5
「紫! もっと応援しろーっ!!」
「赤ああ!! 白抜かせええっっ!!」
グラウンドに、声援が響く。
体育祭、最後から4番目の競技の色別対抗リレー。
現在の順位は、6位が黄、5位が緑、4位が赤、3位が白、2位が青、そして、1位が紫。
アンカーのおれは、白線の上に立つ。
大和から始まったバトン、おれが最後まで繋げるんだ。
「朝陽先輩っ!」
紫色のバトンを持った2年の後輩が、おれの名前を呼ぶ。
青のビブスが、もうそこまで来ていた。
正直怖い……だけど。
期待に応えたい。みんなで一位とれたねって、笑いあいたい。
おれは、ぐっと力強くバトンを受け取った。
そして、助走から全力で走りだす。
紫組全員の想いを背負って走る半周は、重くて爽快だった。
ゴールテープを切ったとき、グラウンドが一気に歓声であふれる。
額に汗を流しながら、視界には紫組の旗が入った。
―――ねえ。……誰も、おれのことなんて知らなくていいんだよ。
みんなみんな、おれの表面だけを見ていてほしい。
明るくて、期待に応える、このおれだけを。
……“奥”なんてみんな、知らなければいいんだよ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます