第617話 フロリダ自主トレ後半記
自主トレ後半は、僕は皆と離れてトーマス・ローリーの手配してくれた地元チームの練習試合に参加する。
独立リーグや、マイナーリーグの選手が参加する、期間限定のリーグであり、メジャーを目指す、荒削りな若者が多く所属している。
誰もが自分の力をアピールすることに必死であり、投手は力一杯投げるし、打者は振り回す。
ランナーが出ても、送りバントはおろか、進塁打を打つなんて発想はない。
だから初球から積極的に打ってくるし、鋭い打球がポンポン飛んでくる。
僕はレフトを主に守っているが、左打者が打った打球はドライブしてくるので、それを見越して落下点に入らないといけない。
対して右打者の打球は勢いがあり、予想以上に伸びてくる場合がある。
またパワーヒッターか、アベレージヒッターか、ランナーがいるかいないかで投球のバリエーションも異なるので、それぞれのシチュエーションにより、守備位置も変える必要があり、奥が深い。
野球はただ投げて打って、走っているように見えるが、それなりに頭を使うスポーツなのである。
(今更それがわかったのですか? 作者より)
ちなみに今回も山城コーチは来たが、彼は外野守備は専門外だし、僕は試合に多く出て忙しかったので、あまり構ってあげられなかった。
三田村の話によると、今年もフロリダを満喫して上機嫌で帰っていったそうだ。
僕らはビジネスクラスのチケットを用意していたが、帰りは溜めたマイレージを使用して、ファーストクラスにアップグレードしたらしい。
僕ですら、国際線のファーストクラスなんて乗ったことないのに…。
そうこうしているうちに、1月も下旬となり、フロリダでの自主トレも最終日になった。
帰国すると、1週間後にはいよいよキャンプインだ。
今シーズンオフは、秋季キャンプ参加、オーストラリアリーグ参加、そしてフロリダでの自主トレと、かなり身体を動かした。
でも適時、休みながらだったので、あまり疲れは感じていない。
むしろこれだけやったんだから、という自信を感じる。
今オフの僕は、休養よりも外野手として場数を踏むことで、自分に自信をつける事を主眼に置いていた。
そういう意味では、怪我なくハードスケジュールをやり切ったことは良かったと思う。
何しろ大リーグは、日本球界よりもハードスケジュールと聞く。
試合数も多いし、移動行程も長い。
だから動くときは動く、休む時は休むとメリハリをつけていきたい。
帰路もビジネスクラスを利用した。
シートがフルフラットになるのが長旅にはありがたいし、食事もちょっとしたレストラン並みである。
作者へのお土産として、持ち帰り可能のスリッパとスウェットをあげようかとも思ったが、荷物になるのでやめた。
帰国してからは、札幌の自宅で少し休んだ。
(ほとんど翔斗の相手をさせられたが、気分転換にはなった。
何しろ相手をしてあげないと、すぐに涙目になるので…)
2人目の出産予定日は、3月9日であり、僕と入れ違いに結衣の実家のお母さんが来てくれることになっている。
何しろ翔斗は体力が有り余っており、ヤンチャし放題である。
遊んだおもちゃや、読んだ本は投げっぱなしであり、少し目を離すと、部屋中に色々なものが散乱している。
今春から幼稚園に入るし、妹も産まれるので少しはお兄さんになるだろうか。
奇しくも3学年差は、僕と妹との関係と同じであり、僕のように妹思いの素晴らしいお兄ちゃんになってほしいと、切に願う。
1月下旬の札幌はまだ雪景色であるが、少しずつ日が長くなり、晴れの日も多くなる。
2月上旬には雪まつりというものがあるらしいが、現役中はキャンプなので行くことができない。
どうやら大きな雪像が何基もできるらしい。
引退したら、行ってみたい。
1月末、新千歳空港から飛行機に乗り込んだ時は、辺りは雪景色で少し吹雪いていた。
だが沖縄につくと、晴れ渡っており、雪は欠片もない。
同じ日本でも随分と違うものだ。
さあ、球春到来。
今シーズンも頑張っていきましょう。
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