第12話:蜂起!

 伊400艦内司令塔にて日下がつぶやく。

「……敵の首、落ちたか」


 雪風艦内、富嶽が答える。

「戦いはまだ終わってません。奴の後ろには、もっと冷たい化物どもがいる」


「分かってる……だが――あのトルーマンに、死をもって敗北を刻ませた。これ以上の開戦の合図はない。」


 日本、奪還の狼煙は上がった。


 太平洋に甦る、帝国の魂 〜帰ってきた大義〜

 ラバウル諸島某所・密林基地跡

 今村中将は、朽ちかけた無線機に耳を当てていた。

 毎日のように聞こえていたのは、ノイズと敵側の宣伝放送ばかり。


 その日も同じだろうと思っていた。


 だが――違った。


「……繰り返す。陛下は無事、解放された。雪風と伊400、敵艦隊を壊滅。日本国は再び立ち上がる。我らの誇りは、未だ消えず……」


 沈黙。誰もが耳を疑った。


「……い、今の……?」

 今村中将が呻くように言う。


 樋口伍長が次の句を話す。

「まさか……まさか、まだ続いていたのか!?  我々の戦いが!!」


 無線が再び鳴る。


「各地の日本軍へ告ぐ! 陛下はご存命。帝国再興の刻が来た。武装を保持し、各地域の支配者を排除せよ。援軍は向かう」


「うおおおおおおおおおおおおおお!!!」


 密林が震えた。


 この5年、密林で息を潜めていた兵士たちが、一斉に叫びを上げる。


「我らの戦いは終わっていなかった!!」

「天皇陛下万歳!!」

「日本は生きていたぞぉぉぉぉ!!」


 マーシャル諸島・潜伏部隊

「見たか? 見たんだよ……本物の陛下だった……!」

「あなた方は……あれが帰還の合図だと?」


 老兵、うなずく。

「我々が信じた日本が……やっと、帰ってきたんだ……」


 彼は、土に埋めていた日本刀を取り出す。

 周囲の兵たちも、ボロボロの軍帽と銃を再び手に取る。


 硫黄島・地下壕跡

 地下壕で今も生きていた一団。

 彼らは無線の声を録音していた。


「……確かに“陛下”の声だ! 間違いない」


 兵士たちは全員、姿勢を正して立ち上がる。


「全軍、皇軍戦闘態勢を維持。敵拠点への奇襲準備を開始せよ。これは――“帰還命令”だ。」


世界各地・静かなる蜂起

 台湾東部の山中にて、隠れ兵たちが連合軍基地を夜襲

 フィリピンの孤島にて、地元と共に防衛線を築く旧日本兵

 太平洋各地の無人島にて、残存している艦船

 インドネシアのジャングルにて、現地ゲリラと合流する隠れ部隊

 オーストラリア北岸の都市郊外にて商人に偽装した兵団が蜂起


伊400艦内・司令塔】

「艦長、続々と報告が入っております。太平洋全域の旧帝国兵、各地で再武装・蜂起中。地元民との連携も確認され、ゲリラ戦開始済みです!」


 富下先任将校が笑みを浮かべて報告する。


「……間違いなかった。彼らは“捨てられた”んじゃない。ずっと待っていたのだ」

「これが……“本物の再起”ですね、艦長」


 日下、静かにうなずく。

「遅くなって、すまなかった――だが、これからは俺たちが共に戦う」


 全世界向けプロパガンダ放送(伊400による)

「我々は帰ってきた! 敗者ではなく、生存者として。そして新たな時代を作る者として。日本は蘇る! 魂とともに」

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