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あっという間に今週が過ぎ、今日は西多小と王鈴中、等花高校は終業式だった。あのあと担任から修学旅行の坂上菜々の件について特に何も言われることはなく、どうなったのかは知らないが、坂上菜々の様子からしても悪い方向には進んではないと思う。とりあえずは安心だ。
「今日は、みんなにお知らせがあります」
「えー、なになにっ?」
「俺も気になる!」
夕食時、全員が食べ終わったタイミングで母さんがそんなことを言い出した。
朝陽と湊翔が騒ぐ中、母さんが一呼吸おいて口を開く。
「———実はお母さん、赤ちゃんができちゃいました~」
……は?
「えっ、まじで!?」
「嘘でしょっ!?」
純粋な瞳で母さんを見る湊翔に対し、ちらっと父さんのほうを盗み見した朝陽。
おいお前、父さんをそんな目で見るなよ。
というか赤子ができたって、本当だったら、オレと13歳差になるってことか。
「男の子と女の子どっち!?」
「まだ分からないなあ。多分8月くらいには分かると思うけど」
「湊翔お前興奮しすぎ」
ついに立ち上がり始めた湊翔を座らせる。
「だって、オレと日向くんなんてほぼ同い年みたいだし日向くん弟感ないから、初めての感覚じゃん!」
「でも湊翔、もしかしたら女の子かもしれないよ?」
「それでもいいよ朝陽くん!楽しみなことには変わりないし!」
「ちょ、ちょっと二人とも!今はそういう話じゃなくて」
母さんが慌てて朝陽と湊翔を止めた。
リビングがしん……と静まり返る。
「いや、たしかにうれしいことだけど。でも、それ以上に……家族が増えるってことは、準備もたくさん必要で。だから、もっとみんなで協力していかないといけないってことなんだよ」
今まで一言もしゃべっていない太陽が俯いた。
「……だったら、母さんの言う通りみんなで頑張ろうよ!俺もできることならするからさ!」
湊翔が張り詰めた空気を破る。
「おれも湊翔と協力する!父さんも日向も、一緒に頑張ろ!」
「ああ、そうだな」
「もちろん」
朝陽の言葉にオレと父さんが続く。
そして母さんは少し不安そうにしながらも、ありがとうと笑った。
……どうしてあのとき、朝陽は太陽の名前を呼ばなかったんだろう。太陽は、なぜうつむいたんだろうか。
その理由がオレには、分からなかった。
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