第690話 アメリカ滞在3日目(試合観戦前)

 ロッカールームの後は、シャワールームとか、クラブハウスだとか、バックスペースを色々と見せてもらった。

 さすがメジャー!!!!!、と感嘆符を幾つ付けても足りない。

 断っておくが、決して札幌ホワイトベアーズの環境が悪いわけではない。

 むしろかなり良いと思う。


 またビジターで巡る各球場や、かって在籍した静岡オーシャンズ、泉州ブラックスの環境も悪くなかった。

 それこそ20〜30年前の環境に比べると、今の選手は恵まれている、とプロ野球界の大先輩方に良く言われる。(山城さんなど)

 でもサンフランシスコのこの球場は、それらの更に上を行く。

 それが正直な感想である。


 そしていよいよグラウンドに行く。

 今はホームチームのバッティング練習中らしい。

 どんな感じかな。

 ワクワクワクワク。


 再び狭い通路を通って、グラウンドに向かう。

 通路は正直、あまりきれいとも言えなく、明かりも何となく薄暗い。


 そして目の前に10段ほどの階段とその横にはスロープがあった。

 その先からは明かりが漏れている。

 いよいよだ。


「ワーッ」

「すげぇー」

 僕と三田村は思わず感嘆の声を上げた。

 緑色に光るグラウンドに、青いフェンスがきれいに調和している。

 グラウンドは天然芝だ。

 そして観客席もかなり大きい。 

 この球場は海に面しているので、極稀にホームランが海に着水することがあるそうだ。


 やっぱりこんな球場で野球をしてみたい。

 一人の野球人として、素直にそう思った。


 しばらくサンフランシスコのバッティング練習を見学させてもらった。

 日本球界に助っ人としてくる、パワーヒッターのような体格の選手が次から次へとでてくる。

 そしてまるでピンポン玉で、バッティング練習をしているかのように、面白いように外野スタンドに飛び込んでいく。


 近年のメジャーでは、フライボール革命といって、ゴロを打つよりフライを打つほうが、ヒットの確率が上がる、という理論が広まっている。

 僕はライナー性の打球(状況によってはゴロ)を打つことを心がけており、僕の今のバッティングはその流れに逆行するかもしれない。

 それでもやってみないと分からないと思う。

 失敗しても僕の人生だし、当面は生活していけるくらいの多少の蓄えもある。

 やってみなはれ精神で、頑張ってみたいという気持ちである。


 それから、また長い廊下を経て、関係者パスを返し、一度外に出た。

 ここからは一般のお客さんとして、野球観戦である。

 電子チケットを表示して、中に入る。

 今回は奮発して、内野席を確保した。

 一席あたり約500ドルとのことである。

 えーと、日本円に換算すると…。

 …。

 ……。

 ………。

 7万円?


 たっけぇー。

 正直、そう思った。

 もちろん内野席の下の方で、見やすい席ではある。

 それにしても7万円か…。

 ちょっとびっくりだ。


 アメリカは日本以上に、荷物の持ち込みに厳しく、透明の袋に入れなければ、持ち込めない。

 日本のようにリュックサックに、手榴弾を入れて持ち込むことは絶対にできない。

(日本でもできません。誤解を招くことは言わないでください。作者より)


 僕と三田村は、売店でビールとホットドッグを買うことにした。

 ビール1杯18ドル、ホットドッグは一つ10ドルであり、4人分で112ドル。

 えーと、日本円に換算して、1ドル150円で計算すると…。

 僕はスマホの電卓で計算した。

 16,800円。

 1人4,200円…。

 マジか…。

 僕の子供の頃なら、4人分のホットドッグとビール(もちろんその頃は飲んでいないけど)を買えたのでないだろうか…。


 そして試合開始前には、ピーナッツ売りが来た。

 これも大リーグ名物らしい。

 ピーナッツといっても、日本で売っている袋詰めのバターピーナッツではなく、いわゆる落花生だ。

 これを割って食べる。


 しかもこっちの人は、割った殻をそのまま、席の下に捨てる。

 だから試合が終わると、そこら中ゴミで凄いことになるらしい。

 ちなみにベンチも噛みタバコやガム、ヒマワリの種等で凄いことになるらしい。

 これらは文化の違いだろう。

 

 さてまもなく試合が始まりそうだ。

 ドキドキしてきた。

 これが楽しみのせいか、久しぶりに飲んだビールのせいかはわからないけど。


 

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