第5話 5月30日

 身長にコンプレックスがあった

 運動は得意で走るのは4年生で一番速かった

 砂場の高い鉄棒にはからかわれるのがイヤであまり近づきたくなかった



 その日はクラスメイトがみんな帰った後届くか試してみた

 右手の中指が少し触った



 ひたすら飛んだ

 いつの間にか外国人の先生がいて、帰る時間だと教えてくれた

「届きそうかい?」

 触れたんやからいける!

「いけそうや!」

 ジャンプして、ジャンプして、ジャンプして、手を振ってジャンプして


 掴む!


 掴めた!

 両手りょうてりょうて!

 よっし!

 後はもう大丈夫

 体を振ってぐるっと1回転

「出来たっ!」

 先生を見ると驚いてた!

「おめでとう!すごい!」

 よしっ!もう大丈夫!砂場の鉄棒もイヤじゃない!

 クラスのやつとここに来ても大丈夫!

 チャイムの音が聞こえた

 よし!帰るか!

「じゃあ帰るわ!また明日~!」



「出来た出来た~いえー!出来た~」

 駆け足で正門を抜け、橋を越え階段から河原に降りる

 そのままの勢いで橋の下から川の中へ向かって走っていく

 



 嬉しそうな声はもう聞こえない

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