第3話 4月29日

 テレビには爆弾が爆発し四方に火が走り敵を倒す画面が映っている

 今日も駄菓子屋を開けながらゲームをする


「おっちゃーん」

 

 子供の呼ぶ声がする

 店と部屋の間の木造の引き戸は開けっ放しにしており、すぐに顔を出せるようになっている


「どれ買うんや~」

 

 そう言いながら顔を出すと金髪の外国人がいて何事かと焦るが、子供らが外国人の先生が来たと騒いでいたのを思い出す


「にいちゃんがそこのガッコのセンセ?」

「そうやで!」

「英語の先生やで」

「そらそやろ」

「ベイリーデス、よろしくおねがいシマス」

「テレビ以外で外国の人初めて見たわ、どうもね~」

 

 そうしてまた部屋に戻り、ゲームを続ける

 外から少し聞こえる声はああ外国人なんやなと思う日本語で、子供たちと楽しそうにしている


「おっちゃーん」

 

 また呼ばれて顔を出す

 そしてまた戻る、呼ばれる

 ・・・以前はこんなに頻繁に店に顔を出していただろうか?

 誰かもう一人隣に・・・

 何故か寂しさがこみ上げる

 ゲームの途中でテレビの画面が黒くなった一瞬に映る自分の顔が寂しく見返してくる


「寂しいなぁ」


「寂しいわ」



 店の表のゲーム筐体の電源を落とし、ガチャガチャを店にしまう

 店の電気を消し表のシャッターを下ろし店の前の橋へ向かう

 橋の横の階段を降り、河原から橋の下へ行く


「寂しいなぁ」

 

 川の中へ入っていく、寂しそうな顔のまま

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る