第3話 第一階第一号室~書斎~
「ここは書斎か・・・。まさか急に本を投げつけてきたりしないよね・・・?」
その場所は書斎なだけあって静寂を保っていた。埃が舞っていて咳き込みながら様々な本を物色する沙月。すると突然低いボイスが沙月の耳に突き刺さった。
『ようこそ、あの忌まわしい女、神条早苗の娘だな?俺はあいつを許さない。20年もこの部屋に閉じ込めやがって・・・!許さねぇ、許さねぇ・・・。』
「ひっ!で、出たぁ!!!」
書斎の悪霊を見た瞬間血の気が引く沙月。明らかに殺気をこちらに向けている。恐ろしいオーラが部屋全体を包み込んだ。
『おいおい、あの女の時とは全然違うじゃねーか。ただのか弱い乙女だな。丁度いい。お前のような怖がりな人間をいたぶるとするか。』
その悪霊は怯えている沙月にどんどん近づいてくる。無数の本を空中に浮かばせながら。
「こ、来ないで!!」
明後日の方向を見ながら虚空に助けを懇願する沙月。しかしそんな言葉は悪霊には通じず、沙月の体に触ろうとする。絶体絶命のピンチに陥っていた。そんな時急に悪霊が悲鳴をあげたのだ。
『痛い!!お、お前!い、今何をした・・・!』
目を瞑っていた沙月は恐る恐る目を開ける。するとある事に気づいた。沙月に触れた悪霊の手が分断されていたのだ。そればかりか痛覚があるのかもだえ苦しんでいた。
「なんで・・・?」
沙月はひたすら考え込む。すると悪霊は痛みを力の糧とし、大量の本を浮かばせる能力を使って沙月に投げつけてきた。しかしそんな攻撃でさえ沙月に触れる事なく消滅した。そう、沙月は怖さMAXの状態で気づいていないだけだ。己の力が強大すぎる事に。
「あ、この本知ってる・・・。私が好きな小説だ。」
足元に落ちた紙は有名な小説の一部であり沙月の好きな本だった。その瞬間沙月の怒りのオーラが彼女を覆う。好きな本を無造作に扱った目の前にいる悪霊に怒りを露わにしたのだ。
「よくも・・・私の好きな本を傷つけたな!!!!」
『そっちーーー!?』
沙月は一瞬でその悪霊の前に立ち、悪霊の顔面を殴り飛ばした。すると、悪霊は苦しみながら沙月の光輝くオーラによって浄化され消滅した。
・・・
「全く・・・。本は攻撃に使うものじゃないのに。整理してから次に進もう。でも不思議だなぁ。私の体に触れただけでその部位が消滅してしまうなんて。母さんの言っていた事は本当だったんだ・・・。」
沙月は自身の力に驚きつつもその部屋を後にし、次の部屋・第一階第二号室の扉を開けた。
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