第3話
「ここなんだけど」
「うわぁ~~~~すごーい!」
ギャル系ファッションのショップだった。
「あ!ゆうかじゃん!おひさ~~~この子だれ?」
「ウチの友達だよ」
「みうって言います」
「みうちーって呼ぶね」
みうちーって呼ばれるのは初めての経験なのだ。
見た目の華やかさと、女の子らしい、かわいらしさが同居したファッションは
いつも令嬢然としたファッションしか着たことのなかった美羽には新鮮に映る。
(こういう服を着たらみんな驚くだろうし・・・ママやパパが何と言うかな?)
だからこそ買ってまで着ようとは思わなかった。というか思えなかったのだった。
でも・・・
「ゆうか、この子にこんなのどうだろう?」
「あ、良いかもね、ちょっと美羽?これ着てみる?」
試着ブースで着替えると・・・
「スタイルいいよね、この子は」
黒のチューブトップとデニムミニスカを履くと気分がアガっているのか?
美羽の顔が何となく火照っているように見えていた。
「いい!これ欲しい!」
「いや、お前買えよ!」
「あっ、そうだw」
サンダルもカワイイ!買っちゃおう!!!
「みうちー、どう?着てく?」「うん!」
「また来てね!」
手を振って見送るショップ店員。
優花と同じようなファッションに身をつつみ、ショッピングモールを闊歩する美羽。
ショップのガラスに映る自分を見てはニヤニヤしている。
「そんなに嬉しいの?」
「そうよ」
ショッピングモールの一角にあるカフェに入る
「美羽さぁ、買った洋服、どうすんのさ?」
「あっ!そうだった。勢いで買っちゃったけど、どうしよう」
「バカかw」
「・・・うーんどうしよう」
「じゃあさ、ウチに置いとくよ。出かける時に着替えればいいじゃんよ!」
「頭っまいい!」
ギャルの優花御用達のショップで買い物をしたのはいいけれど、
自宅へ持ち帰れば、厳格なパパや教育熱心なママに見つかったら・・・
そこへいくと優花は羨ましいとさえ思っている。
自分が作られたイメージに縛られ、何も変われない現状を何とか打破したい。
そこへ同じクラスの古田優花をはじめとするギャルたちが、羨ましく思えた。
「ねぇ美羽」
「なぁに」
「これから週に1回うちへおいでよ。着替えてどこか遊びに行っても良いし、
うちでだべってもいいしさ、お前の家って結構息苦しいんじゃね」
優花はお見通しだ。
パパもママも、ちょっと厳しい。
少しでも門限より遅くなれば、叱られる。
そのくせ妹には甘い。
妹はそれほど勉強が出来るわけでも、運動が出来るわけでもない。
いつも学業成績は学年トップをキープしているのに、勉強をしろと言われる。
そんな息苦しい家よりも優花と一緒に居た方がよほど楽しい。
この日も優花の家で着替えて遊びに出かける。
「あっ!また来てくれたのね、みうちー!」
すっかり仲良くなったショップ店員とたわいもない会話を楽しむ余裕も出来た。
ショッピングモールを出て近くの公園へ。
ベンチに腰掛け、近くに止まってたキッチンカーでクレープを買って食べている二人
「優花の家って、どんな感じなの?」
「どんなって、まぁ普通の家庭かな。しいて言えば自由過ぎる事か?」
「そうなんだ」
「姉貴もギャルだよ、大学行ってるのにさ。でもウチは、シングルなんよ」
「?」
「ウチが保育園の頃にパパとママは離婚したんだよね、それからシングルマザーで
姉貴とウチを育ててくれたんだわ。ちなみにママもギャルだったらしいよ」
あまり話したくないだろうことまで、あけすけに話してくれる優花がますます好きになった美羽。
並んで座る二人
「ゆう」
呼ばれて美羽の方へ向くと。
チュッ
美羽にキスされた。
照れているのか、赤い顔をしてる美羽。
「えっ?どういうこと?みう」
「・・・・」
「どうしたのさ?」
「怒らない?」
「そんなことで怒んねぇよ」
「あのね、私、前から優花のことが好きなの」そう言って美羽はうつむいて・・・
照れている美羽が愛おしく感じた優花
黒いロングヘアを撫でながら「そうだったんだ、いいよウチでよければ」
瞬間、美羽は頭をあげ、その美しすぎる笑顔を見せて「ありがとう」と言った。
優花の家に戻り、美羽はいつものお嬢様スタイルに着替える。
「でも、このことは学校では内緒よ」
「解ってる、お前の立場を考えると、どう考えても言えないっしょ」
「ホントにありがとう」
家の門を開けて帰る美羽を見送る優花。
「じゃあな、気をつけて」
「うん、ありがとう優花。じゃあ!」
第3話 完
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