第666話 オーメン?

 第666話である。666は悪魔の数字らしい。

 だが僕はホラー映画は見ないので、良く分からない。

 パチンコで666で当たっても、確変でないことの方が多いので、そういう意味ではあまり良くない数字かもしれない。

 これ以上話がふくらまないため、本編に戻る。


 今日からホームでの川崎ライツ戦である。

 川崎ライツは現在、最下位であるが、札幌ホワイトベアーズが最近調子を落としているため、1.0ゲーム差にまで縮まってきた。

 ここは何としても勝ち越したい。


 もっとも僕自身は、岡山ハイパーズの3試合目でヒット2本出たので、気分的には悪くない。

 打順も3番に戻り、今日も塁に出た我がしもべ達をホームに返すという、重要な役割を担う。

 

 初回、湯川選手がエラーで出塁し、谷口の送りバントでいきなりワンアウト二塁で打席が巡ってきた。

 できればワンアウト三塁が良かったが、贅沢は言っていられない。

 ここでヒットを打てば、先制点、そしてヒーローインタビューのチャンスだ。


 川崎ライツの先発は深沢投手。

 ストレートは最速140km/h台だが、スライダー、シンカーなど多彩な変化球で打たせて取るのが持ち味の右腕だ。


 フルカウントとなり、6球目、二遊間に上手く弾き返した。

 球界の牛若丸こと、与田選手が上手く回り込んだが、一塁はセーフ。

 さずが、僕。足が速い。

 記録はもちろん内野安打。

 ワンアウト一、三塁のチャンスメークした。


 そして三塁ランナーが、僕ほどではないが、足が速い湯川選手なので、いろいろな作戦ができる。

 もしセカンドスチールしても、相手捕手は投げてくることは難しいだろう。 

 もし投げたら、恐らくディレイドスチールで、湯川選手がホームを陥れるだろう。


 リーリーリー、ほれ、リーリーリー。

 深沢投手は首を曲げて、こっちの方をじっと見ている。

 牽制球が来た。

 はい、はい。戻りますよ。


 リーリーリー、はい、リーリーリー。

 また牽制球がきた。

 ほいほい、戻りますよ。

 

 そしてまたリードをする。 

 リーリーリー、それ、リーリーリー。

 また牽制球。しつこいね。

 そろそろバッターと勝負したら?

 

 リーリーリー、やれ、リーリーリー。

 じっとこっちを見ている。

 良いのかな、バッターに集中しなくて。

 そして深沢投手はようやく第一球を投げた。


 カキーン。

 ほらね、言わんこっちゃない。

 4番のティラー・デビッドソンの打球は大きな弧を描いて、レフトスタンドに飛び込んだ。

 先制のスリーランホームラン。


 打ったのはティラー・デビッドソンだが、それをアシストしたのは僕だと思う。

 ピッチャーの集中力を削ぐという、重要な役割を果たした。

 サッカーなら、アシストというのがあるので、野球でも取り入れたらどうだろうか。


 試合は進み、3回裏、ツーアウトランナー無しで打順が回ってきた。

 この回は1番からの好打順だったが、我がしもべ達は連続三振に倒れた。

 仕方がない。

 お手本を見せてやろう。

 目をかっぽじって、見ているがよい。


 ということで8球粘った上で、フォアボールを選んだ。

 見たか、このチームへの貢献度。

 そして僕を塁に出すと、うるさい。


 リーリーリー、おら、リーリーリー。

 深沢はこっちをじっと見ているが、牽制球は投げてこない。

 さっき集中力を欠いて、ティラー・デビッドソンにホームランを打たれたこと、ツーアウトなのでバッターさえ打ち取れば良いということが頭にあるのだろう。


 初球。

 僕はスタートを切った。

 送球が来たが、二塁ベース手前でワンバウンドして余裕でセーフ。

 これでツーアウト二塁と得点のチャンスだ。


 そしてティラー・デビッドソンはフルカウントまで粘り、6球目でフォアボールを選んだ。

 これでツーアウト一二塁。


 6番バッターは一発のあるブランドンだ。

 そしてフルカウントからの6球目。

 高めのストレートを振り抜いた、鋭いライナー性の打球はライトスタンドへ飛び込んだ。


 これで6対0。 

 今日は6という数字に縁のある日だな。

 イニングチェンジになり、守備位置につきながら、スコアボードを見て、そう思った。


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