第2話 4月
「アトール・ベイリーデス。イギリスからきマシタ。ヨロシクネ」
30代半ば頃の金髪の男性が挨拶し、子供たちがはーいとはしゃぐ
「今年からはベイリー先生と一緒にみんなに英語を教えていきますよー」
担任の坂東先生が子供たちに色々声を掛け、教壇の前を譲られる
黒板の前に立った坂東先生が書いた単語を生徒たちに発音し、生徒たちの発音を聞いていく
緊張し頭が真っ白になりながら、そのまま授業は何事も無く終わる
坂東先生が言うには子供たちも緊張していたそうだ
慣れたらどんどんやかましくなっていくと笑っていた
「外国人と話すの初めてや」
「日本語うまい」
「先生何歳なん?」
「サッカー上手いん?」
給食を教室で食べながら子供たちが話しかけてくる
クラスの大胆な子たちが話し始めると、少しづつ話しかける人が増えていく
食後の午前とは別のクラスの授業も少し慣れ、緊張した初日が終わる
何とかやっていけそうだ
それからの日々は、時に体育の授業に参加しあまり高くない運動神経で子供たちに振り回される
給食の時間には関西弁を教えてもらう
時に小さい学年の子に驚かれたり、近所の店で驚かれたり、通学路で驚かれたりする
とある休み時間には男の子の遊びに混ぜてもらう、今は独楽が流行っているらしい
噂されるカンチョーは今は流行ってないらしい
だけど他の先生が言うには子供の流行りはすぐ変わるから余り安心できないと言っていた
そんな日々を過ごし4月も終わりに近づき、担当しているクラスの子供たちの名前も覚えた頃、帰り道で子供たちに駄菓子屋を案内してもらう
学校の正門から歩いて3分のところにあり生徒の多くは帰り道に寄っていくようだ
「シンゴ、店の人がいないけど大丈夫デスカ?」
「おっちゃんいっつもそこの部屋ん中でゲームしてるから買うとき呼んだらええで」
シンゴが店の奥のガラス戸を指さして教えてくれる
店と家屋が一つになっているらしい
木造で薄暗い店には所狭しと駄菓子、文房具、おもちゃ、アイスと並んでいる
「先生どれ買うん?すっぱガム買えへん?」
「ガチャガチャやってくる~」
「俺ゲームやってくるわ」
表に置いてあるゲーム筐体でマサキが遊び、ガチャガチャにはタイチとヒデくんが行ったようだ
店内ではシンゴとユウジが駄菓子を選びながら説明をしてくれている
「店を誰も見てないのはスゴイデスネ」
そう言いながら店の一角に座布団が置かれているのを見つける
「普段ハそこニ誰か座っているンデスカ?」
指差しながら訪ねると
「ああ、バアちゃんが・・・バアちゃん?」
シンゴが何故か自分の言葉に首を傾げており、どうしたのか聞こうとした時
「せんせー!ガチャガチャハズレやったしあげる~!」
表から戻ってきたヒデくんが、小さい可愛らしい動物のキャラクターのキーホルダーを渡してくる
「アリガトウ、これは何のキャラクターナノ?」
「知らん~」
「俺も知らん」
「女の誰かやったら知ってるかもしれへん」
苦笑いしながら自転車の鍵に貰ったキーホルダーを付けると、ヒデくんはうれしそうにしている
何だかんだで500円程のお菓子を買い、すっぱいガムや長いグミを楽しむ男子たちと笑い、その日は家に帰った
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