第2話

二宮美羽の悩み。


〚深窓の令嬢〛というイメージを持たれているせいか、

なにをするにも、そのイメージを崩すことが出来ないでいる。

それゆえ、本当の自分を出せないでいるのだった。


(わたしだって、本当は優花みたいになってみたいんだけどなぁ・・・)


放課後、屋上へ行くと優花がベンチに座っていた。

「ねぇ、わたしさぁ・・・」

「ん?どうしたのさ」

「うん、えーっと、あのぉ・・・」

「んだかよ。お前らしくねぇぞ」

「だって・・・」


思い切って優花みたいになりたい!って言えれば苦労はしない。



「あのさぁ・・・」

「だからなに!」優花がイラつき始めた。ビクつく美羽。


「わたし!優花みたいになりたい!」

目をぎゅっとつぶり、ひざの上で握りこぶし・・・思い切って言ってみた美羽


「はぁ?」目をぱちくりさせている優花。

「なんでまた?」

「だって、私のイメージ知ってるでしょ?それをぶち壊したい!と思ってる。

 でも、それじゃあダメだと思うの」

「そりゃあ、わかるけどさ。なんでウチ?」

「わたしのイメージと正反対な優花になってみたい!これって理由にならない?」

「正反対だけど、ウチらにどういうイメージ持ってんのよって感じね」

「ダメかなぁ・・・」

うつむく美羽、その姿さえ美しい。


「じゃあさ、一日だけウチみたいにしてやろうか?」

「えっ!本当?やった!」

優花には考えがあった。

「じゃあ、来週の日曜日、校門前のコンビニで待ち合わせでいい?」

「わかった!次の日曜日ね、楽しみだわ!」スキップしながら美羽は帰っていった。


その日から美羽の表情に若干の変化が現れたが、あまりに変化が小さすぎて、

お嬢さまグループの面々には全く解らなかった、けれど遠目で見ている優花には

ハッキリと分かっていた。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


すっきりと晴れた5月の、とある日曜日

お出かけ準備に余念がない美羽。

「じゃあ、行ってきます」

「門限は8時よ、ちゃんと時間までに帰ってくるのよ」

(ちっ・・・8時かよ。お子様じゃないのよ)


大きめな襟とリボンがついた白いブラウスにデニムパンツとスニーカー。

「これでよし!早く行かなくちゃ!」

小走りでコンビニに向かう美羽。


「お待たせ!」

「やっぱ、お嬢さまだなぁ・・・じゃあ、行こうか」

「うん」

優花のそばに居るだけ。それだけでも美羽には十分なのだが、今日は何をするのか?


「どこ行くの?」

「取りあえずウチの家」

「優花んちへ?」

「そう、まぁついてきなって」


歩く事10分ほど、住宅街の中に有る優花の家はいたって普通の家だ。

「おじゃまします」

「いらっしゃい」優花に似たお母さんが出てきた。

「二宮美羽と言います」と会釈すると「いつも優花がお世話になっているようで」


「こっちな」

2階にある優花の部屋へ通されたのだが。

「座んな」

ソファに座ると、向かいにあるウォークインクローゼットを開けると、そこには。


「これ、ウチのワードロープなんだけど、着てみる?」

ギャル系ファッションがあるわあるわ・・・目を輝かせる美羽。

(うわぁ~~~すごい!みんな着てみたい!!)


優花は似合うような服を選んでいるのだが、横で興奮した表情で服を見ている美羽


「いきなり、完全ギャルにするのはどうかと思うし」

白のチューブトップに、薄いブルーのスキニーデニム。ゴールドのネックレス。


着てきた服を脱ぎ棄て、優花セレクトのギャル系ファッションに着替える美羽。

「似合うねぇ、さすが美羽だわ。スタイルいいから何着てもいいね」

(うわ!これが私!かっこいい!優花みたいだ!)

「せっかくだし、ヘアスタイルとメイクも変えてみよっか」

「うん」

「染めるのはどう?」

「うーん、今は辞めとく」

校則で髪色についてもメイクも規制はなく、在校生の半数が髪を染めているし

女子生徒はかなりの人数がメイクをしている。薄め、がっつりの差はあるが。


「そうだな、その方がいいよ」


鏡にうつる美羽が、優花の手によって次第にギャルに変わっていく・・・


「これでどう?」

黒のセミロングをセンター分けにして、ゆるーく巻き、薄目のギャルっぽいメイク。


「じゃあさ、これで遊びに行こうか?」

「ううん・・・」

「どした?」

念願のギャルに変身しては見たものの、外へ出る勇気がなかった。

「大丈夫!ウチがいるっしょ!!」

「そ、そうだね」


履いてきたスニーカーではなく、ヒール高めの白いサンダルを用意してくれた。


(おっとっとと)

高いヒールを履いたことのない美羽にとってはバランスが取れなかった。

「ふふふ」

「ちょっと笑わないでよ!」

「わりぃね、慣れないとそうなるんよ。そのうち慣れっから」


駅まではバスで数分

降りようとすると、「キャッ!」ひっくり返りそうになるところを優花が

支えてくれていた。「大丈夫かよw」「うん大丈夫よ!」



電車に乗り、ショッピングモールがある駅で降りる。



休日とあって、ショッピングモールの中は買い物客でごった返している。


「あの店で、良く買い物してるからさ、行ってみっか?」




優花御用達の店に入ると、そこには・・・



第2話 完


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