視点は死転?

卯月二一

雨上がりの公園にて

 さっきまで激しく降っていた雨が嘘のようです。


 初夏の気持ちの良い太陽の光が街の大きな公園に降り注ぐ。どす黒い雨雲はいまはどこにもなく真っ青な空が広がっています。冷え切っていた私の身体も心も多少はマシになってきたでしょうか。


 家族連れやら様々な人が公園にもどってきました。小さな男の子が若いお母さんを見上げて何かいっしょうけんめい話しかけています。


 あっちには女子高生がふたり、楽しそうです。スマホのカメラを向けられた方の子が恥ずかしそうにしながらも、踊り始めました。ああ、最近流行ってるダンスですね。私も好きですよ。主にショート動画で鑑賞することがなんですけど。かわいいなぁ。いや、いやらしい目で見てるわけじゃありませんよ。ダンスです、ダンスを見ているんです。女の子が主人公の小説って書こうとしたこともあるんですけど、あれって難しいですね。若い女の子になりきるのって男の私にはハードルが高かった……。いや、一人称視点で書こうとしたから失敗したのでしょうか。三人称、うむ、三人称一元視点とかなら複数の男女で……。


 ああ、そうでした。普段部屋に引きこもって執筆しているのですけど、たまには外の空気を吸うことでいいアイデアが浮かばないかとこの公園に来たのでした。そこで次の新作の人称視点について考えてたんでしたっけ。おそらくそれが原因です。それは……。


 あっ、さっきの女の子たちがこっちに来ます。ど、どうしよう。いやいや、どうすることもないし。何かしたら通報されて人生終わってしまいます。ああ、人生なんて終わってたか……。


 うほっ! こ、これは!?


 や、柔らかいのです、とっても。ああ、ああっ!


 これは痴漢などでは決してありません。あちらから私に押し付けてきたのですよ。


 おしりを。それもおふたつです。


 ああ、もう行ってしまわれるのですか……、残念。


 ええ、そうなんです。


 私、ベンチになってしまったのです。転生?


 ベンチ視点で小説書いたらどうかなって。その結果がこれです、いやいや開き直ってみればこれも悪くないかもですね。イヒヒっ。


 ん? えっ!? ちょっとあなたたち誰ですか? 


「さあ、こいつで今日の仕事は最後だ。やっぱ結構傷んでんな、木製はだめか」


「そうですね。明らかに安全基準外っす。誰かが怪我をする前に撤去っすね先輩」


 止めなさい、痛い、痛いです。乱暴に扱わないで!


「これって燃えるゴミっすか?」


「ああ、そうだな」


 えっ、ええーーっ!



 一

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