第46話 私の人生です
「さて。あらまし……シルビラの披露宴の後についてはお姉様から伺っています。オーラムの皇太子から求婚されるとは。叔母として誇らしいのですが」
ちらりとオリクトを見る。誰の目にも明らかに、彼女が不機嫌なのが解る。
「その様子だと、本当に求婚を断ったみたいね」
「ええ。皇妃に興味は無いし、私の力を母国の為に使いたかったので」
勿論これだけではない。ドルドンの事、クド族が必要な事、要因は沢山あるが。
「それに
「お、オリー……」
こんな堂々と言われればドルドンも耳が真っ赤になる。豪胆と言うか、オリクトは自身の行いを恥じも照れもしない。
こういった強さこそ彼女の魅力……なのだが、クニークルには褒められたものには見えないようだ。
「まったく。婚約者と仲が良いのは結構ですが、節度は護るように。しかしまぁ、貴女のような変り者なら皇妃の座を断っても不思議ではありませんね」
「ええ、ええ。それにあの男は生理的に絶対無理なので。死んでも嫁ぎたくありません」
「…………お姉様の言っていた事は本当だったのですね」
呆れたと言うよりも驚愕といった様子だ。皇太子の求婚を断り、あろう事か生理的に無理だなんて口にするとは信じられなかった。
男ですら見惚れる美貌の色男。地位、権力、財力とこの世の全てを手中に収められる天に愛された男。そんな男に求婚されたのに断るなんて、誰もが羨むだろう。
「はい。私はああいった上から目線で高慢な男が大嫌いなんです。顔と能力は評価しますが、
一步下がり、ドルドンと同じ場所で肩を並べる。腕を組むとドルドンは驚き頬を赤らめた。
「私は彼を手放すつもりは無いので。本で読んだ事があるんですけど、人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られて死ぬそうですよ?」
「一国の姫の言葉とは思えませんね。まあ、陛下も容認している以上何も言いませんが」
大きなため息を溢す。
「しかし今後はどうするのですか? 殿下は諦めていないのでしょう?」
「そうね」
「毎年こういった色恋沙汰の揉め事はあります。基本的には家の問題ですが貴女は違う。国の問題なのですよ」
耳が痛い話しだ。王女の地位に恵まれた生活。その責任を問われている。勿論オリクトが何も考えず恋愛脳に毒されているのではない。彼女なりに国の事を考えた選択だ。
確かにオーラムとの同盟は一王女として魅力に感じている。だがこれではオリクトの
「解っていますわ叔母様。そこでお願いがあります」
(あ、オリー絶対悪い事を考えてるな)
ニヤリとした笑顔。この顔は何か企んでいる。
「お願い?」
「ええ。私は竜の花嫁とかいうイカれた……」
ジロリとクニークルが睨む。なんてはしたない言動かと無言の威圧感にオリクトも言葉をつまらせる。
「…………オーラムが求める素質を持った者です。ですが、カルノタス殿下の母君も同じ。ならばもう一人いる可能性は大いにあります」
「つまり、私に竜の花嫁を探す手伝いをしてほしいと? それもオリクトの身代りにするために」
「はい!」
満面の笑顔で即答する。
そう、これが目的だった。学園長の地位、人脈を使う。何より叔母、姪の関係なら断りはしない。オリクトのテンションは上がっていき口も加速していく。
「できれば家族から使用人扱いされてたり、苛められてるような娘がいいですね。あと姉妹がいると尚更可能性が高いわ。それも評判が真逆なのとか……。あと公衆の面前で婚約破棄を言い渡されたり」
脳内でヒロイン像を組み立てていく。本能で好意を抱く【竜の花嫁】の設定。となれば典型的なシンデレラストーリになるはずだ。
姉妹や家族から搾取される可愛そうなヒロイン。ああ、主人公にぴったりだ。
家族に愛され婚約者とも順調。そんな自分と
「そんな
さあ物語の始まりだ。おいでませ主人公。歓迎しますわヒロイン。
ラスボスが味方になりますよ。
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