第9話:世界への宣言


 そして、夜明けはすぐそこにあった――

 深海要塞からの帰還後24時間後。

 伊400艦内に設置された仮設放送スタジオに、ついにその姿が現れる。


 白い軍装。

 傷一つない凛とした佇まい。

 光が差し込むような静謐な存在感。


 第124代天皇陛下が実在の姿として、全世界にホログラム映像として映し出される。


【帝国放送/臨時特別声明】


「……我は、日本国の象徴にして、この国に生きるすべての者の希望なり。長きにわたる監禁と封印の中、朕は忘れなかった。この国の命が、未だ深く脈打っていることを――! 今ここに、真の日本が生きていることを、世界に告げる! そなたらの掌で、武であり魂であり、静かなる誇りである者たちが、朕を、そして皇族たちを救い出した。これは、ひとつの勝利ではない! これは、“再誕”である。我は命じる!全世界に散った同胞及び日本国内にて苦痛の沈黙を受けている者達……今こそ、再び集え! 我らの祖国、“大和”を再びこの地に掲げよ! 日本は……今、ここに在る」


             世界各国の反応(ダイジェスト)


 連合軍統括国家“アメリカ合衆国”

「映像は偽物。ディープフェイク技術の可能性が高い」

 直後、米国内で抗議デモが勃発。退役軍人らが「太平洋戦後処理は未解決だ」と声明。


 ソビエト連邦モスクワクレムリン宮殿

「“天皇”が再臨?  馬鹿げた神話遊戯だ」

 最高指導者『スターリン』が怒髪天で怒り狂う。

 だが直後に、旧満州エリア及びシベリア収容所で日本軍兵の離反・大規模蜂起が勃発。


 東南アジア共同圏

「我らは日本の魂を見た。支配者の時代は終わる」

 各地の港湾労働者がストライキ、「日本に続け!」と独自旗を掲げる。


 アフリカ・南米の自由領域)

「かつて奪われた国が、立ち上がる……。これは我らの希望でもある」


 日本国内(分断統治圏)の反応

「信じられない……あの方が、まだ……ご存命で」

「伊400と雪風……伝説の艦が動いた? 本当に?」

「涙が出た。私は日本人だったのだと、思い出した」


 一夜にして、全国で反政府運動が10倍に拡大。

 多数の地下組織・武装勢力が「天照機関」に合流しはじめる。


 国際多極支配会議(戦略資本連合)

「皇族全員の“実在証拠”が流出。歴史認識が覆る」

 各国政権が非常事態宣言、“日本鎮圧計画”が緊急始動。


 だが、遅すぎた。

 伊400は深海を縦横無尽に駆け、雪風は“嵐を切り裂く者”として進撃を始めていた。

 かつて沈んだ帝国の炎が、いま再び、世界を照らし始める。

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