第691話 アメリカ滞在3日目(野球観戦)

 試合開始前のセレモニー、国歌斉唱等が終わり、いよいよプレイボールがかかった。

 日本なら私設応援団が、スタンドの一部を陣取り、トランペットなどの鳴り物による応援や、応援歌が流れすが、メジャーリーグでは個人個人が応援するスタイルのようだ。


 かと言って、静かかというとそんなこともない。

 良いプレーには拍手や歓声が上がるし、エラーや走塁ミスがあればブーイングされる。

 どっちが良いかは正直わからない。  

 個人的には自分の応援歌が気に入っているので、それが流れないと寂しいかな、とは思う。

 僕の応援歌は静岡オーシャンズの私設応援団から、泉州ブラックス、そして札幌ホワイトベアーズに受け継いで頂いたものである。


 メジャーではピッチクロックというのが、昨シーズンから導入されており、投手の投球間隔が短い。

 この試合は投手戦になり、欠伸をしたり、鼻毛を抜いているうちに4回が終わっていた。


 近くにピーナッツ売りが来たので、試しに一つ注文してみることにした。

 手を上げると、30メートル先からピーナッツが空を飛んできた。

 しかも僕の手にスッポリと収まった。

 凄いコントロールだ。

 少なくても、現役時代の三田村より良い。

 

 そしてお金は続いて投げられたボール型の容器に入れられて返す。

 一つ7ドルとのことで、4人分買った。

 日本円に換算すると…、無粋だからやめよう。


「ほら三田村、食え」

 僕は一袋を三田村に放り投げた。

 三田村はそれをスマホを見ながら、片手で受け取った。

「なあ、隆」

「なんだ、これくらい礼には及ばんよ」

「いや俺さ、このクラッカー・ジャックというのも食べてみたいんだが…」

 そう言って、三田村は僕にスマホ画面を見せた。

 

 どうやらメジャーリーグでは、7回終了時に「僕を野球に連れてって」という歌が歌われ、そこ歌詞にピーナッツと一緒にでてくるらしい。


「それくらい自分で買え」

「チッ、しょうがねぇな」

 三田村は不満そうな顔をしながら、席を立って買いにいった。

 

 「ほらよ」

 戻ってくるなり、それを僕めがけて投げてきた。

 オーバースローで。

 とっさのことだったので、捕り損ね、頭に当ててしまった。

「イテッ」

「ダメだぞ、よそ見してちゃ。これが試合中なら、エラーだぞ」

「試合中にクラッカー・ジャックを投げてくる奴はいねえよ…」


 とりあえず三田村が珍しく奢ってくれたので、食べてみた。

 なかなか美味しい。ポップコーンにキャラメルでコーティングしたようなものだ。

 キャラメルポップコーンをもう少し濃厚にしたような味だ。


 そんなこんなで、スコアレスのまま、7回裏を終えた。

 すると観客がみんな立ち上がった。

 もちろん帰るのではない。

 さっき、少し述べたように、「僕を野球に連れてって」をみんなで歌うのだ。


 立ち上がることによって、ずっと座っていて凝り固まった体をほぐす効果もあるそうだ。

 これをセブン・イニング・ストレッチというらしい。

 100年以上、続く伝統ということだ。

 さすがメジャー。

 歴史もケタ違いだ。


 試合は両チーム継投に入っているが、互いに譲らない。

 スコアレスのまま、何と9回裏を終えた。

 時計を見ると、ここまで2時間7分しか経っていない。

 これもピッチクロックの効果か。

 ピッチャーは最初は大変だっただろうが、慣れたのだろうか。

 日本でも社会人野球では導入されており、日本でもいずれ導入されるかもしれない。


 アメリカで4大プロスポーツと呼ばれているのは、野球、アメフト、バスケットボール、アイスホッケーとのことで、最近はサッカー人気が高まっているそうだ。

 若い人の中には、野球は試合時間が長いという声もあるらしく、その対策としてピッチクロックが導入されたらしい。

 今のところ、日本では試合時間が長いという声はあまり聞かないように思うが、どうだろうか。


 メジャーリーグでは延長戦は、タイブレークというルールを導入している。

 これも試合時間短縮対策の一つであり、ノーアウト二塁の場面で試合が始まる。


 これは良いアイデアだと思う。

 個人的には、延長12回でも引き分けが一番残念であり、延長戦まで入ったら、雌雄を決してほしいと思う。


 この試合は結局、延長10回裏にサンフランシスコがサヨナラホームランで勝利し、対戦成績を1勝2敗とした。

 

 僕らは明日からはマイナーリーグの球場を見せてもらうことになっており、その後、ワールドシリーズを1試合観戦して帰国する予定だ。

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