郷愁<ノスタルジア>

小木瓜まり

ノスタルジア

真夜中の水琴窟なり古厨ふるくりや


朝もやに手折りし宵待ち草の色

水切りの音つたなきや兄妹あにいもうと

軒下の鈴を転がす青い風

鏡台の引き出しのすみ万華鏡

たちあおい額に赤き鶏冠とさかかな

雨上がりソーダの泡や蝉しぐれ

まわり道百舌鳥の早贄もずのはやにえみちしるべ


路地裏の落書きの跡かくれんぼ

道草も雨降り止まず傘の花

遠雷に駆け出す下駄や石畳いしだたみ

兵児帯の尻尾が躍る宵宮よみやかな

七夕や提灯片手のわらべ歌

金継ぎきんつぎの継ぎ目愛しき彼岸花

夕凪や素足の裏に残る熱

月凍る黒曜石の夜空かな


雪しずれ音に振り向く待ち合わせ

夏空やつま先立ちで恋をした

消え残る線香花火と恋心


亡き母の面影うつす丸鏡




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郷愁<ノスタルジア> 小木瓜まり @K_comarie

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