第5話 

ショッピングモールをブラブラしながら、たわいもない話をしながら、歩く二人。


(どこにあるのかなぁ?)


「ねぇ優花」

「なに?」

「優花ってさ、ピアスつけてるでしょ?」

「つけてる」

優花は両耳にピアスをつけている。美羽はマネしたいとずっと思ってた。

「そうなんだ、開けたい?」

「開ける?」

「そうピアスホールって穴を開けるんだよ」

痛そう!って思ってた美羽だが、そうしないとピアスはつけられない・・・


(痛そうだけど、変わらなきゃ!)


「私もやりたい!」

「美羽が?」

「ダメ?」

「ってか、大丈夫なの開けても」

お嬢さまグループでもある女子がつけているのを知っていたから。

「ふーん、そうなんだ、お嬢さまでもつけるんだなぁ。解った!それなら」

「それなら?」

「いったん、ここ出よう」

「えっ?」

「別の場所にあるからさ、遠くは無いけど」

そのあと少しショッピングを楽しみながら、ショッピングモールを出て・・・

駅へ向かう途中の大通りから少し離れた裏通りの一角にある店に入っていく。


「いらっしゃい、ゆうじゃん!しばらくだね」

両耳は当然、唇にもピアスをした若い女性スタッフがいる。

「おひさ~~~!あのさ、この子もピアスつけたいって言うんで連れてきたんよ」

「あ、そうなの?これまたスタイルの良い子だね。モデルさん?」

「いや、クラスメイトだけど」

「ゆうのクラスにこんなにきれいな子がいるんだ」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「ありがとうございました」


ガラスに映る耳のピアス。


「可愛いの選んだんじゃね?」

「そう?優花が選んでくれたんだよね」

「その中で、美羽が最後は決めたんだし、いいと思うよ」


近くのカフェに入る二人

「優花と一緒にいるときだけ、髪をアップにしたいんだけど」

「なんでまた?」

「だってピアス見せたいじゃん!」

「ああ、まぁそれはそうか」


バッグの中をみると、ちょうどいい具合にシュシュがあるのを見つけた優花

「ちょっといい?」と言いつつ、美羽のロングヘアをアップにして、

持っていたシュシュをつけてみる。


「どうよ?」

「うわぁ~~~~カワイイ!」

「って自分で言うかw」


水の入ったグラスに自分の顔を映してみる、

着けたばかりのピアスが輝いている。


つけて良かった!


ギャルから見れば、たかがピアスなんだが、

美羽のようなご令嬢となれば、されどピアスなのだ。

確かに同じ、お嬢さまグループの中にピアスをしている女子は居るし、

他の女子の中には大きめなイヤリングをしている子もいるくらいだから、

美羽がつけたピアス程度なら、そう問題になるものでもない。


でも、と美羽は思う。


初めてつけたピアス。

それは、厳格で教育熱心な両親にたいする細やかな反抗でもある。

いつまでも "子供” 扱いする両親が、心底嫌いになった。

しかしそれを表立って、口に出すことは彼女の性格からいってできない相談だ。


だが、美羽本人は

自分に貼られたお嬢さまのレッテルをはがしたい!本当の自分はそうじゃない!

そう言いたい!〚深窓の令嬢〛でもなんでもない、ただの女子高校生だ!

と大声で叫びたい。そう感じていた。


「なんでさ、お前はギャルになりたいの?

 成績も学年トップだし、運動神経も良いし、何一つ不満が無いように見えるけど」

「うーん、自由がない・・・ってことかな簡単に言えばね」

「自由ね」

「お嬢さまでいる限り、思い切った行動は出来ないと思うんだよね、

 それに私が居るグループ知ってるでしょ?なんか私を崇拝っていうか、

 そういう雰囲気なのよね、それって正直言えば迷惑よ。本当はこんなお嬢さまじゃ

 ないって言いたいんだけどね」


「優花は自由に生きているように見えるんだよね、あなたの仲間もね。

 そう言うところが羨ましく思えるんだ。だから優花にあこがれるのよ」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「そろそろ帰ろうか」

「そうね、ホントはもっと優花と一緒に居たいけど」

「また明日学校でな」


優花の家で、普段来ている服に着替える。


「じゃあ、また明日」

「気をつけて帰れよ」


自分の家に帰ろうとする美羽は、

もういつもの令嬢然とした衣装に着替えている。

アップにした髪も、いつもと同じロングのセンター分けに直している

もちろんピアスは見えないように・・・



第5話 完

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