第11話

年が明け、高校生生活も残りわずか。


美羽と優花。

おそろいのギャルファッションで初詣に出かけていく。


着物を着た人が多い中で、ミニスカ、ニーハイブーツの二人はやや目立つ。

「今日も可愛いね優花」

腕を組みながら美羽が言う。

「お前もな美羽」



そんな二人の様子を遠目から見ていたのは、あの〚ひなゆう〛の二人だった。

「やっぱ、あのふたりは美羽さまと優花だよ」

「だね、スマホで撮っとこう」


カシャカシャ・・・


「何かカメラの音しなかった?」

「気のせいだよ!人多いからさ」

「そ、っそうかなぁ・・・」





3学期が始まり、この期が終ればこの学校ともお別れだ。

「さびしくなるね」

「だな」


人気のない屋上ではなく、旧校舎の空き教室で机と椅子を出して話し込んでいる。


その様子も〚ひなゆう〛の二人は、しっかり見ていたし、会話も録音していた。



「ねぇヤろうよ」

「ここでかよ」

「だめ?」

「ダメじゃなくてさ、ウチがご主人さまだから。忘れんなよ」

「そうだった!ご主人さま、ここでシませんか」


あの日から身体関係を続けるようになっている美羽だが、

学業成績は相変わらずトップをキープしているのだった。

ちなみに優花も最近では成績が上がってきている。

とは言えようやくクラスの中間くらいなのだが。


「あらぁ・・・美羽さまが・・・あられもない姿に」

小橋優愛は驚きを隠せない。〚深窓の令嬢〛という言葉がぴったり当てはまる美羽があのような媚態を見せるとは想像もしていなかったのだから。

隣にいた松本陽葵も、それは同じだった。


「これは一大スクープね!よし!もらった!」



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しばらくすると・・・

クラスの中でうわさが流れ始めた。

「美羽さまと優花が付き合っている。しかも・・・」


お嬢さまグループでは衝撃だ。

当初はまさか、美羽さまが・・・と言った雰囲気で、全く信じられていなかった。


だが。


クラスのグループLINEで、二人が一緒に居る画像が流れ始めると

その噂の信憑性がにわかに上がっていた。


(あの噂は、本当なのね)

(美羽さまが、あのようなファッションに・・・)


その噂は同じギャル仲間にも流れている、同じクラスだから当然ではあるのだが。


「優花、美羽さまと付き合ってるんだって?」

「あ、う、ううん、まぁそうなんだけど・・・」

「やったじゃん!あの美羽さまと付き合うなんてさ。ねぇ美沙」

「そうだよ、あんたやるじゃんよ!これはさ、奇跡だよ。ウチらにしてみれば」

「そうか?お前らがそういうならそうなんだろうけど」


お嬢さまグループとギャル仲間では受け止め方が180度違っていた。


だがその中間グループも、お嬢さまたちと同意見だったし、

あの【二宮美羽親衛隊】などは、ほぼ狂乱錯乱、恐慌状態に陥っていた。

「解散だ!親衛隊は!二宮美羽の本当の姿は、我々の思い描いていた

 モノとは全く別物だからだ!俺たちは二宮美羽に裏切られたのだ!」過激である。



「おはようございます」

「・・・」

「・・・おはようございます・・・」

「どうされましたか?」


「行きましょう」

「どちらへ?」

「・・・」


あいさつしてもシカとされるようになった美羽。


(どうしてみんな?私の本当の姿を見たから?)

いつもの黒髪、今日はセンター分けではなくパッツン前髪の美しさを保っているが、

それでも美羽が話しかけても、「・・・すみません、教室移動するんで」と言って

避けられてしまう。


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2月の雪の降る寒い日


制服のセーラー服にベージュのセーターを着込んで登校する二宮美羽。


どこからともなく、雪の固まりが飛ん出来て彼女の頭に当たった。

「痛い!」


投げつけてきた先に居たのは元・親衛隊隊長の野中と、数人の男子生徒だ。

「お前は俺たちのあこがれだったが、それは打ち砕かれた。その報いを受けよ!」

「・・・・」


さらにもう一つの雪の固まりが。

お嬢さまグループの全員ではない何名かが野中たちと一緒に投げつけてきた。

「あんたなんか、もうお嬢さまでもなんでもない!クラスから消えろ!」


「行こうぜ」


「・・・」

悔しさと情けなさで、降りしきる雪の中に突っ立ったまま、身動きが取れない美羽。

身体は頭のてっぺんから足元まで、雪まみれ。



「おはよう美羽!えっ!どうした?その恰好」

ちょうど歩いてきた、優花のギャル仲間、玲実と彩夏だった。

「うっううう・・・・」彩夏に抱かれて泣きじゃくる美羽。


やがて優花やほかのギャル仲間がやって来た。

「可哀そう・・・いっしょに行こう、ね。

 ウチらがついているからさ。もう泣かないで。きれいなお顔が台無しよ!」


教室に入っても、お嬢さまグループや元・親衛隊の連中をはじめ、

ほとんどのクラスメイトからの冷たい視線を浴びる美羽。

席に座ってもうつむいたまま、誰とも喋らなくなっていたし、休み時間でも

かつてのように周りに同じグループのメンバーがいることもなく、

孤独な状態に陥っていた。



ある日

「二宮、いるか?」

「はい」

「ちょっと職員室まで来なさい」


教室を出ようとする。

ひそひそと話す声が聞こえている。


だがギャル仲間たちは

「ねぇ優花、ちょっとひどくない?あれじゃあ美羽が可哀そうだよ」

「うーん、たしかになぁ」

「どうしたらいいかな」

「ちょっと考える。お前らも何か考えろよ」

「わかった、美羽が可哀そすぎるし」



職員室で担任が〚ひなゆう〛が撮った写真を見せて、「これはお前か?」

「はい、私です」

「なぜこういう格好をしている?」

「したいからです」

担任はギャル姿の美羽を非難しているのであって、彼女自身をどうかしようと

しているわけではなさそうだ。


「まぁ、これで処分とかはないが、ほどほどにしておきなさい。いいね」

「はい・・・」


職員室を出ると、優花と彩夏が待っていた。

「何か言われた?」

「あんな格好はするなって言われたの」

「・・・じゃあウチらは何だって言うのよねぇ」

「だな、美羽ならよくて、ウチらはダメって言われるのも、何だかなぁって思うわ」


「とりま美羽、しばらくはウチらと一緒に居ない方が良いかもよ」

「え!優花まで?」

というや否や、美羽はその場を走って去って行った・・・

「美羽・・・」


第11話 完

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