橋の下から愛を込めて

十字路

第1話 前章 ある冬の日

「う~寒っ!」

 

 40歳頃の男が鼻を赤らめながら道を歩いている

 小学校前の坂道を下り、小さな川に架かる橋を越えてすぐの河原に続く階段を降りる

 風が吹き、より一層寒くなり鼻を詰まらせ体を縮ませながら橋の下の方へ向かっていく


「はぁ~っ、えらい冷えてきたわ」

 

 手で口元を覆いながら温める

 橋の下に付きそのまま川の中に向かって歩き続ける


「う~寒っ!」

 

 底の砂利が見える深さなのに、なぜか一歩ごとに沈むように降りていく

 進む度に誰かの声が聞こえる

 その男以外誰もいない川に笑い声や叫び声、ささやき声が無数に響く

 そのまま川に入った男が見えなくなり声は消え、また冷たい風がいつまでも吹いていた

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