第4話

いつもの様に登校する優花

今日は金髪ロングを巻かずにセンター分けしている。

「うっす」

「おや?きょうは巻き巻きじゃないの?」

「たまにはいいじゃんよ」



「おはようございます、みなさん」

「美羽さま、ヘアスタイル変えられましたね?」

黒髪のロングヘアを優花と同じくセンター分け。


優花と美羽が同じヘアスタイルにしていることに、お嬢さまグループもギャルたちも

気付いていない様だった。というよりも互いのグループに興味が無いからだ。


だがその中間に位置するグループ女子の、ある一部は「おやっ?」と気づいていた。

「ねぇ優愛、美羽さまと優花さ、ヘアスタイル同じくね?」

「そうだねぇ・・・だから何?」

「何かあるね、あれは」

「ある訳ねえじゃん。美羽さまはカースト最上位、優花はギャルだよ?」

「そりゃあそうだけど」

二人は、小橋優愛と松本陽葵で〚ひなゆう〛というコンビで動画配信をしている。

学校内のゴシップには敏感。常にネタを探している様な女子である。




「ゆう」

「ん?どうしたの」

いつもの様に放課後の屋上で二人っきりの時間を過ごしていた。


美羽は小柄な優花の華奢な肩にもたれかかるように座っている。

「ゆう?」

「どした?」

「ずっとこうして居たいなぁ・・・」

「美羽がそうしたいならね」



そろそろ入梅という時期の昼休み。


「優花、ちょっといい?」

「ん?」

「あのさ、美羽さまと何かあった?」

聞いて来たのはゴシップ大好き女子の優愛だ。

「どういうこと?」

「美羽さまとヘアスタイル同じだからさ」

「だから?偶然でしょ?それ以外ないんだけど」

「それマ?」

「マジ卍」

「そっか、ならいいけど」と意味ありげな微笑みを見せて去って行った。


なんでアイツはあんなこと聞いて来たんだろ?

ヘアスタイル同じだから?それだけならいいけど美羽のことがバレたら・・・


そう思ったら即行動がギャルである。



翌日。

いつもロングヘアを巻いているか、そのままストレートにしている優花だが、

今日はお団子にまとめているし、触角まで出している。

(美羽といっしょでは彼女に被害が及ぶ・・・)

「おっ!優花、またヘアスタイル変えたん?カワイイじゃん」

「彩夏もやってみ。小顔に見えるっしょ?」

「それな!小顔に見えれば勝ちだし」


(まさか美羽までやらないだろうよ)


ガラッと教室の扉があく。

(良かった)

今日の美羽は、最近それがお気に入りなのかロングヘアのセンター分け。

「今日もお美しいですわ、美羽さま」


そして今日もいつもと同じ一日が始まる



放課後の屋上

「今日はヘアスタイル変えたの?」

「お前と同じだと、マズいだろ?」

「えーーーーなんで~~~美羽のこと嫌いになっちゃったの?」

「じゃなくて、同じにしてると、ウチらの仲を詮索するやつらがいるんよ」

「そうなの?やだねぇ、そう言う子」



週末

ピンポーンと家のチャイムが鳴る

「今日は早いな」

買った服を早く着たいからだという。

「そうだとしてもよ、ウチまだ、着替えてねえんだけど」

そう言う優花はまだパジャマ姿。髪はアップにしたまま、スッピンで出てきた。

「素の優花を見たいから。ちょっと早く来ちゃった」

「ちょっと待ってな」

リビングで待つように言われた美羽

「おはよう美羽ちゃん、今日は一段と可愛い服着てるのね。

 うちの子もこういうの着て欲しいんだけどなぁ。ね、彩花もそう思うでしょ」

「そうね、でもママもギャルだったっしょ」

「ママもガングロギャルだったし、安室ちゃんみたいになりたかったしなぁ」

ルーズソックスを履いたミニスカJKだったらしい優花ママは、

今でも可愛い系の顔つきだし、ギャル系ファッションなら結構イケてる?と美羽は思った。


「お待たせ、じゃあ部屋来て」


いつもの様にソファに座り、クローゼットの優花のワードロープを眺めている。

(わたしのタンスもこうしたいなぁ・・・)タンスの中をギャル系ファッションで

埋め尽くしたいと勝手に妄想している美羽。


自分を変えるのなら、小さい変化ではなく、思い切った変化を!と思っているから

だからこそ、深窓の令嬢というレッテルをビリビリに引き裂きたい!

本当の自分はそうではないんだ!とみんなに見せたい!と、いつも思っている美羽。


「ねぇ今日はこれ履いてみたい!」

「サイズ合うかなぁ・・・まぁ履いてみ」

美羽が選んだのはダメージ加工されたスキニーデニム。


「ピッタリじゃん、この方が美脚効果あるし。ってか元から脚キレイだよな美羽は」

「そう?」と言いながら姿見を見ると・・・

(うわぁ・・・キレイな脚だなぁ・・・我ながらウットリするわ)


「これならトップスは、これで良いっか・・・」

白いビッグサイズのTシャツ。「いいよ!美羽。何着ても似合うなぁ・・・」



「じゃあ出掛けっか!」

「行ってきます!」優花ママとお姉さんに見送られて出かける二人。


ヒールの高いサンダルにも慣れ、スタスタと歩いて行く美羽。

(なんかカッコいいわ、モデルみたいだなぁ)と優花は感心しているのだ。



いつものショッピングモールにあるジュエリーショップへ。

「ここのアクセはリーズナブルなのにカッコよくてキレイなんだよな」

美羽は見たこともないアクセを前に、目をキラキラさせ、手に取り首に合わせたり

耳に沿わせたりしている。


そのうち・・・

「優花のネックレスはここの?」

「そうだよ」

「同じものしたい!」

「えっ!うーんどうだろうあるかな・・・」

(同じもの・・・まさか学校にはしてこないよな・・・ガクガクブルブル)


「えーっと、これですかね?」とショップ店員は、ほぼ同じものを持って来た。

「あ、それですね、美羽?これだけど」

「うわぁ~~~カワイイ!これ買います!」

(買うんかい!)


「ありがとうございました!」

ショップを出る二人は、おそろい(ほぼ)のネックレスをしてショッピング。


実は美羽はもう一つの目的があった。



第4話 完



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