美しいかぐや姫と鶴の転校生

「ひっめぇ~!」

 私、中川なかがわももは、親友の竹田姫芽たけだひめを見つけ、思いっきり廊下を走り出す。

 と、まあ気にしていないが、『ろうかは走らず右側通行』とかいう生徒会ポスターが見える。まあいいや。


「もも、どした?」

 ゆっくり、そして優しく聞いてくれる姫カットの美少女。恥ずかしながら私が尊敬している人の1人なのだ。

「体育の時にさ、また男子に「桃太郎のくせに足遅すぎだろっ!そんなんじゃ鬼退治なんてできねーぞ!」って。ホント、いい加減にしてよね。」


 私の大っ嫌いなあだ名、「桃太郎」。リレーの時間、50m走が12秒の私は、やっぱりチームをドベに導いた。トホホ。

「その後、ころもくんに「それじゃ、ストーリー崩壊するね。主人公の手でさ。」と言われたのだった。」

「何で知ってんのぉ~!」

 絶賛廊下で絶叫中の私。姫は苦笑い。


 ちなみに衣くん、天野衣あまのころもという美しい名前で外見も美しい。

 そればかりか心まで美しい、モテモテ男子なのだ。もちろん、好きなんかじゃない。多分。


 と強調したのには意味がある。モテモテ男子の為、クラスの、いや学年の8割くらいは好きでいるはずだ。多分。


「聞こえてたよ。窓、あいてたから。」

「ガーン。」

「ほら、そろそろ授業始まるから。もどりな?」

「はぁい、、、」

 そう言って、私は教室に戻る。


 遅刻してきた がいることを、全く知らずに。


 ***


「「「なんだってぇぇぇ!」」」


 発狂した男子たち。当たり前だ。未だかつてなかっただろう転校生の遅刻。さらに先生が転校生が来ることを伝え忘れたのだから。

「こんにちは。今日は事情で遅刻してしまいましたが、私が転校生の機織はたおり雪菜ゆきなです。

 そういった美少女、雪菜さん。少し先ほどの男子にビビり気味なのが見て取れる。

 モデルなんじゃないか?と思うほどの美少女で、ロングの髪を白い髪ゴムで縛ってある。


 ギャーギャー騒がしいみんなをおいて、先生が発表する。

「えっと、雪菜さんの席は、、」

「先生!是非是非俺の隣にしてください!」

「私も転校生と仲良くしたいです!隣にしてほしい!」

 早速転校生の隣の席の奪い合いだ。

 まぁ、私は興味ないし、別にいいけど。

「まあ、落ち着けって。もう決まってんだ。」

 そう言って落ち着かせる先生。クラスメイトたちが静かに発表を待つ。

 中には手を合掌して祈っている人もいる。そこまでするか、と思うがまあ気にしない。


「中川、おまえの隣だ。」


 ・・・?


「はい?」

 辛うじて出た言葉は、語尾がどうしても上がってしまう。


 えっと、何が起こった、、、?

 つまり、私の隣ってこと?


 落ち着け。中川もも。

 仲良くなれるチャンスじゃないのか、、、?

 誰か(恐らくもう一人の自分)が語りかける。

 そもそも私はあの子となかよくしようなんて思ってない、、、

 確かにそうだと()納得させてから深呼吸。


 少し落ち着いてから、みんなの方を見る。

 羨ましそうに見つめられる。よほどショックだったのか、机に突っ伏してしまう人もいる。

 そこまでするか(Ⅱ)と思うがまあ気にしない。

「よろしくね。中川さん。」

「あ、はい。ヨロシク、、、」

 にっこりと笑った転校生の笑顔は、私にとっては明るすぎた。

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