3

俺と朝陽くんの通う王鈴おうりん中学校は、家から徒歩15分とわりと近くにある。

しかし門が閉まるのは8時なので、最低でも7時40分までに出ないとまずい。

ちなみに太陽くんは等花とうか高校、日向くんは西多せいた小学校に通っている。


結局同じくらいの時間になって、朝陽くんと一緒に登校することになり、家の前の道路まで出る。



「あ、心那ここな!」



朝陽くんが叫んだ先には、隣の家の玄関からちょうど出てきた幼なじみの七瀬三姉妹。

高校三年生の長女・七瀬こころちゃん。

中学三年生の次女・七瀬心那ちゃん。


そして俺と同じ中一で三女の……。



「みはるちゃん、おはよう!」



俺は彼女に近づき、すっと顔を覗き込む。



「お、おはよう……」



ぎこちなさそうに笑うみはるちゃんだけど、かわいいからいい!!

みはるちゃんの表情はバリエーション豊富だけど、どれも素晴らしくかわいい。


肩につくくらいの長さの黒髪をハーフアップにしばっている髪型がデフォルトなんだけど、二か月くらい前にあった中学の入学式のときにしていたポニーテールもかわいかった。



「ちょっと湊翔~、朝からぐいぐい行き過ぎ」



心那ちゃんが俺からみはるちゃんをぐいっと引き離す。

心那ちゃんはみはるちゃんのお姉さん。はつらつとしていていつも元気。そして、朝陽くんの同級生でもある。



「え~心那ちゃんのいじわるだ~」

「うるさいっ」



心那ちゃんがそう言うけど、当の本人であるみはるちゃんはぽかんとした顔をしている。

うん、その顔もかわいい!よし、みはるちゃんに免じて許してやる!



「ふふ、今日もいい天気だね。暖かくて気持ちいい~」



みはるちゃんと心那ちゃん、二人の横で空を見上げながらこころちゃんが微笑む。

こころちゃんは心那ちゃんとみはるちゃんのお姉さんで、太陽くんと同じ高校三年生。優しくて穏やかな雰囲気のお姉さんだ。


上を見ていたこころちゃんだったが、視線を元に戻して口を開く。



「あれ、太陽くんは?」



こころちゃんは首を傾げて、頬にそっと手を添える。



「ああ、太陽くんなら先に行ったよ。たしか……向こう側の駅のほうに」



朝陽くんが俺の後ろからそう答える。

そして朝陽くんが向こう側といって指をさしたのは、こころちゃんが利用している駅のあるほうと真反対の方向。



「それが、どうかしたの?」


俺がこころちゃんにそう尋ねてみると、困ったように眉を下げた。



「前にね、太陽くん、わたしが乗る電車の駅から一個前の駅に行こうとしてたからこっちのほうが近いよっていったの。そしたら、近いうちに新しく定期発行するからそのとき変えてみるねって言ったんだけど。まだ、買ってないのかな」



こころちゃんと太陽くんは別の高校に通っているけど、学校同士はわりと近くて、電車の乗る方向も同じだ。

話が本当なら、太陽くんはこころちゃんより一駅多く電車に乗っていることとなる。



「まあ、友達とかと一緒にいってるとかなんじゃないのかな?」



朝陽くんがこころちゃんのほうを見ながら聞く。



「う〜ん。でもなんか、違う気がするんだよね……」

「お姉ちゃん、もっと気楽にいきなよ。ほら、朝陽みたいにさ」



みはるちゃんの身体から手を離しながら、納得のいってなさそうなこころちゃんに向かって言う。



「ねえ、学校遅れるんじゃ……」



静かにみはるちゃんが呟いて、俺たちは早足に学校へ急いだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る