第2話 禍々しい島の全貌

「うぅ・・・結界張ったのにまだ霊達がうじゃうじゃいるじゃん・・・。帰りたいよ・・・。」

 

沙月は遠くに見えるマンションへと進んでいた。歩きながら周囲を見ていると様々な個性溢れる霊達がいた。木の下で横になっている霊、空を飛ぶのが好きで笑顔で浮遊している霊など。この島に住まう霊は悪霊だけではない。善良な霊の方が多いのだ。

 

「この森を抜けた先にマンションが・・・。なんか木がうねうねしているし、無駄に静かなのが余計におどろおどろしさを引き立てている・・・。」

 

マンションに近づくにつれ、草木は真っ黒になっていった。それに加えいつの間にか善良な霊がいなくなり、影のない動物や殺意を向けている悪霊の視線をもろに受け続ける。恐怖との闘いだ。

 

 「ところでなんでこの島はこんなに呪われているんだろう。昔第三次世界大戦があったけど、もしかしてこの島も狙われていたのかな?」

 

 沙月は歩きながら考え事をしていた。そう、100年以上前に起きた第三次世界大戦で消え失せた国は50以上であり、今の日本にある心霊スポットのほぼ全てがその戦争の傷跡だった。つまり日本は他国からの侵攻により大量の人間が死んだのだ。だからこそ、日本の所有していたこの島も例外ではなかったのだろう。


・・・


 「ここが母さんの言っていたマンションね。うわっ、マンション全体が血の色してるし、なんかボロボロだし、本当に入っていいのかな・・・。って急に崩れないでよ!びっくりするじゃん!!なんか体がビリビリするし・・・。」


 マンションの敷地を囲っていた柵が崩れ落ち、この場所の危険さを体感する沙月。常人ならこの敷地に入るだけで気絶するのだ。霊の呪いによって。


 おっと、説明しなければならない。このマンションは一階につき10部屋ある。それが10個積み重なっている、つまり10階建てであるので、このマンションには部屋が100個存在する事になるのだ。


 「しきたりの条件は十分な食事も無しにマンションを踏破するって事か。怖いから早く終わらせよう・・・。」


 そして沙月はマンションのエントランスへと続く扉を開け、中へと入っていった。


・・・


 「あれ、思ったより綺麗だ。虫もいないし・・・。」


 沙月の予想は見事に外れていた。意外とマンションの中は廃れていなかった。そればかりか机も椅子も、なにもかも綺麗に整頓されていたのだ。まるで高級ホテルのように。金属類も錆びていないし、それぞれに通じる廊下も青白い炎のろうそくに灯されているが、危険とは無縁の場所だった。しかし逆に言うと安心させる為に悪霊が仕掛けた罠なのかもしれない。それを感じ取った沙月は警戒しながら、第一階第一号室の扉の前へと立った。


 『頑張れ私!ここで躓いたら母さんに合わせる顔がない・・・!!』


 覚悟を決めた沙月は頬をパチンと両手で叩き、その部屋の扉を開けた。

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2024年9月20日 20:00
2024年9月21日 20:00
2024年9月22日 20:00

神条家のしきたり 青鳥翔(あおとりかける) @aotori_kakeru

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