第692話 アメリカ滞在4〜8日目
今日はサンフランシスコから近い、マイナーリーグの施設を見せてもらうことになっている。
マイナーリーグと言っても、メジャーに近い順にAAA(トリプルエー)、AA(ダブルエー)、ハイA(ハイエー)、A(エー)、ルーキーと5つのクラスに分かれているらしい。
つまりメジャーを1軍とすると、6軍まであるということか。
さすが野球の大国。裾野が広い。
今日はAAA級のチームのホーム球場を2箇所案内してもらうことになっている。
まずはサクラメントという街にある球場だ。
サンフランシスコからサクラメントは、約140kmということで、北海道でいうと札幌から旭川の距離に近い。
東京からだと、甲府より少し遠いくらいか。
大阪からだと…。(もういいっちゅうねん。作者より)
サンフランシスコからサクラメントは、ハイウェイを通って行った。
「おおつ」
バローズとトーマスの案内で、球場に近づくと僕と三田村は感嘆の声を上げた。
街中にあるが、球場の周囲には緑が広がっており、いかにも伝統がありそうな雰囲気の外観と見事に調和している。
そして球場内に入るとグラウンドの一面の緑が目に飛び込んてきた。
緑が眩しい。まさにグリーンスタジアムだ。
外野席は芝生席で、観客席は内野に集中している。
球場のキャパシティは着席が10,000席くらいで、芝生席や立席を含めると、15,000人くらいは収容できるらしい。
アメリカのマイナーリーグは基本的に、独立採算制をとっており、チームごとにグッズもあるし、当然ファンもいる。
オラが街のプロ野球チームという感じだろうか。
そして勝敗はもとより、応援している選手の中から、メジャーリーグに上がって、そして活躍するのを見るのも楽しみの一つだろう。
そしてもう一箇所、案内してもらったが、そこは日本にある市営球場に近い雰囲気だった。
観客席は5,000席くらいであり、かなり老朽化もしていた。
ロッカールームも見せてもらったが、高校時代に使っていたロッカーに毛が生えた程度だった。
やはりマイナーリーグは環境が厳しい。
その一面を垣間見た。
明日からはアメリカ大陸横断ドライブだ。
西海岸から東海岸まで、車で移動する。
バローズは所用があり一旦抜け、僕と三田村、トーマス、そしてトーマスの友人のルディが加えて、4日間の行程を予定している。
ルディは元マイナーリーガーで、今はマイナーリーグのコーチをやっている。
金髪で金色の口ひげをたくわえた、ナイスガイだ。
なぜ飛行機ではなく、車で移動するか。
それはマイナーリーグの移動の過酷さを実感した方が良い、というトーマスの発案である。
メジャーリーガーは基本的に、飛行機で移動するが、マイナーリーガーはチームバスでの移動がほとんどであるらしい。
片道300kmくらいを日帰りするのはザラらしく、300kmといえば東京から名古屋くらいの距離がある。
僕も自家用車で走ったことがあるが、片道5時間くらいかかった記憶がある。
例えば朝、8:00に出て、13:00に現地に着いて試合をして、16:00に球場を出発したとしても、家に着くのは23:00過ぎだ。
(もちろん連戦なら、ホテルに泊まるのだろうが…)
過去に述べたように、マイナーリーグはハンバーガーリーグと呼ばれており、移動の途中でハンバーガーを買って、バス内で食べるのもザラらしい。
昔、三田村は毎日ハンバーガーを食べられる環境に憧れている、というアホな事を言っていたが、3食ハンバーガーの生活を毎日すれば、飽きるのは火を見るよりも明らかであろう。
そして僕らは途中で観光地に寄ったりしながらだが、4日間かけて東海岸に到着した。
短い文章で申し訳ないが、それはそれは過酷だった。
車の中ではルディから、マイナーリーグの過酷さについて、話を聞いた。
正直、想像を越えていた。
そして到着したホテルで食事をしている時、トーマスが言った。
「タカハシ、ソレデモキミハ、アメリカニクルカイ?」
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