第660話 オールスター休み
いよいよ楽しみにしていたオールスター休みになった。
ファン投票では僕は外野手部門の3位に入っていたが、最後は抜かされて4位となった。
そして監督推薦、選手間のプラスワン投票でも選ばれなかった。
もちろんオールスターに選ばれるのは大変名誉なことであるが、初めての外野挑戦ということ、そして年齢もアラサーになったということもあり、今年は特に疲れが溜まっている。
よって選ばれたらもちろん嬉しいが、選ばれなくてもゆっくりリフレッシュできるので、どっちに転んでも良いと思っていた。
ということでオールスター休みは札幌近郊の温泉でゆっくりすることにした。
本当は沖縄に行きたかったが、生後4ヶ月の結茉を連れて行くのも大変なので、今年は近場で過ごすことにした。
結衣もわがまま盛りの翔斗と、生まれて間もない結茉の世話で疲れているだろうし、少しリフレッシュさせてあげたい。
温泉地には、ぽるしぇ号を駆って、颯爽と乗りつけた。
もちろんホテルのバスで行く手もあるが、幼い結茉がグズって、他の人の迷惑をかけることも予想されるので、自家用車の方が気楽だ。時間の融通もきくし。
もっとも温泉地は札幌市内から1時間程度で着くので、結茉は道中はスヤスヤと寝ていた。
車の中で流れる音楽は、仮〇ライダーと〇〇レンジャーのメドレーだ。
言うまでもないが、翔斗のリクエストだ。
僕は球場への行き帰りは、テンションアップのため好きなロックバンドの曲を流しており、音質にもこだわり、それなりにお金をかけている。
でも重低音が響くヒーローソングも、以外と悪くない。
試合前のテンションを上げるには良いかもしれない。
「ねえ、パパ絵本読んで」
ホテルにつき、仲居さんが淹れてくれたお茶とお茶菓子でくつろいでいると、翔斗が絵本を持ってきた。
翔斗は例の絵本(631話参照)が気に入っているようで、わざわざホテルにも持ってきた。
この本の何が幼児の琴線に触れたのだろうか…。
何度も読まされる方の身にもなってほしい。
もはや有害図書と言えるのでは無いだろうか。
オールスターはホテルで部屋食をしながら、ゆっくりテレビで見た。
すると翔斗が、「あれ?、パパはいつ出るの?」と聞いてきた。
「パパは今年はオールスターでないんだよ」
「えー、何ででないの?、翔君、パパが出るの見たい」
「残念ながら、今年はファン投票が4位だったからだよ。監督推薦でも選ばれなかったし…。
でもだからこそ、こうして一緒にいられるんだよ」
「ふーん、えばられなかったんだ。
でも翔君、パパが出るの見たかったな」
「翔斗はパパと一緒にいられるのと、パパをテレビで見るのどっちが良いかい?
ふと聞いてみた。
「うーん、一緒にいるのも嬉しいけど、パパをテレビで見るのも嬉しい」
「そうか、じゃあ来年はえばられるように頑張るよ」
翔斗につられて、変な言葉遣いをしてしまった。
ということで二泊三日を温泉宿で過ごし、リフレッシュした。
オールスター休み明けは、アウェーでの6連戦から始まる。
まずは熊本、それから岡山である。
札幌から熊本は羽田空港乗り継ぎとなり、結構疲れるので前日入りした。
すると空港で谷口に会った。
同じ便だったらしい。
「よおオールスター、優秀選手おめでとう」
「おう、ありがとよ。そういうお前はどうしてたんだ」
「ああ、温泉宿でリフレッシュしてた」
谷口はオールスターで、サヨナラ犠牲フライを放ち、優秀選手賞を獲得していた。
「そうか、リフレッシュできたか?」
「ああ、ゆっくりと休ませてもらったよ」
「じゃあ、フル充電で今日からは大活躍してもらわないとな」
「おう、そのために湯川とお前でチャンスを作ってくれよな」
「そう言えば、お前、この前のヒーローインタビューで俺等のことをしもべって、言わなかったか?」
「え、いや、俺がそんな事を言うわけないだろう」
「そうか、俺の聞き間違いか」
「そ、そうだよ。お前も疲れているんじゃないのか」
「まえ、いいや。今日も勝とう」
よし乗り切った。
ということで、11年目の後半戦がいよいよ始まる。
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