第6話
そろそろ梅雨明けという7月半ば。
夏休み前の関門は1学期期末試験。
勉強が苦手な優花は「あーだりぃ・・・期末かよ~~~~」
家に来ていた美羽は
「じゃあ、私が勉強見てあげようか?」
「うーん、有難いんだけどなぁ・・・勉強そのものがねぇ・・・」
「そう言わないで、さ!やろう」
「え、う、ううん」と気の乗らない素振り。
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「じゃあ、今日はこのあたりで。ねぇ遊びに行こうよ!」
「あ、ええ、うう~~~~ん」
「どうしたの?」
優花の顔を覗き込む美羽。
「勉強のし過ぎで頭痛いんだけど・・・」
「少し横になった方が良いよ。じゃあ薬買ってくるよ」
「あっ!いいよ、ウチにあるから・・・って行っちゃった。大丈夫かなぁ」
デニムのホットパンツに黒のチューブトップでヒールの高い黒いサンダル。
まんまギャルファッションのままで、ドラッグストアへ急ぐ美羽。
えーっとこれかな?
あっ!あそこにいるのは玲子さん。ヤバい・・・ちょっとこっち来るよ、どうしよ。
同じクラスのお嬢さまグループの一人、大森玲子だ。
マズい・・・ドンドン近づいてくる玲子。
ドキドキドキッ・・・美羽の心臓の鼓動が激しく鳴っている。
フッとすれ違った玲子は、その相手が美羽だとまるで気が付いていない様だった。
ふぅ
気付いていなかったみたい。
急いで帰る美羽
「薬買ってきたよ、これ」
「ありがと」
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「少し楽になったわ、でもお前、誰にも会わなかった?」
「玲子に会った・・・」
「それってマズくね?」
「気付いていないみたいだった」
後で知ったのだが、玲子はまったく気づいていなかったそうだ。
あれだけ至近距離ですれ違っていながら・・・
「だって美羽さまがあんな、はしたない恰好する訳ないでしょう」
やはり美羽のイメージはお嬢さまなのだった。
どこまでいってもお嬢さま。
本当は普通の女子高校生なのに・・・
「ねぇどうしたらいいの?」
「もう、染めちゃえ!」
「ええ!染める?それは・・・」
変わりたい美羽だが、それだけは出来なかった。
そのまま家に帰れば即バレ。
両親から怒られるのは必至。
でも・・・
「じゃあさ、ウィッグつけてみる?」
「ウィッグか、それなら行けるかも。優花持ってるの?」
「あるけど」
「着けてみたい!」
優花がいくつか持っているウィッグをつけてみる。
中でも気に入ったのが、ゴールドベージュのロングヘア、緩くカールしているもの。
「これいい!次出掛ける時はこれね!」
「はいはいwわかりました」
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あくる日の学校で
「美羽さま、昨日駅前のドラッグストアで、すごくカワイイ女子を見ましたのよ」
(ドラッグストア?まさか・・・)
「そ、そうなの?」
「はい、黒いチューブトップにデニムのホットパンツ、それはもう可愛さの極致
でございましたの」
「は、はぁっ・・・」
放課後の屋上
「やっぱり、バレてんじゃね?それって」
「でも話しぶりから私だとは感づいていない様子よ」
「だとしてもなぁ・・・もうすこし慎んだ方がよくね?」
「えーやだぁ」
休みの日は、ほぼほぼ優花の家に出かけている。
「じゃあさ、このキャップ貸してくれない?」
「いいよ、目深にまぶればバレないと思うよ」
優花といつも遊びに行くショッピングモールへ。
ベージュのキャップを目深にかぶり、黒いマスクで「これならバレねぇな」
もともと小顔だから顔のほとんどがマスクで隠れている。
「ねぇ、これじゃあ芸能人みたいなんだけど」
「我慢しなよ。これ以上バレたらマズいっしょ。お前の立場だとさ」
それでも美羽は楽し気だ。
アクセショップでは、「これカワイイ!」と
薄いブルーとグレーのツートンカラーのリングを買った。
「優花と同じよ」
「お、おおっそうだな・・・」
指につけたリングを何度も何度も繰り返し見ている美羽。
優花と並んで歩いている姿を一人の女子が見つめている。
「あの子カワイイ・・・でもどこかで見たことがあるなぁ・・・」
その女子は美羽や優花のファッションが気になっている様子だが、
それ以上にその人物に興味があるのだ。
お昼時
「何か食べようよ」
「そうだなぁ、じゃあフードコート行こ」
二人でハンバーガーにかぶりついている。
ハンバーガーを食べるにはマスクを外さないと・・・
様子をうかがう、その女子。
「あっ!美羽さま?まさか優花といっしょって有り得ないでしょ」
目ざとく見つけたのは同じクラスのギャルグループのひとり、立花玲実だ。
「優花と美羽さま・・・どういう関係?ふたりいっしょ?友だちなんだろうけど」
美羽と優花の関係がバレてしまったのだった。
第6話 完
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