第8話

高校3年ともなれば、そろそろ受験勉強やら何やらで忙しくなっては来るもの。


「美羽さまは決まりました?」

お嬢さまグループでの会話の中心でほほ笑みながら話を聞いている美羽。

「いちおう内部推薦頂きましたので」

「さすが美羽さま、まぁ当然と言えば当然ですよね」

通っている高校は大学の付属高校で有り成績優秀な美羽は内部推薦を決めている。


「玲実、彩夏、お前らどうするん?」

「とりま専門かな?」「ウチも、大学行ける程、頭良くねーし」

(美羽は推薦貰ってるらしいから、ほぼ合格みたいなものだしなぁ)


優花は専門学校へ行くことにしているのだが。


(本当は大学へとおもってるけどよ、ウチの学力じゃあ・・・)



進学に悩んでいる優花のもとへ、今日も美羽がいそいそとやってくる。


「なぁ美羽」

「ん?なぁに」

「・・・いや、なんでもないよ」


「美羽さぁ、推薦貰ったんだって?」

「うん」

部屋に置いてあるギャル系ファッション誌のページをめくりながら、

「これいいなぁ!ねぇ遊びに行こうよ!」

「うーん、ウチもさ進学しようかな?と思ってんだよね。

 でも成績良くないし、どうしようかと思ってんの。勉強もしたいって思うのさ」

「じゃあさ、私が勉強見てあげるよ。それから遊びに行こう!」



「おい優花」

「ノックぐらいしろや!姉貴よぉ」

「いいだろ?美羽ちゃんいらっしゃい」

優花の姉、彩花が入って来た。

「ならさ、あたしがいっしょに行こうか?もう受験は終わってるしさ」

「いいんですか?」

「いいよ」

「じゃあ、姉貴頼むわ」

「OK!」


姉の彩花の部屋は、全く優花の部屋と同じ。

ただ違うのは、やや大人っぽいギャル系ファッションが多いことだ。


「じゃあ、出かけましょう」

タンクトップとスキニーはともに黒。おなかがちらっと見えている。

優花と違ってシルバーのネックレスとゴールドのイヤリング。

髪はピンクのストレートをセンター分け。黒いグラサンで決めている姉貴。

「姉貴、今日は気合入ってんじゃん」

「当ったり前じゃん!可愛い妹の代役なんだし!ねっ!じゃあ行こうか!」



優花とちがって、少し大人っぽく見える。

まぁ姉だから当たり前と言えばそれまでだけど。


「美羽ちゃん、こんなのどう?」

いつもと違うショップにはいると、節度のある派手さ。そんな感じに見えた。


ダメージ加工の少ない薄めブルーのヴィンテージデニム。

白いチューブトップは「大人ギャルにも合うのよ」


見たものすべてが、美羽の目には新鮮に映るのだ。

(ギャル系でもこんなに落ち着いたカラーも有るんだなぁ)


「ありがとうございました」

ショップで買ってすぐに着替える美羽

「やっぱスタイルいいから、ピッタリ合うね、それに脚キレイだよね美羽ちゃん」

「そうですか」


二人の大人ギャルがショッピングモールを闊歩している。


そんな二人の様子をうかがっているのは、

例の小橋優愛と松本陽葵の〚ひなゆう〛だ。「あれはどう見ても美羽さま・・・」

「でしょ?、前にもあんな格好の美羽さま見かけたんだよね」

「どうする?突撃する?泳がせてみる?」警察の捜査員みたいなことを言っている。


「とりま泳がせようぜ」


二人のギャルはモールのショップをのぞいたり、ベンチに腰掛けて話し込んだり。


「あ、そうだ、今日は記念に何か買ってあげるよ」

「え!いや、それは申し訳ないし」

「優花からさっきLINEがあってさ、何かいいモノあれば買ってあげてってさ」

「いやいや、それは・・・」

「大丈夫、バイトもしてるし、その位の事は、ねっ」

「じゃあ・・・お言葉に甘えて」

美羽が入って行ったのはアクセショップ。

ネックレスが欲しかった美羽は、彩花やショップ店員といろいろ悩んだ末

シルバーのハートのネックレス。「いいんじゃね?可愛くてさ」



早速つけてみる。


(カワイイ・・・)

「ありがとうございました!」

「いやいやこれくらい、何でもないっしょw」


「おかえり。いいね、そのネックレス。美羽らしくていいよ」

「マジ?」

「マジ」




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「ねぇ優花、ちょっと来てくれる?」

「ん?なに」



廊下の奥のつきあたり。

あまり人が来るところじゃない。


「あのさ、美羽さまとどういう関係なん?」

「どうって?」

「私、見たんだよね。あんたと同じファッションの美羽さまと歩いているのを」

「だから?なに?おい何、撮ってんだよ」

陽葵がスマホでその様子を撮っている。

「どういう関係なのかを聞いているんだけど」

「クラスメイトってだけだろ?お前らだってそうだろうよ」

「そうかなぁ?それだけ?」

「それだけだよ」

「ふーん、じゃあこの動画をお嬢さまたちに見せて良い?」

「それはマズいだろ?」

「じゃあ、話してくれるかなぁ」

「おまえ、脅迫してんの?」

「脅迫だなんて~~聞いているだけなんだけどな」


そんな様子を見かけたのが美沙だ。

「あれ、そこで何してんの?優花!」

「ヤベ・・・今日はここまでにしてやるよ、じゃあまた聞くから」


美沙はそこで行われていたことを、おおよそ察していた。

「ヤな連中ね、相手にしない方が良いよ」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「なぁ、お前もそろそろウチへ来るの止めな」

「え~~~ヤダよ、それ」

美羽の立場を考えれば、もう一緒に居ない方が良いと思っていた。


「お前とウチの間に何が有る?って追及してくるヤツがいるんだよ」

「だれそれ?」

「ひなゆう」

「あ!あの子たちが?そうなの・・・」


美羽にはある覚悟が出来ていた。



第8話 完










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