんだけど、あの子は上の二人とはどこか違うみたい」


「違うとは?」


「あの子、まだ産まれて半年なのにだんだんと魔力が増えているの。今日抱いたときには身体の中を魔力がまわっていたのよ」


「まだ言葉も喋れないし、魔力の操作なんて……気のせいじゃないか?」


「うーん、そうじゃないと思うけど、あの子はなにか不思議な力を持っているような感じがするの」


「まぁ何ごともなく成長してくれれば、その不思議な感じがなにかはハッキリするんじゃないか? それはそれとして、もうそろそろ身体も回復して……もう大丈夫だろ……」


「あら……、そうね……。久しぶりね、ウフフ……」


 










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