女神と勇者と。

@yamamoto2740

第1話少年と兄

昔々、どこかの世界。

魔法や剣の世界というやつだろう。

その世界のとある小さな国の端にあった、小さな村。

特に活気があるわけでもなく、目立ったものなどはない。

ただただ平和な村があった。

 

……ガサッ…ガサガサ……

ある少年が…茂みを漁っている…

ガサガサ………


「………あっ…」

「ったぁ!………よし!」


「お〜い。コルト〜。どこだ〜〜?」 


「あ、兄さん!お〜い!ここにも生えてたよ〜!キノコ!」


……キノコを採りにきていたようだ…

少年の肩にはキノコが詰め込まれた小さな籠を背負っている


「はぁ全く…そんなに張り切らなくたっていいんだぜ…コルト。」

「俺だって冒険者になったのは嬉しいが、まだまだ未熟だってわかってんのさ…」

「だから、お祝いはもっと立派になってからでも………」


「兄さ〜ん!こっちにも〜!」


「って聞いちゃいねぇ…」


「へへへ〜。兄さん頑張ってたからさ、一生懸命頑張って剣振って走ってたんだ!応援しなくちゃと思ってさ!」

「俺…体弱いから冒険者や畑仕事なんかもできないけど、せめてこういう事で、応援出来たらなって思ったんだ!」

「ほら、お母さんとだったら俺!シチュー作れるからさ!」


少年は元気いっぱいにはにかんだ。

冒険者という職業についた兄を応援するために、キノコを採ってシチューを作るらしい。

それを見た兄は照れくさそうに笑みを浮かべた


「はぁ…そう言うなら祝られてやるよ。」

赤くなったほっぺをかきながら、兄は言った。

「ただし……。」


兄は少年の肩にせおられていたキノコいっぱいの小さな籠を持ち上げると中を見始めた…


「ん〜とな。まずこれは毒キノコ…これも毒キノコ…」

「これは食えるが…どんだけ採ってんだ毒キノコ…」


「………あれぇ…おかしいな…図鑑には食べれるって…」


「いやでも結構毒だぞ…これとか真っ赤じゃん」

「あっ!これはポーションの材料にもなるやつじゃないかな?」

「こんなとこにも生えてるんだなぁ〜!コヨミダケ…だったかな?まぁいいか、後で鑑定してもらおう!」


「ちなみに……なんの薬…?」


「麻痺薬だ!」


「薄々気付いてたよ!毒だってさ!」


少年は毒キノコを採るのが上手いらしい…


その夜、少年の母が少年達が採ってきたキノコを使ったシチューを作ってくれたようだ。

兄が大きな夢を語り、少年が目を輝かせ、父と母は笑い合っている。

小さな村の小さな家。

裕福ではないものの、家族なりの幸せがそこにあった。


……余談だが、あの後、村の鑑定士に取ったキヨミダケらしいものを見てもらったらしい…

……全然コヨミダケじゃなかったものの、食べられるやつらしかったので、食べてみることにした…。

炭火焼で。


「どうだ………美味い…か?」


「ムグムグ……独特な味だね………」


「素直にまずいと言ってくれ…(;´∀`)」


という会話があったらしい…


それから数日が過ぎた。


「コルト〜!」


「は〜い!」


トトトトトトト…

2階から駆け下りる音が聞こえ少年が家の居間へと降りてくる。

そこには兄と父母がデーブルを囲んで話し込んでいた。


「は〜いなんだい兄さん〜?」


「おはようコルト…いや…実は…」


兄は躊躇ったがまた話始める。


「実はな……兄ちゃん来週には村を出ることになったんだ。国にある、兄ちゃんの仕事場のギルドの…人手が足りないから、俺みたいなのでも早く来てくれと急かされてね……」

「あと1月はゆっくりできると思っていたんだが…」


「あ、そう…なんだ……そっか…」


「あぁ。………寂しい…よな…」


少年は黙り込んだ。 

兄を止めたくはなかった。

むしろ思いっきり背中をおしてやりたかった。

今までもこれからも。

ただ、冒険者というのは、時折、命を落とすこともある。

それでも…


「大丈夫だよ!寂しくない!」


「……本当かい?兄ちゃんいないと…」


「兄ちゃん!」


「……。」


力強く、ただ弱々しく…


「行ってらっしゃい!」


少年は兄の背中を押した。


こうして、翌日。

少年の兄は冒険者として国へと赴いた。

少年は国へ向かう馬車に乗り、手を振る兄へ手を振替した。

未熟で弱いこの自分が、精一杯の応援を送ることができた筈だと、少年は思う。



細く、か弱きこの手が、世界を救うのは…もう少し先の話だ…

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

女神と勇者と。 @yamamoto2740

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る