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『あさひくん!』


 そう笑う姿。初めて出会ったときだった。


『あーさひ!』


 鎖骨まで伸びる短い髪が風になびく。背中には紫色のランドセル。



『見てた朝陽っ? 7.2秒!』


 首筋に光る汗。眩しい笑顔。



 好きだった。心那のことが。

 かわいいとか、きれいとか、そういうの全部通り越したような感情。


 だけどおれには、心那の隣にいる資格はない。分かってるんだ、こんなおれじゃだめなことは。




  8月4日。サッカーの県大会決勝試合があった。


 結果は、銀賞。

 正直、試合中のことはあまり思い出したくない。


 心那が行きたいって言ってたけど、断って正解だった。あんな姿、見せられない。

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